- SakrelBahr
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オリジンは1914年
「砂漠ものロマンス」の元祖がE.M.ハルの『シーク』なのはソコソコ有名だが、「ボス秘書偽装婚約もの」にも明確な元祖作品があるのを諸姉はご存じだろうか 1914年初版刊行の小説、"His Official Fiancee" by Berta Ruckがそれである openlibrary.org/books/OL255215… pic.twitter.com/Pe4s1cbR4U
2021-01-09 16:29:54ヒロインはロンドンのとある会社でタイピストとして働いているモニカ。週給25シリングで安アパートに住みカツカツの生活をしている彼女は、ひょんなことから週に10ポンドの報酬で社長の婚約者を演じる仕事を引き受ける
2021-01-09 16:31:42高圧的な仕事人間のボスとプライベートまで一緒なんて嫌だわ…と思いつつも、事業に失敗した兄を援助するためにも大金が必要な彼女は取引に応じる。 どうせなら契約期間中は役割に乗じて言いたいことを言ってやるわ!と頑固者の社長相手に対等にふるまい、二人は次第に打ち解けていく
2021-01-09 16:32:37婚約者として社長の家族とバカンスを過ごすうちに仕事を離れた素顔の彼に惹かれていくモニカ「社長が私に優しいのもみんなお芝居なのね…(ノ_・。)」「私たちの結婚を楽しみにしているお母さまを騙し続けるのって辛いわ…」
2021-01-09 16:34:35とかやってるうちに当て馬ゴージャス女が登場したり、社長の独身主義の理由が判明したりーの末に偽恋が本当になってハッピーエンド スゲェ!この時点で完璧にパターンが完成されているッ!! 再度書きますが、初版刊行1914年(大正3年)、第一次大戦勃発の年ですよ⁈
2021-01-09 16:35:39今でこそロマンス小説の定型と化しているけど、当時の新聞批評では「オリジナリティのある興味深いプロット」と書かれていたという 婦人参政権もない時代、会社勤めで週給を得て自活している若い女性が紳士階級の年長の男性にポンポン「自分の意見」をぶつけるという現代的で新鮮なドラマだったのだ
2021-01-09 16:41:52同時代の有名作品
1912年:ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』
1913年:エレナ・ポーター『少女パレアナ』
1914年:本作
1915年:ラファエル・サバチニ『海の鷹』
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1919年:シークさらわれロマンスの元祖E・M・ハル『シーク』
1920年:アガサ・クリスティ『スタイルズ荘の怪事件』
1918年サイレント映画版『選ばれたる女』
高評価を受けた本作は1918年にパラマウント製作でサイレント映画化、残念ながらフィルムは現存していません 日本公開時のタイトルは『選ばれたる女』 eiga.com/movie/59117/ 会社のタイプ室で働くヒロイン、モニカ(ヴィヴィアン・マーティン) pic.twitter.com/ARZiHPP78c
2021-01-09 16:48:32意にそまぬ結婚を押し付けてくる社長の親族を騙すために、ドレスアップして名家の屋敷に乗り込む清貧ヒロイン(このパターンでお馴染み「ヒロインの金欠親族」「ヒーローの婚約者気取りのイジワル美女」も登場) pic.twitter.com/hKAyHSRbjr
2021-01-09 17:01:56余談:ちなみに映画『選ばれたる女』がアメリカで制作された1918年は『はいからさんが通る』の花村紅緒が16歳の年なので、紅緒さんが活弁版の同作を観ている可能性はある。
1944年リメイク映画版 "Hans officiella fästmö"
そして1944年にスウェーデンでリメイク映画 "Hans officiella fästmö" 公開 imdb.com/title/tt003689… スチル見ただけで手に取るように展開がわかるぞ~~ 安アパートにカジュアルファッションの社長来訪 pic.twitter.com/6YdNh5mpCC
2021-01-09 17:14:40お高いブラウスを買ってまずはレストランで彼の知人相手に婚約者芝居開始 pic.twitter.com/kSntoyQHaF
2021-01-09 17:20:33社長の実家に乗り込んで偽装婚約者として親族を騙さなければ…失敗は許されない! さあ、エンリョせずにちっすをしたまえ! pic.twitter.com/8fl7faufQQ
2021-01-09 17:24:14ゴージャス当て馬美人登場 あんたが彼の婚約者だなんて、なんの冗談なのッ ねえダーリン、まさかあんな娘に本気じゃないでしょうね? pic.twitter.com/e9kFJNZmof
2021-01-09 17:34:07「ねえお前、なにか隠し事があるんじゃないの」 「母さん……」 手に取るように!手に取るようにわかるぞwwwww pic.twitter.com/oxBqULgckC
2021-01-09 17:39:28Project Gutenbergで読めるベルタ・ラックのガールズ小説
ベルタ・ラック先生は1878年生まれ1978年没という長寿で、90歳近くまでロマンティックコメディを書き続けた女性 残念ながら邦訳は一作もありませんが、ロマンスジャンル好きならば偉大なるパイオニアの一人として記憶しておきたい作家であります en.wikipedia.org/wiki/Berta_Ruck
2021-01-09 17:52:13※最後のロマンス長編 "Shopping for a Husband" の刊行が1967年、その後も自伝やノンフィクションを数冊執筆しており、最後の作品は94歳の時に刊行した "Ancestral Voices"(1972年)。
以前ネタにした英国のロマンス作家ベルタ・ラック先生(Berta Ruck, 2 August 1878 – 11 August 1978)、没後43年で日本基準ではまだ著作権保護期間なんだけど、米国著作権法だと1923年以前の刊行作品は旧法適用範囲内でProject Gutenbergに上がってた gutenberg.org/ebooks/author/…
2021-02-03 20:50:01