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「これから何をする?」 「ワクチンを打とうと思うんだ。どう思う」 「もちろん打てばいいさ。どんなワクチン?」 「良いワクチンさ。自分にとってね。俺はね、自分にウイルスがあるなんて思っちゃいないよ」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:22:07ワクチンを打つというのは非常に重大なことのようにも思えるし、逆にまるでたいしたことじゃないようにも思える。つまり自己療養行為としてのワクチン接種があり、暇つぶしとしてのワクチン接種がある。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:33:33つまりさ、ワクチン接種がまわりに充ちているときに、それをやりすごして通りすぎるというのは大変にむずかしいことなんだ。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:40:07#村上春樹的ワクチン 「ねえ、もう打ったの?」 「何をだい?」 僕はスパゲッティーをゆでながら上の空で答えていた いま思えばあの時、彼女は重要なメッセージを伝えようとしていたのだけど、僕は気づかなかった
2021-10-08 15:16:44私が求めているのは単なるわがままなの。完璧なわがまま。たとえば今私があなたにむかってファイザーのワクチンを打ちたいって言うわね、するとあなたは何もかも放りだしてそれを予約するのよ。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:56:03#村上春樹的ワクチン 意味があるとかないとかじゃないんだ。好むと好まざるとにかかわらず、僕はそれを接種しなくてはならない。うまく説明はできないけれど。
2021-10-08 00:07:06#村上春樹的ワクチン 「ワクチン」 と僕はつぶやいた。 それはまるで小さなリンゴをテーブルに置くような響きがした。それはあくまで実存的な象徴としてのリンゴであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。いったんその実存を確認してしまうと、うつかうたないかということはどうでもよくなった。
2021-10-08 00:08:50「そうだろう?ワクチンを打った人間なんてどこにも居やしない。振りのできる人間が居るだけさ」 「ひとつ質問していいか?」 僕は肯いた。 「あんたは本当にそう信じてる?」 「ああ」 鼠はしばらく黙りこんで、ビール・グラスをじっと眺めていた。 「嘘だと言ってくれないか?」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 07:00:43「どうしてあなたってそんなに馬鹿なの?ワクチン打ちたいにきまってるでしょう?だって私あなたのことが好きだって言ったでしょ?私そんなに簡単に人を好きになったり、好きじゃなくなったりしないわよ。そんなこともわかんないの?」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 10:05:03「でもね、俺は空を見上げてコロナにかかるのを待ってるわけじゃないぜ。俺は俺なりにずいぶん感染予防をしている。お前の10倍くらい予防してる」 「そうでしょうね」と僕は認めた。 「だからね、ときどき俺は世間を見まわして本当にうんざりするんだ」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 13:16:44「僕の目から見れば世の中の人々はずいぶんあくせくと身を粉にして感染予防をしているような印象を受けるんですが、僕の見方は間違っているんでしょうか?」 「あれは予防じゃなくてただの自己満足だ」と永沢さんは簡単に言った。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 13:19:04「なあ、接種ってのはな、いちばん洗練された復讐なんだ」と彼は言った。「復讐?」と僕は言った。「何ですか、それは」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 13:30:06人はどんなことからでも接種さえすれば抗体を得られるってね。どんなに月並みで平凡なワクチンからでも必ず抗体を得られる。どんな髭剃りにも哲学はあるってね、どこかで読んだよ。実際、そうしなければ誰も生き残ってなんかいけないのさ #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 15:40:19だってこの場所にあるすべては関連性の産物なのだ。絶対的なものなど何ひとつない。ウイルスだって何かのメタファーだ。このワクチンだって何かのメタファーだ。すべては相対的なものなのだ。光は陰であり、影は光なのだ。そのことを信じるしかない。そうじゃないか? #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 18:31:09まったく正しいこととか、まったく正しくないことなんて、果たしてこの世界に存在するものだろうか?我々の生きているこの世界では、ワクチンは九十パーセントの効果があったり、七十パーセントの効果があったりする。たぶん真実だって同じようなものだろう。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 18:34:49そのおかげで彼らの会話は往々にしてすれ違い、意味をなさなかった。 「頃奈ないのに、高いりすく」 「すみません、おっしゃっていることが、ナカタにはよくわかりません。申し訳ありませんが、ナカタはあまり頭が良くないのです」 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 18:42:30「打つんだよ」 羊男は言った タダで打てる間はとにかく打ち続けるんだ、何故打つかなんて考えちゃいけない 意味なんて考えちゃいけない 打ち続けるんだ (「済んだ済んだ済んだ」(ワクチン)より #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 19:21:12「スパイクとしてのタンパク質や」。老人が唐突に口を開いた。「わかるか」。小柄な体に似合わない大きな声だった。「わかりません」と僕は言った。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 22:32:31ただひとつ僕に言えることは、「ワクチンを打てるのなら、打てるうちに打っておいたほうがいい」ということです。ワクチンを打った記憶というのは、長い歳月にわたって左腕をじわじわと痛めつけてくれます。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-08 22:41:43それでもウイルスは変りつづける。変ることにどんな意味があるのか俺にはずっとわからなかった。そしてこう思った。どんなウイルスもどんなワクチンも結局は崩壊の過程にすぎないんじゃないかってね。違うかい? #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:37:00#村上春樹的ワクチン ワクチンの求めているのは僕の腕ではなく誰かの腕なのだ。ワクチンが求めているのは僕の温もりではなく誰かの温もりなのだ。
2021-10-07 23:48:26「ねぇ、ワタナベくん、私とあれやろうよ」 「不思議ですね、僕も同じこと考えてたんです。」 そして二人はワクチンをする。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:51:41「ねえ」と長い沈黙のあとで彼女が口を開いた。「私たちはワクチンを打った方がいいと思うの。もちろんあなたがそれでよければの話だけれど」「もちろんいいさ」と僕は言った。「それも、とてもとても強い抗体を得るのよ」そんな風にして、我々はとてもとても強い抗体を得た。 #村上春樹的ワクチン
2021-10-07 23:37:11