5人の処女とイカ臼砲―ロイヤルネイビー的前投式対潜兵器発達小史

@flowerclass 氏による「コルベットが語る大西洋戦争」( http://togetter.com/li/177145 )の派生解説。イギリス海軍の開発した前投式対潜兵器について、お蔵入りした幻のFive Wide Virgins や決定版のスキッド対潜臼砲など、戦間期からWW2までの開発小史。
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こんぱすろーず @flowerclass

さて、紳助にも飽きたのでこの間予告しながら放ってあった、ヘッジホッグに敗れて採用されなかった幻の前投式対潜兵器Five Wide Virginsについてつぶやくか。手持ちの資料が大変乏しいのでたいした話は出来ませんが。まずは戦間期の英海軍の対潜兵器の開発について軽くおさらい

2011-08-23 21:36:27
こんぱすろーず @flowerclass

30年代前半に「Stick Bomb Thrower」という棒状の対潜弾を発射する単装の旋回式発射機がテストされたが、当時のアスディックの能力では単発で有効な攻撃は困難であり採用されなかった。その後は予算的制約もあって様々なアイデアはあったものの、技術者の頭の中にとどまっていた。

2011-08-23 21:41:40
こんぱすろーず @flowerclass

1939年に入ると予算も増加し、いくつかのアイデアは試作段階まで進んだ。最も先行していたのはフェアリー社の「フェアリーモーター」。縦一列に並んだ10連装発射機から触発信管付の小型対潜弾(炸薬20ポンド)を発射するというものだった。

2011-08-23 21:44:06
こんぱすろーず @flowerclass

命中精度が低い点は小型弾を多数ばら撒くことによって補う、という発想は、後のヘッジホッグに共通するが、海軍と兵器メーカーの一部にはこれを疑問視する向きもあった。弾数を増やすより一発の威力を高めることを重視する彼らの立場は「ビッグバン派」というあだ名で呼ばれていた。

2011-08-23 21:47:44
こんぱすろーず @flowerclass

結局フェアリーモーターはその炸薬量を疑問視されて不採用となり、代わりに陸軍の歩兵支援火器を転用したヘッジホッグが表舞台に出てくるのだが、同時期(1941年初頭)に、ビッグバン派の期待を一心に集めていたのが、ソーニクロフト社の対潜臼砲Five Wide Virginsであった。

2011-08-23 21:52:25
こんぱすろーず @flowerclass

なんとも妙な名前であるが、これは中世の寓話「十人の乙女たち」に出てくる「五人の賢明な乙女たち」Five Wise Virginsと、5連装の巨大な砲身をかけたゴロ合わせではないかと思われる。もちろん関係者による非公式なあだ名であり正式名ではない。

2011-08-23 21:54:21
こんぱすろーず @flowerclass

やっとついっぷるフォトがまともに動いたので再開。Five Wide Virginsの雄姿! http://t.co/cKmn6qx

2011-08-23 23:03:55
こんぱすろーず @flowerclass

……そう、新規に対潜弾を設計などという面倒なことはやめて、既存の爆雷を前方にぶん投げればよいではないか、という発想から生まれた兵器なのである。フェアリーモーターやヘッジホッグと比べて一発あたりの炸薬量は実に10倍、ソーニクロフト社の豊富な爆雷投射器についての経験も生かせるはず!

2011-08-23 23:07:10
こんぱすろーず @flowerclass

射程については手持ち資料に記述がないが、おそらくは搭載艦の数百メートル前方に、5発同時発射で大きな散布界を形成する、というものだったのだろう。

2011-08-23 23:10:23
こんぱすろーず @flowerclass

さて試作されたFive Wide Virginsは1941年夏、V&W級駆逐艦「ホワイトホール」に搭載されて試験に供されることになったが早速大問題。でかい。写真を見てもわかるが、駆逐艦の前甲板を横幅いっぱい使っている。駆逐艦でこれじゃコルベットやフリゲートに載せられないんじゃ…

2011-08-23 23:13:19
こんぱすろーず @flowerclass

そして重い。発射の反動が強烈。重い爆雷を遠くまで飛ばさなきゃいけないから仕方ないんだが。しかし既存艦にこれを搭載するには、大規模な上甲板の補強が避けられなさそうであった。その点かなり手軽(それでもリコイルの問題には悩まされたが)なヘッジホッグとは大違い。

2011-08-23 23:16:18
こんぱすろーず @flowerclass

それでも兵器として有効ならば改修の手間など…しかしここで致命的な欠点が発覚。爆雷の形状は空力的にクリアではないのだ。発射後の弾道が安定せず、正確な散布界の形成など夢のまた夢だったそうな。じゃあ爆雷を改設計して流線型に…いや既存の爆雷が使えるってのが最大の利点だったわけでね…。

2011-08-23 23:20:18
こんぱすろーず @flowerclass

というわけであえなくFive Wide Virginsはお蔵入りとなり、ヘッジホッグが採用されることとなった。しかし、ビッグバン派はあきらめていなかった。彼らの一発の威力に対するこだわりは、ついにWW2の対潜兵器の決定版、戦後長く使われたスキッド対潜臼砲を生み出すに至ったのである

2011-08-23 23:27:25
金剛つんどら @tundrache

あっ。いまようやくファイブバージンズの写真見れた。ほうほう。いやーなんかいやってもついっぷるさんが猫とたいやきの画像見せるもんだから、もうそういう形なのかと思おうかとしていたところ。

2011-08-24 22:01:19
こんぱすろーず @flowerclass

@tundrache あの装弾方法からして失敗作のにおいが濃厚にするよねー。外洋に出て前甲板でウィンチで爆雷持ち上げて…

2011-08-24 22:08:22
金剛つんどら @tundrache

@flowerclass それはダメだろw あたし知識がヘッジホッグで止まってるんだけど、その後のスキッド対潜臼砲って、海防艦に積んでダメだった対潜迫撃砲みたいなもんじゃないのかと思ってる。前評判はともかく、結局アスロック登場(ボフォースがあるか)まで、決定版対潜兵器ってないの。

2011-08-24 22:12:13
こんぱすろーず @flowerclass

@tundrache いや、スキッドはある意味決定版だよ。最大の特徴はセンサーと兵器の統合化。アスディックのレコーダとFCSが一体になってて、深度調定と測距が基本的に自動化されてる。理想的な状況ならただ敵潜を探知していれば自動的に信管が調定されて最適距離で発射されるようになってる

2011-08-24 22:29:32
こんぱすろーず @flowerclass

@tundrache プレホーミング時代の対潜兵器の基礎は全部スキッドが作ったもんだ。まー50年代後半になって潜水艦の限界深度が深くなると対潜ロケット弾では手が出なくなるけどね。

2011-08-24 22:33:24
こんぱすろーず @flowerclass

@tundrache へ?海自が供与してもらったのはスキッドじゃなくてアメリカ製のウェポンアルファ(Mk108対潜ロケット砲)だよ。弾頭の不発率が高いのが最大の欠点だったみたい。

2011-08-24 22:48:11
金剛つんどら @tundrache

@flowerclass あっ! 勘違い。あれスキッドじゃないんだ。そうかそうか。ウェポンアルファか! 失礼。てっきりあれだと思ってた。

2011-08-24 22:53:35