ストーリー第3回目 第一幕 “欲しいもの”は二段階で考える?“欲しいもの”と“欲しいもの”の衝突が葛藤を生む。

ここはかなり大事な部分です。特に“とりあえず欲しいもの”と“本当に欲しいもの”のところを読んでね。
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榎本憲男★『サイケデリック・マウンテン』絶賛発売中!!! @chimumu

0.はーい、chimumuだよ。では今日も映画のストーリーの作り方をつぶやいていくよ。

2010-04-30 23:48:23
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1.は、例によって復習だ。ストーリー全体は、野球のダイヤモンドでイメージするといい。

2010-04-30 23:50:59
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2.主人公はこのダイヤモンドを、日常~非日常~日常へと一周する。

2010-04-30 23:51:14
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3.三幕構成の各パートの役割、1.状況設定、2.葛藤。3.クライマックス&解決。

2010-04-30 23:51:44
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4.ストーリーを書くときに、一番大事なのが、第一幕目だ。ここをしっかりやっておかないと、二幕目に進んだときにどうにもうまく行かないことになる。逆をいえば、二幕目で煮詰まってしまったときの原因は大抵第一幕目にある。

2010-04-30 23:52:57
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5.一幕目の役割は状況設定だ。状況設定というのはほぼキャラクター設定だと思えばいい。キャラクター設定をするためには主人公の““欲しいもの”を設定することがまず最初にやるべきことだ。

2010-04-30 23:53:23
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6.図式にしてみよう。<一幕目=状況設定≒キャラクター設定=“欲しいもの”をセットする> てなことになる。

2010-04-30 23:54:01
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7.さて、ここからが今日のテーマだ。この“欲しいもの”をちょっと深く考えてみよう。それがキャラクターの変化(Character Arc)の理解につながるんだ。

2010-04-30 23:54:22
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8.今日は「ローマの休日」を例にとって説明していく。観てない人は、ここからは観てから読んだ方がいいね。

2010-04-30 23:59:18
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9.主人公の新聞記者は金が欲しいので、女王のスクープ記事を企てる。つまり、こいつが“欲しいもの”は金だ。

2010-05-01 00:00:15
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10.そのことをはっきりわからせるために、最初に登場するシーンで彼はポーカーをしている。新聞記者のキャラを説明するためにトランプ遊びは変だが、ここで彼は負ける。つまり金がないということを強調しているんだ。

2010-05-01 00:01:16
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11.もう一方の王女の方を見てみよう。王女の“欲しいもの”は何か。これはすぐにわかる。自由だ。しかも、ほんのちょっとしたつかの間の自由が欲しかっただけだ。それを味わったら彼女は素直に迎賓館に戻るつもりでいる。

2010-05-01 00:04:19
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12.ここで大事なのは記者と王女の“欲しいもの”は両立しないってことなんだ。スクープ記事なんか出されたら、つかの間の自由なんて吹っ飛んじまう。しかし、記者の方は最初はそんなことお構いなしである。友人のカメラマンと組んで王女の写真を撮りまくっている。

2010-05-01 00:05:36
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13.しかし、スクープをものにしようと王女をローマの街に連れ出して、観光しているうちに、迷いがでて来る。王女に恋したからだ。ここで考えて欲しい。この記者の“欲しいもの”はなんだ。金なのか女なのか? そしてこれも両立は不可能である。これが葛藤なんだ。

2010-05-01 00:08:42
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14.西洋のシナリオ理論では、金を“外的欲求”、王女への愛を“内的欲求”という言葉で説明していく。つまりモノ(外的)か精神(内的)かで分けているわけだ。ただ、僕はもっと簡単にうまく説明できないかと考えた。肝心なのは、心orモノではないと思う。以下からは僕の用語で説明する。

2010-05-01 00:14:10
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15.新聞記者は、とりあえず金に困っている。だから金は“とりあえず欲しいもの”だ。王女への愛は“ほんとうに欲しいもの”だと考えればいい。そして、“とりあえず” から “本当に” への “欲しいもの” の移行が、葛藤やキャラクターの変化を生むのである。

2010-05-01 00:18:41
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16.「ローマの休日」でこの変化が決定なものとして現れるのが、スクープ写真を記者が破り捨ててしまうシーンだ。つまり、金か愛か、で愛を選択したのだ。

2010-05-01 00:20:56
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17.しかし、考えてみてくれ、この記者は“欲しいもの”を手に入れたのだろうか。金は諦めた。どうして? 王女に惚れちまったから。じゃあ王女と恋人同士になれたのかというと、それもどだい無理な話である。これではボロ負けなんじゃないか?

2010-05-01 00:22:22
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18.しかし、彼は最後に勝利するのである。それが見事に描かれているのは最後の記者会見のシーンである。「どこの都市がいちばん印象深かったか」と聞かれた王女は「ローマがどこよりも素晴らしかった」と答えるのである。ここはひねりにひねったラブシーンだ。

2010-05-01 00:23:30
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19.金という“とりあえず欲しいもの”を求めて、王女とのデートという非日常の旅に出た記者は、王女との友愛という“本当に欲しいもの”を獲得して、またわびしい記者生活(日常)に帰還する。しかし、彼はもう昨日の彼ではない。迎賓館で記者が歩いて行くラストショットがそれを雄弁に物語る。

2010-05-01 00:28:14
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20.つまり、この時、彼は、物語の全編を通じて変化(成長)しているのである。

2010-05-01 00:28:50
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21.はーい、今日はここまでだよ。「ローマの休日」はベタなラブストーリーのように思われているが、腹が立つほどうまい脚本だ。書いたのはドルトン・トランボ。実は映画のクレジットには彼の名前はない。“ある事情”で名前が載せられなかった。その事情については、映画史の時につぶやこう。じゃ!

2010-05-01 00:30:22