ホッブズの政治学、信約、名誉そしてベーシック・インカムへ

ホッブズにおける契約(contract)と信約(covenant)の違いとは何かという問いが、政治的なものと名誉、そしてベーシック・インカムにまで転がりました。
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手郵便 源 @ox11

日課のホッブズ本を読んでいて原文が気になった(同書における引用は独訳から)ので久しぶりにLeviathanを取り出してみた。引用元みっけ。

2010-05-01 07:29:40
手郵便 源 @ox11

見つけたはいいけど、ContractとPactないしはCovenantとの違い、ホッブズが両者を使い分ける意図がこの前後からだけではよくわからない。とはいえ、今からじっくり読む体力はなし。明日読むことにしましょうか。>Leviathan, Ch. 14.

2010-05-01 07:40:47
mizuki matoiba @mmatoiba

ox君。契約は契約後の即時かつ同時履行。信約は契約締結後履行までタイムラグがあり、その間相手を信頼するというもの。信頼されるのが片方の場合も双方の場合もある。

2010-05-01 08:22:36
mizuki matoiba @mmatoiba

国家設立は信約によるもの。人々が信約の内容(権利の譲渡)を履行するのは常に国家設立の後だから。つまり主権者の行為に抵抗しないということだけど。

2010-05-01 08:27:19
Shin Toyoda @shintoyo

@mmatoiba 信約と契約の差異ってのは面白いすね。ホッブズが提唱した区別なんですか?

2010-05-01 14:42:12
mizuki matoiba @mmatoiba

@shintoyo なんて良い質問なんだ!いや、まさにそこですよ。つまりホッブズの所謂「社会契約論」ってのは、明らかに商取引あるいは商法(商慣行?)が土台になっているのですが、それがどっから来たのか。つまり商業的な概念がどうやって政治的な概念になったのかってのは、これは重要です。

2010-05-01 14:45:13
Shin Toyoda @shintoyo

@mmatoibaなるほど!関係あるかわかりませんが、信約、あるいは、タイムラグor地理的遠さがあっても成立する取引システムはイタリア発祥ですよね。アブナー・グライフという経済史家が、『比較歴史制度分析』という本で分析してます。

2010-05-01 14:57:39
Shin Toyoda @shintoyo

契約の場合はenforcerがいるが、信約の場合はenforcerは存在しない。むしろ、enforcerを成立させるためのメカニズムこそが社会契約と呼ばれる。しかし、いつenforcerが現れるかについては、おそらく均衡としての制度分析を行う必要があるだろう。

2010-05-01 15:01:52
mizuki matoiba @mmatoiba

@shintoyo ありがとう!早速アマゾンで購入した。銀行の成立とか手形とか、その辺の話や、ローマ法やコモンローなんかも押さえておきたいと思っています。博論には直接活かせないけど、その後に考えている研究計画では、その辺りを中心にやろうと思っています。政治的概念の起源。

2010-05-01 15:08:25
Shin Toyoda @shintoyo

@mmatoiba 商業/経済の概念によって政治が語られるようになるプロセスの研究。すごくおもろいと思います!

2010-05-01 15:22:18
mizuki matoiba @mmatoiba

@shintoyo でしょう!この点からすると、商業の概念と、それからいわゆる貴族の徳といった共和政的な(政治的)概念とが、どうにかしてホッブズの中で融合したという風にも考えられる。つまり、商業の概念を使っていながらも、ホッブズは決して「ブルジョワ政治学者」ではなかったのだから。

2010-05-01 15:28:48
Shin Toyoda @shintoyo

@mmatoiba なるほど。ちょっと学部時代に読んだシュトラウスの『ホッブズの政治学』を思い出しました。あの本の解釈によれば、ホッブズは「虚栄心」(=共和主義的卓越の政治)を捨てて、合理的経済人となれ、と「規範的」に述べてましたよね。ホッブズのこのアンビバレンスは興味深いです、

2010-05-01 15:44:30
mizuki matoiba @mmatoiba

@shintoyo というかむしろそのシュトラウスの(だけじゃないけど)根拠なきブルジョワ史観を何とかしたい。あの本に書いてあることにはわりとトンデモが多い。

2010-05-01 15:58:10
Shin Toyoda @shintoyo

@mmatoiba その辺りが敵だと。いやあ、野心的っすねえ。期待してます。

2010-05-01 16:01:01
手郵便 源 @ox11

.@shintoyo @mmatoiba ここですね? The matter, or subjekt of aCovenant, is alwayes something that falleth under deliberation; (For to Covenat, is

2010-05-01 17:40:04
手郵便 源 @ox11

an act of the Will; that is to say an act, and the last act, of deliberation;) and is therfore alwayes understood to be something to come;

2010-05-01 17:41:26
手郵便 源 @ox11

and which is judged Possible for him that Covenanteth, to perform. (Hobbes, 1991, p. 97)

2010-05-01 17:43:01
手郵便 源 @ox11

第14章冒頭、ほとんど開口一番、Liberty whatの項で「殺されそうになったら逃げていいに決まってる」ってのが既に暗示されてる…。

2010-05-01 17:49:04
手郵便 源 @ox11

そして、"Not all Rights are alienable"で一度伏線回収、と。なんんんって無駄のない行論…。

2010-05-01 18:06:53
手郵便 源 @ox11

お、ついにジャイアンがさりげなく登場("Covenants of Mutuall trust, when Invalid")。>ホッブズ『リヴァイアサン』第14章

2010-05-01 18:24:48
手郵便 源 @ox11

なるほどcommon Powerの登場によって、Covenants entred into by fear, in the condition of meer Nature, are obligatoryと言えるようになるわけですか。

2010-05-01 18:44:30
手郵便 源 @ox11

つまり、究極の自然権、あらゆる手段にうったえかけてでも生きる権利は譲渡不能。

2010-05-01 18:52:01
手郵便 源 @ox11

かくて、Covenantの基礎としての「名誉Glory」を脱臼させるところに辿り着いた。ところどころ分からないところは残っているけど、どんどん議論がソリッドになってくなぁ。>ホッブズ

2010-05-01 19:14:57
mizuki matoiba @mmatoiba

いや、そう簡単でもない。オークショットなんかだと、コモンウェルス設立後に最初に履行する者にとって、それは名誉ある行為なんだと言います。RT @ox11: かくて、Covenantの基礎としての「名誉Glory」を脱臼させるところに辿り着いた。

2010-05-01 19:19:29
mizuki matoiba @mmatoiba

というのも、最初に履行する者にとって、彼が自然状態にいるのかコモンウェルスにいるのかは、実際的に区別できないから。だからこそ、ホッブズはそこで名誉に訴えざるをえない、と。

2010-05-01 19:20:50