文化的な宮沢家(『高校鉄拳伝タフ』文化の日SS)

タイトル通りです。 キー坊と静虎の文化の日です。
SS
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モチャーン三世 @mocharn3rd

それは、熹一が高校生の時だった。

2021-11-03 15:16:49
モチャーン三世 @mocharn3rd

文化の日、熹一はビデオ・ゲームをしていた。  静虎は新聞を読んでいたが、ゲームの時間が1時間にさしかかるところで言った。 「熹一、今日は文化の日やぞ。文化的なことせんかい」

2021-11-03 15:16:58
モチャーン三世 @mocharn3rd

「おとん、スーパー・マリオやドラゴン・クエストにファイナル・ファンタジーは世界的な作品なんやで。これが文化的じゃないっていうんか」 「それはワシでも知っとるが、お前は今遊んどるだけやないか」 「あうっ」

2021-11-03 15:17:06
モチャーン三世 @mocharn3rd

「そうやな……任天堂とかエニックス、スクウェアのことについて調べるとか、ゲームの背景になっとるような伝承・神話を調べて"文化的"と言える」 「そこまでしたかないな……でもなんで伝承とか神話が?」 「ファンタジーに全くのオリジナルなんて存在せん。調べてみるとどこかに元ネタがあるもんや」

2021-11-03 15:17:37
モチャーン三世 @mocharn3rd

「伝説の剣でエクスカリバーがよく出てくるようなもんか」 「ほう、少しはわかっとるようやな」 「思わぬところで感心されてもた……けどワシ、せっかくならもっとためになること学びたいわ……おとん、活法教えてくれんか?!」 「……まあ、ええやろ」

2021-11-03 15:17:49
モチャーン三世 @mocharn3rd

熹一は、布団の上にうつ伏せになった静虎の背中を、肩から尻の方に向かって指で押していく。  面白いほど指が沈む。うっすらした脂肪の奥に、やわらかで厚い筋肉を感じる。 「熹一、少し圧が強い。もう少し弱め……それでええ」

2021-11-03 15:18:00
モチャーン三世 @mocharn3rd

「モリヤンが整体行った時につきおうたけど、強い方がいいって言うとったで」 「森浦君はそうかもしれんが、灘神影流の活法としては必ずしもそうはならん」  静虎は少し呼吸を入れる。

2021-11-03 15:18:11
モチャーン三世 @mocharn3rd

「森浦君のその時の様子を見んとなんとも言えんが……肉体は強く押すほど緊張も返ってくる。マッサージとしての気持ちよさを求めるならそれも間違いやないが、肉体を回復させる場合はかえってよくない場合もある」 「ほーん……」

2021-11-03 15:18:28
モチャーン三世 @mocharn3rd

熹一の指圧の音が部屋に広がる。  静虎は少し思案顔になった。 「おじいちゃんおばあちゃん、子供に活法をかけるときを考えてみるとええ」 「ああ、そりゃ強くしたらアカンなあ……」 「相手のことをよく観察することが、活法には必要なんや」 「活法と殺法と表裏一体、やろ?」 「ふん、言いよる」

2021-11-03 15:18:36
モチャーン三世 @mocharn3rd

「さっきお前は"ためになることを学びたい"と言ったが」 「うん」  熹一は静虎の腰から尻あたりを押していた。 「文化の日っていうのはそういうもんやない。」

2021-11-03 15:19:42
モチャーン三世 @mocharn3rd

「新しいものを知ることで、自分に変化を起こす。自分が知らないルールで動いてる世界を知ることで、人への理解を深める。心を修養するための日なんや」  熹一は手を止める。 「おとん……」 「お前がアイアン木場やギャルアッドと闘ったみたいに、新しい世界を開拓する精神のある日とも言える」

2021-11-03 15:20:37
モチャーン三世 @mocharn3rd

静虎はここで立ち上がった。 「"ためになる"ことだけ追い求めると、いずれ足を掬われる」 「わかるようなわからんような……」 「お前は少しはわかっとるよ」 「少しかぁ~」

2021-11-03 15:21:01
モチャーン三世 @mocharn3rd

ここで静虎は少し言葉を止めた。 「日常に忙殺された者が心を休めるための日でもある」  すたすたと静虎は居間に行き、新聞を取って戻って来た。 「今日は美術館で特別展示会をやるみたいや、行くか」  熹一は笑った。 「おうっ!」

2021-11-03 15:21:21
モチャーン三世 @mocharn3rd

『文化的な宮沢家』終わりっス

2021-11-03 15:21:56