ストレイトロード:ルート140(59周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2901~2950+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは「スポーツに関する単語」。なお各話の内容は特に連続していません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

壊れた家の壁に男がもたれかかっていた。力なく手足を投げ出しているが息はある。藍がパンを差し出すと、一度は食いつこうと口を開けたが、すぐ彼女の手ごと突き放した。「やめてくれ、減量中なんだ」男は拳を構えてみせた。近く開かれるという試合の場所は、強靭な翼に凪ぎ払われたはずの地区だった。

2021-09-07 18:51:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2909。減量。 目的があるから耐えられる。 目標があるから生きていける。

2021-09-07 18:51:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

技術が発達した今、機械加工なしで作れる道具は一握り程度だろう。それで足りていた時代もあった、という歴史を知らない子供は無邪気に問う。「なんでこんな面倒な道具使ってたの?」木彫りの棍棒の握り方にも戸惑うとは。すると藍はそれを怪物の絵目がけて投げた。「スイッチいらないと速いでしょ?」

2021-09-08 19:15:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2910。棍棒。 使い方なんて大人の説明通りでなくたっていい。

2021-09-08 19:15:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

余程疲れたのか、藍は帰宅早々に私へ暇を出すと言い、自身は部屋に鍵をかけた。翌日の早朝、若者の集団が邸宅を訪ねてきた。「戻ってきたらまた勝負するって約束だろ!」再戦とは競争か試合か。記憶を掘り返す前に、私とは初対面だと一人が教えてくれた。「何度も負けた主将が諦められないだけなんで」

2021-09-09 18:50:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2911。再戦。 勝つまでは、何度でも。 そのとき受けて立つ側は?

2021-09-09 18:50:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

無人のゴール前で藍が脚を振り上げる。少年達が追いつくまで待ってから蹴った球は弱々しい軌道でネット手前に落ちた。「ボールは買ってあげられるけど、技術はムリ」くたびれた球を投げて返す間も皆の表情は暗かった。指導も知識もない練習は仲間内の遊びと大差ない。特に守備は基礎さえ壊滅的だった。

2021-09-10 19:19:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2912。守備。 「買う」に関して藍ちゃんは勝手に決めるし、あまり躊躇しない。 そしてきっと1月後くらいにボールとゴール一式と人数分の靴が少年達のもとに届く。

2021-09-10 19:19:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

橋のたもとに物騒な車両が並んでいた。藍が巡回中の警察官に声をかけると、顔も見ずに追い払われた。「川に近づくな!」三人目がようやく応じた。水温が上がる夏は川に飛び込む人間が増えるが、濁った水面の下は危険だらけだという。「魚に噛まれるとかね」「怪物?」「在来種。だから駆除できないの」

2021-09-11 18:54:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2913。水温。

2021-09-11 18:54:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

瓦礫の中からトロフィーを掘り出した。ガラスの部分は割れていたが台座の文字は読めたので持ち主が判明した。「有名な人?」「特に貴女のご両親の世代には」数々の記録を持つ陸上選手だ。その絶頂期は藍が生まれる前だった。盾やメダルを金属の塊としか見ない輩より先に、全て回収するのが良さそうだ。

2021-09-12 19:14:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2914。絶頂期。 つまりクリーチャー出現前の世界で活躍していたということ。

2021-09-12 19:14:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

小さな野球場の片隅で私だけが試合を見ていない。端末には場内の風の流れが表示されている。藍の悪戯を本当に検知できるのか。予告された時刻、高く上がった球を外野手が捕らえたが、味方への送球が乱れて走者を許した。逆転に沸く中、端末が光る。矢印が示す位置で、送球に失敗した子の帽子が飛んだ。

2021-09-13 20:46:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2915。送球。 試合の邪魔はしない。

2021-09-13 20:46:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「この土地の風を調べました!」若者は厚いレポートの束を携えていた。以前に魔女の旅への同行を願い出た変わり者だ。藍の気まぐれな発言を見事に達成したあたり、熱意と根性は確かだろう。「これで仲間に入れてくれますか」「仲間のところに案内してあげる」私は研究所への紹介状の作成を指示された。

2021-09-14 18:59:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2916。達成。 記録を打ち立てたその先は?

2021-09-14 18:59:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

よく使う宿でいつもと違う部屋に通され、藍がまず確認したのは窓からの眺めだった。「方角が違うだけなのに、別の町にいるみたい」素朴な感想に賑やかな声が重なった。その窓からは学校の運動場と、そこでチアの練習に励む少女達の様子が見えた。「誰の応援でしょうか」「あれを見る人の、じゃない?」

2021-09-15 19:00:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2917。チア。 誰かへのエールかもしれないし、自分たちの大会の練習かもしれない。

2021-09-15 19:00:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

未明に荒らされた倉庫は屋根が缶詰のようにめくられていた。何の仕業か未確認だが想像はつく。付近に人が立ち入れないようロープを張る作業を手伝っていると、途中で長さが足りなくなった。「向こう側をくわえて引っ張ってる子がいる」藍が倉庫の裏を指した。いつの間にか怪物との綱引きになっていた。

2021-09-16 19:19:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2918。綱引き。

2021-09-16 19:19:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物の牙に追い詰められた藍は足場の端から飛び降りた。思わず目を覆ったが、彼女はすぐ下のパイプにぶら下がっており無事だった。手を離す前に助けなければ。「そこにいてください!」安全に受け止める手段を探す間、藍は身体を前後に揺らしていた。鉄棒を使う体操の要領で回転か、飛ぶつもりなのか。

2021-09-17 18:56:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2919。鉄棒。 どちらにしても大変危険です。

2021-09-17 18:56:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

閉鎖されたプールから物音がするという。役所の調査隊と共に中へ入り、水遊びに興じる怪物の幼体を発見した。破れた屋根から入る雨水が思いがけず水場を蘇らせたようだ。「軍を呼んで駆除だ」「無理よ」意見しつつも震える隊員達の前で藍が上を指した。飛び込み台で丸くなって眠る個体は親に違いない。

2021-09-18 18:50:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2920。飛び込み台。 高い方は10メートルあるらしいので、高所大好きなクリーチャーの皆様にとっては理想の巣だったのかも。

2021-09-18 18:50:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ボードを抱えて波に挑む藍は間違いなく真剣に楽しんでいた。今日はバカンスのただ中ではなく、沖合の島へ渡る船を待っているだけなのだが。「お嬢様なかなか上手に……あー!」一瞬だけ宙に浮いた藍が、見物人の叫びと共に海中へ消えた。波しぶきが引いた後、砂浜に伏した彼女の不服そうな顔が現れた。

2021-09-19 19:19:14
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