茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2612回「新型コロナウィルスと気候変動。複雑系の挙動とリアプノフ時間」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2612回をお届けします。文章は即興で書いています。本日は、感想です。

2021-11-04 07:21:03
茂木健一郎 @kenichiromogi

新型コロナウィルスの挙動について、比較的議論されていないのは、これが「複雑系」(complex systems)のウィルスだということである。もちろん他のウィルスもそうだけれども、症状の出方や感染状況が容易には予測できない傾向がとりわけ強い。

2021-11-04 07:22:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

複雑系では、初期状態に微小な差異があるとある程度の時間が経つと予測が困難になる。指数関数で近似したリアプノフ指数と、その逆数であるリアプノフ時間が指標になる。リアプノフ時間程度の時間が経過したあとでは、系のふるまいを予測することは不可能である。

2021-11-04 07:23:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

新型コロナウィルスの感染のシミュレーションがあまり当たらないのは、関与しているパラメータがすべて知られていないことに加えて、挙動が複雑系でリアプノフ時間後は予想ができないことに起因している可能性がある。要するになぜ感染が増え、なぜ減少するのかがよくわからない。

2021-11-04 07:24:54
茂木健一郎 @kenichiromogi

今年のノーベル物理学賞は気候変動の研究に対して与えられたが、気候も「蝶の羽ばたき効果」にあるように予想な複雑系でもある。長年スピングラスなどの複雑系の研究をしてきたジョルジオ・パリージも受賞者のひとりになった。

2021-11-04 07:26:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

人類の活動による温室効果ガスの排出を通した温暖化対策は重要だが、同時に、地球の気候が十分に長い時間、リアプノフ時間よりも長い時間のあとでは予測不能であることも事実である。過去、地球は何回か全球凍結(snowball earth)を経験しているとされるが、そのような劇的変化の予想は困難である。

2021-11-04 07:27:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

新型コロナウィルスの症状の出方も、免疫系との相互作用でサイトカインストームなどの可能性があり、つまりは軽症で済むか、重症化するかの予想が難しい。リスクファクターは統計的には議論できるが、個々のケースでどうなるかは予測しきれない。

2021-11-04 07:28:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

新型コロナウィルスのふるまいには複雑系としての性質があり、症状や感染状況を予測し切ることは難しい。そのことを、シミュレーションなどを報じるときにもっと意識すべきだと思う。メディアも、パリージの業績を紹介するなどして、世間の複雑系に対する認知をあげる努力をすべきではないか。

2021-11-04 07:30:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2612回「新型コロナウィルスと気候変動。複雑系の挙動とリアプノフ時間」をテーマに7つのツイートをお届けしました。

2021-11-04 07:31:12