竹宮惠子の共同制作者・増山法恵 〜『続マンションネコの興味シンシン』を中心に〜

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シン@本 @naosarakyaa

竹宮惠子は『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984)で増山法恵の役割をはっきり説明している。「早く言ってしまえば、藤子不二雄先生方(この先生方が、2人で1つの名を使って作品を発表していることは周知のことですよね)のような意味あいのものなのです。ただし、増山の場合、絵を描く

2021-11-07 10:22:49
シン@本 @naosarakyaa

ところまでは一緒に仕事をすることができません。描くのは私だけ。しかし、私の名で発表された全て(ごく初期「空がすき!」までは除いて)の作品をプロデュースしてきました。だから私の作品の中では、竹宮の主張が色濃く反映されたA型、増山色のB型、そして、2つの色がうまくミックスしたC型の3種に

2021-11-07 10:22:49
シン@本 @naosarakyaa

分けられているハズなのです。最近ファンレターの中にも、鋭くその型を嗅ぎとって反応してくるものもあって、こちらとしても、そろそろこの部分を明らかにしたいな、と感じていました。藤子先生たちのように、デビュー時から2人で、というわけにいかなかったし、増山は絵を描かないので、一応私の名

2021-11-07 10:22:50
シン@本 @naosarakyaa

だけでやって来たということなのです。「竹宮恵子」という漫画家は、そんなわけで、増山のりえのものでもあり、また竹宮個人のものでもあります。表看板の漫画家「竹宮恵子」はいわば営業用「竹宮恵子」なのですよね。2人で1人、そして2人で3人を、私どもは営(や)っているというわけです」

2021-11-07 10:22:50
シン@本 @naosarakyaa

しかしこれを書いてから増山法恵は共同制作者から外れる。増山法恵は『風と木の詩』白泉社文庫10巻(1995)解説で、私が漫画業界から足を洗ってもう10年になると書いているので1985年頃のことだろう。 (画像・竹宮惠子『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984) 196頁。竹宮惠子と増山法恵) pic.twitter.com/AslqwAhvpI

2021-11-07 10:22:58
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理由は明確にはされていないが同書あとがきには増山法恵が最近スランプ気味で『風と木の詩』の連載も終り仕事内容が変化しつつあると書いている。(画像・竹宮惠子『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984)197頁。1980年2月「地球へ…」映画化の頃のハードスケジュール!) pic.twitter.com/GibhCg2odn

2021-11-07 10:23:06
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その後も二人の交流は続いた。増山法恵が同窓会のような本『アリス・ブックⅠ・Ⅱ』(新潮社,1991)を編集した際には竹宮惠子は原稿を寄せ、増山法恵はあとがきで、友人たちは浦島太郎状態の私に「あなた最近のマンガ全然読んでないんでしょ」と資料をたくさん見せてくれたと感謝している。

2021-11-07 10:23:06
シン@本 @naosarakyaa

(画像・竹宮惠子『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984)204頁)そして増山法恵が『風と木の詩』の続編ともいうべき小説『神の子羊』を書いた時には竹宮惠子が激励の言葉を寄せている。「増山のりえは、結構書ける人である。しかし、おもいっきり高い理想と激しい自己卑下のヘキのせいで、 pic.twitter.com/LZfNXlWt1o

2021-11-07 10:23:15
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しょっちゅう進退ならなくなってしまう。困ったもんだ。(略)増山と私の20年間のようなハーモニーの「神の子羊」を可愛がってやってください。(略)で、当然、増山は次の仕事にとりかからなければいけません。一から純粋に増山の部品だけでできた、新しい作品に。私の色と増山の色は、120度位違います。

2021-11-07 10:23:16
シン@本 @naosarakyaa

混ざるとおもしろい色ですが、それはそれ、別々に見てもらいたい訳ですので。これはもうただ、乞うご期待!と言うのみです。精々せっついてやりましょう。私としては、増山が小説の仕事だけで手一杯になってしまうことを望んでいます。本人はエッセイや評論の仕事も好きなようですが、私は彼女の特殊性

2021-11-07 10:23:16
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を誰よりもよく知っているので、そのエッセイを読むまでもないんですよね。さあ、早く!もっと私を楽しませてよ」『神の子羊 Ⅰ』(光風社出版,1992) 増山法恵はその後オリジナルの小説『永遠の少年 : 英国パブリックスクール・ミステリー』(角川ルビー文庫,1994)を書く。

2021-11-07 10:23:17
シン@本 @naosarakyaa

いずれものりす・はーぜ名義。 竹宮惠子と増山法恵の交友は最後まで続いた。増山法恵の訃報を世に伝えたのは竹宮惠子だったのだ。blog.k-takemiya.jp/cn1/2021-10-03…近年の増山法恵は体を悪くして在宅医療暮しで、一日おきに介護人が入っていた。亡くなる数日前も竹宮惠子と電話で話していたという。

2021-11-07 10:23:17
シン@本 @naosarakyaa

「彼女の亡くなり方を聞いて、苦しんだりしたようでなかったのが何より「よかった」と思えた。彼女はご両親の介護で何年も大変だったし、癌で亡くなった親友の佐藤史生さんもすごく近くで見送った。彼女は、他者のためには病気の体でも必死で駆け回る人だったから、その人たちが、

2021-11-07 10:23:18
シン@本 @naosarakyaa

彼女が苦しまないよう、助けてくれたんだと思う。 また、会おうね。あなたと会わなければ今の私はいない。 たくさんの知識、たくさんの楽しみをありがとう」 ところで話は急に『続マンションネコの興味シンシン』に戻る。私がこの本で最も楽しかったのは『風と木の詩』と『ドラえもん』の共演だ。

2021-11-07 10:23:18
シン@本 @naosarakyaa

素直になれずケンカしているジルベールとセルジュの元にドラえもんとのび太が現れ、ほんとのことしか言えなくなるひみつ道具ウラオモテックスをジルベールに貼りつける……という7コママンガ。 (画像・どちらも竹宮惠子『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984)183頁) pic.twitter.com/Crhlx3J6qS

2021-11-07 10:23:31
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なんといってもウラオモテックスという道具の選択が絶妙。ドラえもんファンとしてはこの絶妙さに唸るしかない。ただ惜しいのはどこでもドアが黄色なこと!正しくはピンク。セルジュとのび太の声優はどちらも小原乃梨子だが、まだこの時期はアニメ「風と木の詩」は制作されていない。

2021-11-07 10:23:32
シン@本 @naosarakyaa

なお、竹宮惠子はアニメ「風と木の詩」(1987)については監督の安彦良和より作画監督の神村幸子を称賛している。(『天馬の血族』完全版巻末インタビュー)藤子不二雄と竹宮惠子は1980年座談会をしているが、なんのつながりかというと、最近自作がアニメ化された漫画家二組というつながり。

2021-11-07 10:23:32
シン@本 @naosarakyaa

「ドラえもん」二作目と「地球へ…」一作目は同時代のアニメだった。『ドラえもん』てんとう虫コミックス29巻「まんが家ジャイ子先生」ではクリスチーネ剛田ことジャイ子が『アンコロモチ・ストーリーズ』という漫画を描いている。もちろん光瀬龍・竹宮惠子『アンドロメダ・ストーリーズ』のもじり。

2021-11-07 10:23:33
シン@本 @naosarakyaa

しかし『続マンションネコの興味シンシン』最大の驚きは寺田ヒロオとの対談だろう。対談というよりほとんど寺田ヒロオへのインタビューなのだが、トキワ荘の仲間との同窓会にすらなかなか顔を見せなかったあのテラさんが対談に応じたとは!井上和雄『バット君』の健全さに憧れた話、

2021-11-07 10:23:33
シン@本 @naosarakyaa

「少年」の編集者から、今回人気投票で『もうれつ先生』は2位でした、1位は鉄人28号です、がんばって下さい!と煽られ喧嘩した話、積極性がないので「漫画少年」やトキワ荘が無かったら漫画家友達はできなかっただろう等。 (画像・竹宮惠子『続マンションネコの興味シンシン』(角川書店,1984)101頁) pic.twitter.com/UmF1S5KoiH

2021-11-07 10:23:57
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トキワ荘の住人といえば少女漫画の偉大なる母・水野英子がいる。萩尾望都・竹宮惠子・山岸凉子・増山法恵が1972年に初めてヨーロッパに旅行した際に漫画家の三人は「これがヨーロッパの木なんだね、この質感をちゃんと描いていたのは水野英子先生だけだね」と感激していたと増山法恵は語っている。

2021-11-07 10:23:57