衆議院総選挙2021 神奈川県選挙区

神奈川県内の総選挙の投開票結果 http://www.pref.kanagawa.jp/docs/em7/cnt/f5/p744566.html 神奈川県内の期日前投票所(pdfファイル) http://www.pref.kanagawa.jp/documents/77777/1018kijitsuzen.pdf 神奈川県内の総選挙候補者などの行動予定告知ツイート集成・世論調査など 続きを読む
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 出口調査については、「共同通信社が実施した出口調査(東京新聞地方版掲載)」「共同新聞社が31日、県内投票所で実施した出口調査の結果を神奈川新聞社が分析(神奈川新聞掲載)」「朝日新聞の出口調査(朝日新聞地方版掲載)」の3つを使いました。
 共同通信社の出口調査は主に神奈川新聞のを使い、東京新聞を使った場合は、後ろに(東京)と書きました。

出口調査における神奈川県全体の指標です(単位:%)。

全体支持政党(共同)
自民:40.5 立民:19.4 維新:6.5 公明:4.7 共産:4.9 国民:2.2 れいわ:2 社民:1 N党:0.5 無党派:12.9

全体支持政党(朝日)
自民:41 立民:19 維新:6 公明:5 共産:5 無党派:17

無党派動向(投票した小選挙区候補の所属政党)(共同)
自民:30.1 立民:48.5 維新:10.5 共産:4.7 国民:1.6 社民:1.2 無所属:3.1

全体比例区投票先(共同)
自民:36 立民:23.7 維新:13.2 公明:7.5 共産:7.2 国民:4.8 れいわ:4.4

無党派動向(投票した比例区の投票先)(共同)
自民:17.6 立民:24.8 維新:21.6 公明:(未掲載、9弱と推定) 共産:9 国民:9.8

笑っちゃうぜ!! @24mizushima

神奈川選挙区公示日以降応援弁士一覧(1区から6区) 「応援弁士」とは、行動予定告知で、演説会場にやってくることが告知されている「有名人」、というように定義しています。 pic.twitter.com/IpPtQ24Wn0

2021-10-30 09:45:28
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笑っちゃうぜ!! @24mizushima

応援弁士が自分の選挙区に入った場合も、行動予定告知にあった場合、載せております。この表に全く載っていない陣営も、応援弁士が来ている可能性は大いにあります。「横浜駅」「桜木町駅」など、複数の陣営にまたがる場所の場合は、応援弁士側が陣営を指定した場合を除き、省略しています。

2021-10-30 09:55:49
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

これから、2021年に行われた衆議院総選挙神奈川県選挙区のデータをアップしていきます。データ元は神奈川県選挙管理委員会で、必要に応じて加工しております。今回は「~率」という「分子分母が不明確」な数値は使わず、全て「人」単位の実数を使っています。

2021-11-12 21:52:20
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

神奈川1区から4区までのデータです。「有権者数」「有効投票数」「棄権無効白票数」の右の2つの数字は、左が実数、右が「前回選挙からの増減」を表しています。「棄権無効白票数」が減っていると、「投票率が上がった」状態になります。今回神奈川県ではほとんどの選挙区で投票率が上がりました。 pic.twitter.com/65ySpfs6lz

2021-11-12 21:57:29
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1区
10月31日共同出口調査
 篠原 無党派52.2%、自民18.2%、公明21%(東京)、国民62.9% 
 松本 無党派17.8%、自民64.6%、公明65.8%、国民14.3%、
 浅川 無党派30%、自民17.2%、

10月29日読売
篠原と松本が激しく競り合う
 篠原立民9割・共産8割弱・無党派4割
 松本盛り返す、自民6割・公明7割・無党派2割
 浅川維新7割強・自民2割弱

10月27日神奈川
篠原が先行 松本苦戦 与党・無党派態度未定多い、自民3割弱・公明4割弱未決
 篠原立民8割・共産6割強・無党派2割弱、自民・公明一部
 松本自民3割強・公明約4割
 浅川維新6割、自民一部、保守層の受け皿になろうと懸命、無党派への浸透が課題

10月27日朝日
篠原安定 松本・浅川は苦戦
 篠原立民ほぼ・共産広く・自民一部・無党派6割
 松本自民6割強・無党派2割強
 浅川自民2割程度・無党派2割

1区
 公示前から色々あったし、選挙中も一波乱あったわりには想定通りの票数に収まったという感じがする。
 松本氏は不祥事で離党し無所属での立候補になったが、区内の自民党地方議員は皆フル稼働で松本氏を支援した。しかし、その結果比例自民票が減ってしまい(比例自民票が減ったのは神奈川県では他に11区のみ)、1区自民党にも「お灸が据えられた」形になってしまった。
 無所属であるにも関わらず、安倍晋三元首相(神奈川県では他に16区のみ)や河野太郎氏、公明党の三浦信祐氏が応援弁士になった。私見だが、厳しい状況の自民党公認候補者は苦々しく思ったのではないか。
 篠原氏も「松本氏が不祥事案件だから勝つ」という他力本願の勝因しか注目されず、選挙中に横浜市長リコール案件で「不祥事らしきもの」がtwitterのYahoo!ニュース経由でトレンドになった(このソースは「山中竹春横浜市長のパワハラ問題」のソースと同じFlashnewsである)。しかしこの「不祥事らしきもの」もダメージにならなかったようだ。
 横浜市長選挙の後に、磯子区・金沢区で市会議員補欠選挙があり、両方とも無所属・国民民主党全面支援・自民党秋波、という候補者が出て1勝1敗。しかし、共同はわざわざ「国民の62.9%は篠原氏に投票」と書いて、国民民主党のフレキシブルさを例示した。
 維新に関しては、先に述べたふたつの補欠選挙に候補者を出さなかったので、基礎体力がない、と判断したのだが、「神奈川6区現象(公明・野党・維新の3つ巴は維新が自民票を獲って野党・維新に有利)」の無所属バージョンとなって維新に票が来て、また松本・篠原両氏が選挙中に案件持ちとなったので、「問い質す」ことには得意の維新に有利になったようだ。

2区
10月31日共同出口調査
菅 公明83%(東京)、無党派45.3%
岡本 無党派54.7%

10月29日読売 記載なし

10月27日神奈川
菅の優位は変わらず
 菅自民8割強・公明7割強
 岡本政権批判票の受け皿を狙い、無党派層への浸透を図る 立民・共産8割近く・無党派4割弱、れいわ・社民囲い、維新・国民5割超

10月27日朝日
菅、幅広い年代に浸透
 菅自民ほぼ・公明多く・無党派6割
 岡本立民・共産ほぼ・公明一部・無党派4割

2区
 選挙後に各紙で検証記事が出て、「菅氏リベンジ、岡本氏野党共闘不十分」という所は共通していた。
 菅氏は横浜市長選後に速やかに総理の座を降りたのが「潔い」ととられ、総選挙中に新型コロナ感染症患者が減ったのは菅元首相のコロナ対策が功を奏したためと評価された。
 横浜市長選の「戦犯」とする見方もあったが、横浜市内の他の選挙区に応援弁士として入り、入った選挙区は3勝1比例復活(2区・4区を除く)、特に5・6区は3ヶ所ずつ入り、聴衆を集め、僅差の勝利に貢献した。「人間万事塞翁が馬」。
 選挙中は岡本氏から立民の地方議員が離脱してしまい、共産党地方議員が岡本氏の選挙を切り盛りした。確かに「野党共闘不十分」だが、立民票は確実に入った。そもそも選挙区に地道に岡本氏のポスターを貼っていたのは立民の地方議員で、今回なぜ、故意に「野党共闘失敗」を印象付けることを立民の地方議員がやったのか、特定できない。
 菅氏のような強い政治家は、自民・公明を固めたうえで維新・国民にも食い込む。岡本氏は立民・共産・左派票は獲ったが、保守票を取れなかったのが「勝つか負けるか、というより議員になれるかなれないか」の違いになったのだろう。
 藤木幸夫横浜港ハーバーリゾート協会会長が唯一岡本氏を応援して街頭に立った。これはこの先の神奈川政局には大きな意味があるのだろうけれど、藤木会長は岡本氏とは特に縁がない。2区の共産党に大物がいて、藤木会長とウマが合ったのだろうか。本来藤木会長が応援演説をやるのなら、「信頼できる」と語っていた江田憲司氏の8区だろう。

3区
10月31日共同出口調査
中西 無党派31.4%
小林 無党派42.4%
木佐木 無党派16.3%
藤村 無党派9.9%

10月29日読売 記載なし

10月27日神奈川
くら替え中西リード
 中西自民・公明約8割・維新4割強、立民・共産・無党派一部
 小林伸び悩み、知名度を高めて追い上げを図る、立民約6割、無党派一部
 木佐木広がりに欠けている、共産7割
 藤村厳しい

10月27日朝日
中西、支持基盤を固め優勢
 中西自民9割・公明浸透・無党派5割
 小林立民9割・無党派3割
 木佐木・藤村無党派層でも広がりが見られない

3区
 中西健治氏は横浜市長選のときから、小此木八郎氏の麾下である地方議員と共に神奈川3区内の駅を廻っていた。参議院議員で神奈川県中の駅を廻り、議員の集まりを廻ってきたので、中西氏にとって神奈川3区は狭すぎて、2ヶ月で「浸透する」に充分なくらい街頭演説をやってしまった。
 立民は地方議員は頑張っているものの、肝心の小林丈人氏が「浸透していない」。共産は元県議の木佐木氏を立てたが、ここは古谷靖彦市議が頑張っている所でどうも木佐木氏は影が薄い。比例の共産党票は前回より上乗せしたのに、先の地方統一選挙で県議から落選した木佐木氏には勝ち運がなかった。
 私見するに、10区の畑野君枝氏をここに持ってきて、3区を野党共闘区にしたほうがいい。ただ、そうすると2区や10区のように、立民の地方議員が離脱してしまう懸念も充分にあるけれど。

4区
10月31日共同出口調査
早稲田 無党派39.5%
浅尾 無党派35.2%、自民42.1%、立民15.6%、
山本 無党派10.3%、自民45%(東京)
高谷 無党派10.3%
大西 無党派4.7%

10月29日読売
早稲田と浅尾がしのぎを削り、山本が追いかける
 早稲田立民8割強・共産8割・無党派3割
 浅尾自民4割・無党派3割強
 山本自民5割

10月27日神奈川
3氏譲らず再び混戦 早稲田・浅尾・山本激しく競る、無党派5割支持未決
 早稲田立民5割強・共産7割弱・無党派約2割
 浅尾自民3割・公明3割弱・維新5割強・立民2割弱・無党派約2割
 山本自民・公明5割前後、無党派には浸透していない
 高谷維新4割弱
 大西苦戦

10月27日朝日
浅尾・早稲田・山本が横一線
 浅尾自民3割程度・無党派4割・立民1割強
 早稲田立民8割・無党派4割
 山本自民6割・無党派1割
 高谷・大西引き離されている

4区
 早稲田夕季・浅尾慶一郎・山本朋広各氏が横一線になるような難しい選挙区だった。
 この3氏は普段も駅頭を欠かさない。だから他の区に比べて投票率(後述)が高いのかもしれない。しかし、普段の努力も選挙中に情勢が変わり、結果3人とも議員、とはならなかったのは(落選した浅尾氏にとっては)厳しい。
 私が特に注目するのは、比例の立民支持が8220人も減ったことである。比例で下がるということは、不満は立民公認の早稲田氏ではなく、立民全体にある、ということだと思う。他に比例の立民支持が下がっている選挙区は12区なので、前回総選挙も立民公認候補がいた選挙区が下がった。私見するに、前回総選挙は立民は某東京都知事から「排除された」「理不尽な仕打ちを受けた」「弱者」達の集まりで、大いに同情票を集めて躍進した。今回総選挙で立民は野党第一党であり、政策に一貫性がない所もあり、前回総選挙のとき同情して立民に入れた有権者の一部は「あの時の立民とは違う」「偉そうになった」と考え、れいわ等他の党に流れてしまったのではないか。
 もしそうだとしたら、選挙戦最終日10時半の枝野幸男代表の応援演説は「逆効果」だったのではないか、という仮説ができる。神奈川4区の早稲田陣営が「立民全体憎し」の空気を察していれば、枝野氏を呼ばずに自力で行くこともできたのではないか。そして、枝野氏は自分を必要としている5区や14区に行けたのではないか。ここは神奈川県選挙区全体の勝敗の分かれ目となったポイントだったと思う。
 残った立民票も浅尾氏に流れた。早稲田氏の2度目の「漁夫の利」(与党が割れて野党が勝つ)は「誤差」によるものだと思う。早稲田氏の個人的な浸透ぶりが自分を救った。
 浅尾氏は自民票の42.1%、無党派層の35.2%を取り、三つ巴なら普通は勝てる票数を取った。突然「私は総理を目指す」と宣言したり、twitterの使い方を誤ったりして、「独自の戦い」になってしまい、取れる票を失ったのかもしれない。
 投票率が61.70%で、60%を超えた。60%台になると潜在的野党層が投票に行きだすので、このまま三つ巴の戦いが続けば、投票率は高くなるだろうから、少なくとも山本氏には不利かもしれない。 

笑っちゃうぜ!! @24mizushima

神奈川5区と6区、そして6区を形成する横浜市保土ヶ谷区・同旭区のデータです。神奈川6区につきましては、当選した古川直季氏が旭区選出の横浜市議だったので、後の分析の参考にするため載せました。右側の政党名がある所は比例代表のデータです。今回の「N党」と前回の「幸福」は基本省略しました。 pic.twitter.com/ndPjcjSLmJ

2021-11-12 22:02:08
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5区
10月31日共同出口調査
坂井 無党派34.5%
山崎 無党派65.5%

10月29日読売
山崎と坂井が互角のまま終盤戦にもつれこみ
 山崎立民9割強・共産9割弱・無党派5割強
 坂井自民8割強・公明5割

10月27日神奈川
坂井が浸透 山崎追走
 坂井自民約8割・公明約5割、無党派2割程度
 山崎共産約9割・立民・社民約7割以上・維新6割弱・公明約3割・無党派2割程度

10月27日朝日
坂井・山崎 激戦繰り広げる
 坂井自民9割強・公明多く・無党派4割
 山崎立民9割強・無党派6割・共産浸透・維新一部

5区
 山崎誠氏は惜しかった。選挙戦の後半が山場だった。
 先に4区で書いた通り、枝野幸男代表は最終日10月30日に5区に行くべきだった。28日に福山哲郎幹事長が行ったが、29・30日に応援弁士が来なかった。一方、劣勢が伝わった坂井学氏の陣営は28日に菅義偉元総理を呼んで東戸塚駅西口を聴衆で埋め、30日に河野太郎氏を戸塚バスセンターに呼んだ。これで「迷っていた保守票」が坂井氏に流れ勝敗が決したと私見する。
 野党共闘がハマった選挙区である。泉区・瀬谷区は立民が強いが、戸塚区は立民が弱く、共産が比較的強い。戸塚区で立民が本隊・共産が別動隊としてスムーズに協力できたのは大きい。
 正直坂井氏が劣勢になる要素が考えられない。国民民主党は最初から坂井氏につくのは分かっていたはずで焦る必要はなかった。戸塚区の鈴木太郎・伏見幸枝両市議は普段から駅頭は欠かさず(坂井官房副長官も時折参加した)、特に鈴木市議は議会も選挙も知勇兼備で頑張る人なので、戸塚区は坂井氏だろうと思っていたらそこまで安易には取れなかったようだ。
 5区は期日前投票数が前回より11183人も減り、特に泉区で8409人減った。投票率が上がっているので、当日投票が増えた。泉区の有権者は最後まで投票先に迷ったか、あるいは購読している新聞が読売新聞で、29日(金)に情勢分析が来るのを待ったか。共同新聞の出口調査によると、5区で期日前投票に行った人々の14.4%が公明党支持層だったというから、泉区の公明党支持層が山崎氏に流れた可能性がある。
 私の地元選挙区である。ここは応援弁士がくると野次馬根性で人々が集まる。期日前投票所は全て駅前にあり、陣営にとっては非常に助かる。東戸塚駅では選挙戦後半から20時以降でも候補者が立っている。地元選挙区なのに「なぜここまで接戦になったか」わからない、というのが残念だ。

6区
10月31日朝日出口調査
古川 無党派26、自民80、立民2、公明63、共産8、維新15
青柳 無党派52、自民12、立民95、公明23、共産85、維新2
串田 無党派18、自民7、立民2、公明12、共産6、維新65

10月31日共同出口調査
古川 無党派25.7%
青柳 無党派56.6%
串田 無党派17.7%

10月29日読売
青柳と古川が接戦になっている
 青柳立民・共産9割・無党派4割・維新4割弱
 古川自民8割強・公明7割弱
 串田維新6割、無党派への浸透に苦戦

10月27日神奈川
青柳、古川が横一線 無党派4割強未決
 青柳立民・共産8割強
 古川自民7割強・公明6割強
 串田浸透しきれていない、維新約7割、無党派の支持が広がっていない

10月27日朝日
青柳・古川 競り合う
 青柳立民ほぼ・無党派5割強・共産大半
 古川自民9割・公明多く・無党派3割強
 串田無党派1割、支持の広がりが見られない

6区
 神奈川県選挙区中、一番難解な選挙区だと思う。
 古川直季氏は旭区選出の横浜市会議員。7期26年の実績があり、直近の統一地方選挙では22362票(横浜市内最多票)を獲得した。旭区では無敵の存在である。しかし、保土ヶ谷区では無名の存在。古川氏が6区支部長になったのは今年の4月15日。出遅れ著しく、保土ヶ谷区の浸透不足が響いて難しい選挙になるだろう、と私は考えていた。保土ヶ谷区のポスターは公明党ばかりで、自民党地方議員の掲示板でも古川氏のポスターが貼られている期間は限られていた。
 ただ、「神奈川6区現象(公明(無所属)・野党・維新が立候補すると、維新が自民票を取って、野党が有利になる)」の本家がこの現象から抜けたので、「保土ヶ谷に浸透すれば」古川氏は以前の公明党上田勇氏より得票することは考えられた(そして、維新の串田誠一氏は厳しい、と考えられた)。
 結局、古川氏は保土ヶ谷区でも前回上田氏と同じくらいの得票があった。早い段階の世論調査から、古川氏は「自民8割弱」と取っていたから、半年で保土ヶ谷区に「浸透」させてしまったということになる。4年間活動して「知名度に欠ける」と書かれてしまう候補もいるのに、これは驚愕すべき出来事だと思う。神奈川6区の地方議員は概してSNS露出が少ないが、保土ヶ谷区選出の斉藤伸一横浜市議(公明党)が頻繁に古川氏への支援を発信しているのが目を引いた。
 応援弁士を調べると、10月28日(木)菅義偉前首相と10月30日(土)河野太郎氏を保土ヶ谷駅に配したのは興味深い。神奈川6区と言えば相鉄線沿線にやたら駅があると印象である。しかし、横須賀線保土ヶ谷駅西口は駅頭がやりやすく、近くの期日前投票所に駅頭の音が聞こえる、という所である。
 神奈川6区の相鉄線沿線の駅は各駅停車駅・急行停車駅どれもそれなりに重要である。期日前投票所がある保土ヶ谷区役所は各駅停車駅の星川駅にあり、区役所へ行く出口は狭く駅頭はできない。一番大きな駅は期日前投票所もある二俣川駅で、隣の鶴ヶ峰駅は急行停車駅と変わり期日前投票所がある(二俣川・鶴ヶ峰・星川・保土ヶ谷が神奈川6区の全ての期日前投票所である)。各陣営二俣川駅・鶴ヶ峰駅での応援弁士を呼んでの駅頭が多い。
 青柳陽一郎氏については、選挙中落ち度はなかった、と言える。山中竹春横浜市長を呼べればベストだったか。ただ、青柳氏自身は30日夕方に「(世論調査のように)盤石ではない」と焦りを見せていた、と産経新聞は書く。そもそも、日本経済新聞10月29日世論調査に至っては、「野党候補が与党候補を引き離している」選挙区のひとつとして神奈川6区が挙げられたくらいである。10月21日神奈川・毎日新聞では古川氏が前に出たが、それ以降の世論調査は全て青柳氏が前に出ている。
 公明党支持層が期日前投票で古川氏に入れることが予想されたが(共同通信の出口調査によると、期日前投票に行った人々の割合14.4%が公明党支持層、その87.8%が古川氏に投票した)、期日前投票の投票率も前回より下がった。
 「神奈川6区現象」は与党が自民党になっても若干発生し、出口調査では青柳氏が自民党支持層の12%、串田氏が同7%を獲得した。古川氏の保土ヶ谷区での浸透ぶりと串田氏の存在が、青柳氏が自民党支持層の2割以上を取るのを阻止した。
 旭区には国民民主党の横浜市議がいるが、公示前までは青柳氏を支援したが、選挙中は不明だった。
 NHK・TVKの出口調査で、神奈川県選挙区では唯一、「間違えた」選挙区になった。両出口調査とも青柳氏の方が古川氏より多く得票している、と出した。またどうしてここだけ間違えたか。そもそも投票終了後に判明するテレビの出口調査を「隠れ〇〇」戦法で偽ったって、何の益ももたらさない。

笑っちゃうぜ!! @24mizushima

神奈川選挙区公示日以降応援弁士一覧(7区から11区) 行動予定告知になくても、飛び入り参加したり、街宣車に乗っていたりする「応援弁士」もいます。また、陣営によって、「応援弁士」扱いするかしないか、判断が分かれる人もいます。 pic.twitter.com/SHCUpSPFmm

2021-10-30 09:48:54
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笑っちゃうぜ!! @24mizushima

神奈川7区から神奈川10区までのデータです。都筑区は7区と8区に分かれているのですが、神奈川県選管(横浜市選管も)は比例代表に関しては都筑区全体のデータしか掲載しませんでした。従って便宜上、比例のデータは都筑区全体の数字を7区に入れておりますので、神奈川7・8区の正確な分析はできません。 pic.twitter.com/InjvjRZmDG

2021-11-12 22:06:39
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7区
10月31日共同出口調査
鈴木 無党派31.1%
中谷 無党派68.9%、立民9割超、共産9割ほど、公明支援

10月29日読売
序盤から僅差で競り合ってきた中谷と鈴木のデッドヒートが続く
 中谷立民9割強・共産9割・無党派5割・維新5割弱
 鈴木自民8割・公明9割弱

10月27日神奈川
鈴木、中谷競り合う 共産7割・無党派6割弱未決
 鈴木自民6割・公明8割・無党派2割強
 中谷立民7割・無党派2割弱・共産3割

10月27日朝日
鈴木やや先行 中谷が追う
 鈴木自民ほぼ・公明浸透・維新一部・無党派4割
 中谷立民ほぼ・無党派6割・維新食い込む・公明一部

7区
 自民党県連は公示前、神奈川7区を「重点区」とは見なしていなかった。一方、中谷一馬氏陣営は公示前に応援弁士を3人呼んで、序盤情勢世論調査に向けて主導権を取ろうとした。実際、読売・日経が中谷氏を先に出し、ここから自民鈴木馨祐氏陣営の巻き返しが始まり、大変な接戦となった。
 7区の自民党地方議員は市長選の時から小此木八郎氏の支援に健闘し、今回総選挙で比例自民票を多く上積みした(神奈川7・8区の比例票は正確ではない)。先の統一地方選挙で自民党は7区で5人の市会議員を輩出、基礎はできていた。
 一方中谷氏陣営も先の統一地方選挙で中谷氏直系の地方議員が多く誕生し、前回の衆院選では一部の立民地方議員が流れたとされる希望の党の候補が党ごとなくなった。れいわ・連合の推薦を受け、共産との共闘も前回と同じ、体制は格段に良くなった。
 7区は横浜市のベッドタウンであり、市営地下鉄・東横線の(新横浜駅は除く)どの駅も重要である。ただ、期日前投票所があり、大きな住宅地があり、大規模な駅頭ができるセンター北駅・センター南駅・日吉駅が応援弁士の演説駅として使われた。
 鈴木氏は21日(木)13時センター南駅に小泉進次郎氏、24日(日)15時センター北駅に河野太郎氏、30日(土)16時5分日吉駅に岸田文雄首相(同首相の神奈川来援は他に14区のみ)。中谷氏は21日(木)14時15分日吉駅に蓮舫氏、28日(木)13時20分日吉駅に福山哲郎幹事長、30日(木)13時半センター南駅に枝野幸男代表。特に時間帯が昼頃に集中しており、主婦・高齢者層が外出して演説を聴いて期日前投票をするのに最適な時間帯だ。7区は期日前投票数が前回総選挙より上がったのも、両陣営の作戦があったから、とも言える。
 4千票の差で鈴木氏が勝ったわけだが、鈴木氏は自民公明、中谷氏は立民共産れいわの票を目一杯取って、為すべきことを為しての票差だから、やはり鈴木氏に「一日の長」があったのかもしれない。今回投票率は57.58%。60%以下なら潜在的自民党支持層が潜在的野党支持層よりも多く投票に行く傾向がある。

8区
10月31日共同出口調査
江田 無党派61.8%
三谷 無党派38.2%

10月29日読売 記載なし

10月27日神奈川
江田が優勢 追う三谷
 江田立民9割以上・無党派半数近く、共産・社民・れいわ・公明一定支持
 三谷自民7割・公明6割、江田に先行を許す無党派への浸透が課題

10月27日朝日
江田が優位に立つ
 江田立民9割強・無党派7割強・維新多く・自民2割
 三谷自民8割・維新一部・無党派3割弱

8区
 横浜市長選の影響が出た選挙区。正直、江田憲司氏は危なかった。神奈川6区と同じく、世論調査は「江田優勢」を出し続けたが実際はそうではなかった。
 自民党神奈川県連は、横浜市長選で負けた恨みを江田氏一身にぶつけ、「最重点区」としてとぎれなく応援弁士を入れた。7区と同様地方議員の数が多く、比例票の上積みも多い(7区と同じく、比例票数は正確ではない)。特に8区自民はライトウイングが突出して多く、応援弁士もライトウインガーが参集した。
 その結果、三谷英弘氏が埋没してしまったのが前回の総選挙だったが、今回は三谷氏も「胸に手を当てる、アメリカ合衆国の『国に忠誠を誓う』儀礼」をやったり、応援弁士のお歴々にもやらせたり、中々の「ライトウイングとしての」健闘を見せた。行動予定告知でも「グータッチ」のつもりか、こちらに拳を突き出すポーズをとり、「三谷氏も8区に慣れたなあ」と私は思った。
 高市早苗・野田聖子両氏が入ったのは神奈川県では8区のみ。期日前投票も前回より大幅に増え、期日前投票に行った公明票支持者の87.6%が三谷氏に投票した。後述の「江田案件2件」にも三谷氏と地方議員とでSNSで集中砲火を浴びせ、「江田憎し」は最高潮に達した。
 江田氏は、浪人経験があるのに選挙に「クリーンな仕草」をし過ぎる。
 「ポスターを貼らない」のはそのひとつ。江田陣営は三谷陣営のポスターが違反だとしていたが、逆に江田氏の公営掲示板のポスターの「変わらぬ風貌」がtwitterトレンド入りの案件となってしまった。
 「応援弁士を呼ばない」のもそのひとつ。しかし、藤木幸夫横浜港ハーバーリゾート協会会長は呼ぶべきではなかったか。藤木氏は「江田氏と山中竹春氏を評価して」野党側に廻ったのだから。そして、山中横浜市長も「強引に」呼ぶべきではなかったか。
 なお、山中市長はこの総選挙で応援演説をしなかった。野党議員のおかげで市長になれたのに、その恩を返さなかったのである。しかも31日には江田憲司氏の事務所に駆け付けている(のを読売新聞が報じている)のだから、「ヒドい人だなあ」の一言に尽きる。野党は山中市長を「もっとこき使う」べきだった。5・6・7区では逆転もあったかもしれない。
 江田氏は「選挙期間中は8区には入らない」という「クリーンな仕草」もあるが、今回は少なくとも公示日と23日(土)に8区に入った。公示直前を含めると、応援弁士として8つの他選挙区に入っているが、4勝2比例復活2敗というハイアベレージである。やはり江田氏は政治評論家然とした話の面白さが武器である。しかし、テレビで非合理な経済政策を述べて2番目の案件を作ってしまい、今度は全国から叩かれる羽目になった。
 江田氏に案件が生じ、地方議員や応援弁士が頑張っても三谷氏は勝てなかった。どうも三谷氏は(いくら頑張っても)神奈川8区には合わないようだ。もっとライトウィングな人(例えば神奈川16区の義家弘介氏)を8区に持ってきたほうが良いかもしれない。