編集部イチオシ

お玉さんの読書マラソン企画「本格力を高めよう サンシャイン」(3)

オールタイムのミステリベスト本『東西ミステリーベスト100』(2012年度版)国内編と海外編双方の同順位作品を、ミステリ読みの鉄人 お玉さんが比較検証。感想を述べつつ「どっちが好きか!」判定する対決企画です。本おまとめはその第3部、16位〜20位 61位〜65位 86位〜94位 76位〜80位のブロックとなります。 第1部はこちら→ https://togetter.com/li/1723552 第2部はこちら→ https://togetter.com/li/1750586
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お玉と毒のぬまち @ottama709

さて、12月3日分の「本格力を高めよう サンシャイン」でございます。 今回から16位から20位のブロックをば。 前回まで順位の高いほうから紹介してましたが、ここからは順位の低い方からの紹介となります。紹介順も「国内」→「海外」で行きますよ。 つまり、今晩は20位の感想となりますわ。それでは

2021-12-03 01:38:18
お玉と毒のぬまち @ottama709

「東西ミステリーベスト100」(2012年度版)東西戦 ◎第20位 綾辻行人『時計館の殺人』(1991年)vs アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』(1927年) pic.twitter.com/EiCal0LcZQ

2021-12-03 01:38:37
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お玉と毒のぬまち @ottama709

さて、「時計館」 何度か呟いてるが、お玉さんが綾辻行人作品で一番好きなのが『Another』。 で、「館シリーズ」で一番好きなのは『時計館の殺人』だったりする。 この二大巨頭、ホラー要素を上手く使っている本格ミステリであり、且つ、本格ミステリ要素を非常に上手く使ってるホラー小説なんよね

2021-12-03 01:39:10
お玉と毒のぬまち @ottama709

ミステリにおける偶然は必然 ミステリ読書の多くはそういう心持ちで割り切った上でフィクションを楽しんでいると思う。 けど、ときどき誠実な作家さんの幾人かが、作中で起こる偶然の数々に対し「まるで何らかの意志が存在しているかのような」描き方を行うわね。

2021-12-03 01:39:29
お玉と毒のぬまち @ottama709

物語のバックボーンに、作者の都合以外の何らかの意志が見えてくると嬉々となる。そこにホラー味を感じる悪い読者だ。けど、良く出来たホラー小説は脳内物質がドバドバ溢れるくらい嬉しい。 『時計館の殺人』はそれが本当に顕著。 トリックを可能とする館の仕掛けが生み出すトリック以上の効果に震える

2021-12-03 01:40:56
お玉と毒のぬまち @ottama709

悪く言えば、謎解き小説を受け身スタイルで挑むとすると『時計館の殺人』の犯人当てはかなり簡単だったりする。 →「あー、コイツが犯人! 何か館の仕掛けを使ってコイツが殺した〜。館の仕掛けが何なのかは知らんけど、コイツ絶対犯人!」 犯人は誰か? という分かりやすい点で「時計」は損している

2021-12-03 01:41:11
お玉と毒のぬまち @ottama709

(そう考えると「閉ざされた犯行現場にの外には外部の生活がある」という同種の構造でトリック自体はそれほど強くないのに、「犯人が最後の最後までわからないと」という一点で頭抜けている『十角館の殺人』が人気なのは、納得なんだよなぁ)

2021-12-03 01:41:11
お玉と毒のぬまち @ottama709

『時計館の殺人』の主軸となるトリックは案外シンプルだったりする。でも、そのシンプルな館のアイデアをしゃぶり尽くすかのように様々なカタチで使い倒している。 数ページに渡るあの登場人物の行動表とかいつ読み返しても胸ドキドキで熱くなるわ。やっぱ本格ミステリって、ここまでやらなくちゃだね

2021-12-03 01:41:27
お玉と毒のぬまち @ottama709

計画的な殺人進行は極めて理性的だったりする。 だのに、『時計館の殺人』での犯罪動機はトチ狂っているの一言だ。シンプルなアイデアの館の仕掛けが密接に絡み合っているので、動機の証明時に途轍もない美しさが表出するわけだが、雪だるま式に膨らんでいく心理は何処を切り取っても異常なのよね

2021-12-03 01:42:08
お玉と毒のぬまち @ottama709

『時計館の殺人』の大半は謎の犯人(働きモノ!)によるテンポ抜群な殺人劇場が行われ、さながらスプラッタホラーなテイストなんだ。 けど、館の異常さを遥かに凌駕する犯人の異常な心理が終盤で語られるのよ。異常な考えが館の構築に繋がり、館の特性が犯罪へと誘う。 ホラーのテイストが一変するの

2021-12-03 01:43:08
お玉と毒のぬまち @ottama709

謎の犯人(働きモノ!)のタイムスケジュールを見つめるとき、どういう心持ちだったのか? をたまに考える。 殺人を行なっているとき、アレをアレしているとき、どういう状況だったのかを想像してみる。 様々なタスクをこなすため時間に追われてるだろうが、多幸感に包まれてたのではなかろうか? と。

2021-12-03 01:43:59
お玉と毒のぬまち @ottama709

ガッチガチの本格ミステリでもあるので、前提となる大きな動機に「犯人にとって都合こ悪い出来事をクリアするため」の小さな動機、つまるところ理性の下で発生した動機が重なり、(先に言ったが犯人当てとしてはバレバレではあるが)読者の推理の手助けを提供するんだ。

2021-12-03 01:44:28
お玉と毒のぬまち @ottama709

そこに、正気=狂気な心境を垣間見、怖さを覚えるんだよね。意図しない突発事項すら自分の物語に取り込んでしまってるかのように思えちゃうのよ。 怖い。 本格ミステリの醍醐味である解決パートは途轍もなく楽しくもあるが、数十ページに渡る狂気の解説であり狂気の証明でもある。 怖い怖い。

2021-12-03 01:44:28
お玉と毒のぬまち @ottama709

本格ミステリ作家としての綾辻行人は大好きだが、ホラー小説の書き手としての綾辻行人は大大大好きな人間である。 「人形館」みたいなあまりに直球なのは再読となると足踏みするけど(結局は読む)、綾辻行人という小説家のありとあらゆる良点のみがギュッと詰まった「時計館」はやっぱマストなんよね

2021-12-03 01:45:02
お玉と毒のぬまち @ottama709

「暗黒館」はちょっとボリューミー過ぎてやり過ぎ感がある。 「水車館」のラストにはハッとなるけど、この作品に関しては本格ミステリを考えて読むため&書くための教科書的意味合いで評価してるので、怖さは感じないのよね。

2021-12-03 01:45:03
お玉と毒のぬまち @ottama709

本格ミステリとしてはあらゆる点で弱いけど、子供向けだからこそストレートに怖い小説に仕上がっている「びっくり館」はスゲェ好き。 当然、「囁きシリーズ」は大大好き。 ……『Another2001』は、近年の作品なのでまだ読めていないゾ すみません

2021-12-03 01:45:03
お玉と毒のぬまち @ottama709

さて「毒チョコ」 郵送されたチョコレートは必ず食べる派の人には恐怖の作品ですね。 毒チョコを食べて死んだ人を話のタネに、密に集まってワイワイガヤガヤ議論を交わす、不謹慎な作品です。 嘘です。 現代のシーンにおいても頻繁に採用されているミステリのタネが、今作には仕掛けられてますよ

2021-12-03 01:45:49
お玉と毒のぬまち @ottama709

多重推理! 作品内に多重推理の趣向を用いると、現代のシーンにおいても「コレ、毒チョコみたいやね」と呼ばれるくらい強烈にかましてくれる衝撃的一作。 しかも、始祖作品にありがちな「定理を提唱しただけで中身は精査されず全然未成熟な作り」とかではなく、その仕上がりはオーパーツ気味に異常!

2021-12-03 01:47:06
お玉と毒のぬまち @ottama709

たびたび呟いてるけど、推理のビルド & クラッシュの繰り返しが超絶好きなので、「毒チョコ」には足を向けて眠れないんよね。 しかも、推理の試行錯誤を繰り返す過程でどんどんデータがアップデートされていく。デタラメな妄想からスタートし、情報が集積され推理の照準が絞られてくる! 大好き!

2021-12-03 01:47:29
お玉と毒のぬまち @ottama709

あまりにあまりのギャグテイスト(ウケ狙い)な推理の解答まではカバー出来てないが、その後の「毒チョコ」系統作品でたびたび見ることとなる、白熱した議論をユーモア味を帯びた空気感の中で進行する光景はキッチリ押さえたりしているんだよね。本当に油断ならないわぁ。

2021-12-03 01:48:33
お玉と毒のぬまち @ottama709

この東西戦でアントニイ・バークリーは『試行錯誤』『第二の銃声』を取り上げ、その変わった趣向に賞賛を送ったわけではあるが、内心「ミステリが好きじゃない人には、少し小難しいのでは?」とも思ったのよね。 一晩毎に探偵が自らの推理をそれぞれ語る。 比較すると「毒チョコ」の趣向は皆に優しい

2021-12-03 01:48:48
お玉と毒のぬまち @ottama709

趣向は優しいけれども、内容は密度が高い。 一見成立したかのように見える推理を作り出すための整った(ルックの良い)論理展開。その推理をコテンパンなまでにいちいちクラッシュする容赦のない手なり。いるだけで面白いロジャー・シェリンガム。 そして、導き出される意外性バツグンの犯人!

2021-12-03 01:48:59
お玉と毒のぬまち @ottama709

導き出される結論にはケレン味が薄いため細かな内容が記憶から抜けやすい仕様も、『毒入りチョコレート事件』の丁寧なまでの情報コントロール具合を考えるとむしろ良点。地味だけど中身は良作なミステリって、いつ読み返しても引き込まれるモンなのだよ。希薄な記憶があるため新たな発見も見つけ易いし

2021-12-03 01:50:32
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