ストレイトロード:ルート140(60周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2951~3000+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは特になし。なお各話の内容は特に連続していません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

[お知らせ]不思議な物語を作るサークル「化屋月華堂」の本をBOOTH経由でお取り寄せができます。新刊もあるよ! bakeya-gekkado.booth.pm

2021-11-06 23:12:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「これも持っていきなさいな」戸棚にしまってあったという洒落た箱が私の手に積み重ねられた。どれもこれも中身は焼菓子、恐らく知人や仕事関係の頂き物だろう。「きっと娘の機嫌を直せるから」藍が甘い菓子を前にしても怒りや反発を忘れずにいるだろうか。少なくとも母親の前では一度もないのだろう。

2021-10-19 18:51:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2951。甘い。 ここから60周目。え、60?

2021-10-19 18:51:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街を移動中、私達の後をつけてくる車に気づいた。相手が個人だと確かめてから複雑な道を選んでなんとか撒いた。「そろそろ諦めたでしょうか」「知らない。今頃どこかでディナーでも楽しんで」藍の発言が急に途切れた。次に聞いた一言は震えていた。「さっきの場所に戻りなさい。できるだけ遠回りで!」

2021-10-20 19:04:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2952。今頃。 藍と関わる人々について整理してみる45日前後、にしようと思う。

2021-10-20 19:04:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「誰かいる?」森の奥に人の気配はないと断言したのは藍自身だ。しかし私達は確かに歌声を聞いた。それも藍が気まぐれに口ずさんだ曲の続きを。「不用意に近づくと」「わかってる」人間の声を学習して獲物を誘う器用な怪物がいてもおかしくはない。慎重に探索し、地下の集落に繋がる通気口を発見した。

2021-10-21 18:56:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2953。歌声。 空や地上が危険だからと地中を開拓する集団は多分いる、そんな世界。

2021-10-21 18:56:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

カートが集団を形成したまま最初のカーブへ入っていく。初代優勝者の栄冠を目指すのは皆同じはずだが、それしか見ていないのは藍くらいだろう。ある親は弱気な子に賞金の価値を説き、ある兄弟はプロの世界への憧れを熱く語っていた。子供達のハンドルさばきを見つめる観客には素人に見えない者もいる。

2021-10-22 18:47:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2954。栄冠。

2021-10-22 18:47:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車を降りたときから独特なリズムが聞こえていた。藍がノックに反応のないことを確かめ扉を開けた途端、最大ボリュームの音楽が彼女をひっくり返らせた。「こんなにうるさくてよく平気ね」「慣れてるから」不健康を絵に描いたような男が端末を操作している。旧式の合成音声が来客に即興の歌で挨拶した。

2021-10-23 18:54:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2955。音楽。

2021-10-23 18:54:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

捕獲作戦は無事終わった。動かない怪物を檻に収め運び出す流れは事前に見学した演習の通りだ。初めての実戦とは思えない。下山する部隊に続いて車を走らせたが、途中で藍が予想外の指示をした。「次の分かれ道で逆の方に行って」凱旋するのは地元の部隊だけでいい。魔女は麓の村の人々に嫌われていた。

2021-10-24 20:02:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2956。凱旋。 協力はするけど称賛は求めない。そんな姿勢でないと守れないものもある。

2021-10-24 20:02:28
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

大型の荷物の為に買ったワンボックスの車は時に私達以外の乗客を迎える。事業を諦め故郷を目指す一家のうち父親には未練があるようだった。「まだ叶うのですよね、帰郷は」私は藍に問うつもりで呟いたが、後部座席にも聞こえたらしい。控え目な「すまん」は私が故郷を怪物に潰されたと誤解したせいか。

2021-10-25 18:54:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2957。帰郷。 ゼファールの場合はだいぶ違う事情がある。 ひとつは物理的な距離。 もうひとつは法律上の深刻な問題、と本人は言うが。

2021-10-25 18:54:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「どうして魔女なんか連れてきたのさ」ある民家に泊めてもらった翌朝、玄関越しの押し問答が聞こえた。近隣住民の主張は私達の言動への苦情ではなく、自ら膨らませた想像への敵意らしい。家の主人の説明に耳を貸さず訴えること一時間。暇潰しに飽きた藍が窓の外を見た。空の端の雨雲が遠ざかっていく。

2021-10-26 19:43:01
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2958。苦情。 風の魔女はときに怪物並みに嫌われる。 言うことが目的となっている人と、解決したい困り事がある人では、対応も結果も違う……はずなのですが。

2021-10-26 19:43:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

閉じた扉の向こうから聞こえるのは少女達の賑やかな笑い声だけで、話題は見当もつかない。しばらくして藍だけが出てきた。「もうよろしいのですか」「もうすぐ検査の時間だっていうから。すぐ車を出して」廊下の角を曲がる前、藍が一度だけ振り向いた。本当はもう少し友達の側にいたかったのだろうか。

2021-10-27 18:50:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2959。検査。 必要だから仕方ないと知識でわかっている。 検査は疲れるものだと経験で知ってもいる。 でも。 ……という表情なのか、単に楽しい時間への未練なのか。

2021-10-27 18:50:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「今回はどういった作戦を?」「それはあっちのえらい人に聞いてちょうだい」藍はカメラの前で堂々と語る。説明を軍の責任者や広報に押しつける発言であっても。「手を貸したのは事実なんですね」「少しだけよ」彼女は必ず己の異能力を肯定する。似た立場の子供が映像を観ることを意識しているはずだ。

2021-10-28 18:58:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2960。肯定。 作中の世界で、藍は最も早く頭角を現した能力者として知られている。

2021-10-28 18:58:54
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

玄関前に置かれたリボン付きの箱は私の背丈より高いが、屋内へ運んでみると中身は軽かった。藍より多忙な彼女の父親が最愛の家族へ贈り物を用意したらしい。母娘が揃ったところで、送り主の為に開封の様子を撮影する係を任された。「なんでそんな距離置いてるの」「全体が映らないおそれがありまして」

2021-10-29 19:23:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2961。最愛。 贈り物の季節が近い……わけでなくても、そういうのやりそうな父親だった。

2021-10-29 19:23:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「お前どこの出身だ?」藍に絡もうとした酔客を押しのけたら私が襟首を掴まれた。乱れた服装の端々に、育ちか学歴を振りかざし周囲を威圧していた痕跡がある。正直に答えたところで襟を締め上げる手を止められそうにない。「落ちぶれたと見下すのも今の内だぞ」心を読んだような言葉はしかし的外れだ。

2021-10-30 19:06:53
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