超音速対艦巡航ミサイルの抑止力向上における意義について

今年8月、台湾が「雄風三号」なる超音速対艦ミサイルを「空母殺し」との位置づけで公表した。中国の空母開発に対抗するものである。超音速対艦ミサイルの水上艦艇に対する有効性は高い。この種の兵器の保有は日本にとっても抑止力向上に結び付く可能性が大である。ただし、日本の「専守防衛」との兼ね合いも考慮する必要があろう。→中国空母を撃破する「雄風三号」のイメージ(http://yhoo.it/o2BvLy
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fj197099 @fj197099

他用もあったので中国軍事力に関する米国防総省報告書(http://t.co/Bch339Q)を今頃読み終えたが、今年の報告書はやはり中国の海洋進出について力を入れた書き方になっているようだ。昨年からの劇的な変更はないが、それは中国の軍事増強が着実に進んでいるという意味でもある。

2011-08-31 19:08:07
fj197099 @fj197099

今年の印象深い事件としてはやはり1月のJ-20の飛行と8月の空母「ワリャーグ」の試験航海だろう。これら二つは中国の軍拡の取組みとして印象深いものであった。いずれも直ちに脅威になるものではないが、3-5年もすればかなり事情は変わってくるだろう。こちらもそれに備える必要があるのだ。

2011-08-31 19:08:20
fj197099 @fj197099

備えるといえば、気になる話は台湾が雄風三型(Hsiung Feng III)という超音速の対艦巡航ミサイルを「空母殺し(carrier-killer)」として公開したことである(http://t.co/fJ8kboP)。このミサイルはラムジェット推進でマッハ2以上出ると言う。

2011-08-31 19:14:24
fj197099 @fj197099

弾道ミサイルと比べ、対艦を含む巡航ミサイルは相対的に速度が低い=迎撃が容易であるとして軽視されがちであるが、超音速の巡航ミサイルは少し事情が異なる。マッハとはご存知の通り音速であり、秒速約340mを指す。仮にマッハ3で飛ぶなら、それは秒速ほぼ1kmを意味する。相当な速度である。

2011-08-31 19:16:44
fj197099 @fj197099

雄風三号は射程が約300kmとのことだが、マッハ2でこの距離を飛ぶと掛かる時間は441秒、約7分強に過ぎない。リアクション・タイムは極めて限られている。しかも実際にはミサイルは艦船に相当接近してからでないと発見出来ないだろう。超音速ミサイルは容易には発見・迎撃できないのである。

2011-08-31 19:21:43
fj197099 @fj197099

それはつまり、超音速の対艦ミサイルが艦船への攻撃には極めて有効であることを意味するのだ。台湾が「空母殺し」として雄風三号を開発したのも無理のない話である。実を言うとこの発想はもともと冷戦末期のソ連に由来するものだ。ソ連は米空母艦隊に対抗するため、超音速ミサイルを開発したのだ。

2011-08-31 19:23:26
fj197099 @fj197099

それがSS-N-22サンバーンとかSS-N-27シズラーとかSS-N-26ヤホントとかになる訳だが、米側はこうしたソ連の飽和攻撃に対抗する為、防空能力に優れたイージス艦の開発に着手した。現在でこそ弾道ミサイル防衛で注目されるイージス艦であるが、そもそもは防空機能が重要だったのだ。

2011-08-31 19:28:34
fj197099 @fj197099

興味深いことにこれらの超音速ミサイル(前二者)は米空母打撃群に対抗するため、現在中国で運用されている。発想は引き継がれているのだ。そして更に現在、中国が空母を保有しようとしているため、台湾がそれに対抗する超音速対艦ミサイルを開発しているという訳だ。正に因果は巡る、という話である。

2011-08-31 19:29:24
fj197099 @fj197099

中国は現在の所、米国並のイージス技術を有していない。それはつまり空母を超音速対艦ミサイルから守る術がないということだ。故に中国の空母は現在のところ、米国やその同盟国ではさほど脅威視されていない。護衛艦隊が充実すればその事情も変わるだろうが、それまで若干の余裕はあると言える。

2011-08-31 19:31:09
fj197099 @fj197099

そこで気になるのは日本は一体どうするのかという点である。中長期的に見て日本は中国の軍拡に少なくとも量でキャッチアップしていくことは出来ない。だとすれば何か非対称な有効性を保てる分野で比較優位を維持する必要がある。超音速対艦巡航ミサイルはその一つの分野であることは間違いないと思う。

2011-08-31 19:34:00
fj197099 @fj197099

不幸なことに日米の対艦ミサイルは亜音速のものしかない。米国が本格的な防空能力を持つ相手との戦闘を想定してこなかったからだ。米国の標準的なハープーン対艦ミサイルはマッハ0.86。あたご級護衛艦装備の国産90式対艦誘導弾でも速度はせいぜいマッハ1である。発見も迎撃も相対的に容易だ。

2011-08-31 19:37:11
fj197099 @fj197099

すなわち日本はどうして超音速対艦巡航ミサイルの開発(国産でも米国との共同開発でも)に着手しないのか、という問題が浮かび上がる訳である。こうした兵器があれば中国の空母のみならず殆どの水上艦に対して圧倒的な優位を保てるだろう。向こうにはイージス艦のような有効な対抗技術がないのである。

2011-08-31 19:39:34
fj197099 @fj197099

実際にはイージス艦でさえ、迎撃弾数に限りがある以上はこうした兵器による飽和攻撃からの防衛は困難だろう。だとすれば中国が現状でロシア製の超音速ミサイルを有する以上、それを持たないこちらは不利なのである。超音速対艦巡航ミサイルの保有は少なくとも軍事的にみて日本にとっては合理的である。

2011-08-31 19:41:58
fj197099 @fj197099

ではなぜそれをしないのか。意識的にしないのか単に等閑視しているのか確証はないが、おそらくは法律上の問題を懸念しているのだろう。憲法解釈は別に巡航/対艦ミサイルの保有を禁じていないが、この種の兵器は性質上先制攻撃に向いた兵器である。それがおそらく専守防衛との間で摩擦を生むのだろう。

2011-08-31 19:44:23
fj197099 @fj197099

専守防衛は重たい問題である。この方針では所謂「先制的自衛」が認められていない。しかし現代戦でそれが現実的かは常に問題になる。考え方のみを提示する。超音速対艦巡航ミサイル(+情報収集・偵察・監視、誘導システム)と、専守防衛の柔軟な解釈があれば、日本はそれだけで抑止力を向上出来る。

2011-08-31 19:48:48