#今日の構造式 5(401-500)

今日の構造式シリーズ、5本目になりました。 [お知らせ]「今日の構造式」シリーズ、書籍化予定とのこと。お楽しみに! https://twitter.com/KentaroSato/status/1509523144268156929
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佐藤健太郎 @KentaroSato

製薬企業研究者からサイエンスライターに転身。大学や研究機関の広報などアカデミアにも片足を突っ込む。サイト「有機化学美術館」の中の人、折り紙と囲碁が趣味。著書に「医薬品クライシス」「炭素文明論」「ふしぎな国道」「世界史を変えた新素材」など。ライターとしての仕事→ x.gd/UEX7W

blog.livedoor.jp/route408/

まとめ #今日の構造式 1(1-100) 佐藤健太郎先生による #今日の構造式 をまとめましたが、たくさんあるので100ずつに分けることにしました。 こちらでは1-100までをまとめました。 6403 pv 10
まとめ #今日の構造式 2(101-200) 佐藤健太郎先生による「今日の構造式」をまとめましたが、たくさんあるので100ずつに分けることにしました。 101-200までをまとめました。 4775 pv 18
まとめ #今日の構造式 3(201-300) 佐藤健太郎先生による「今日の構造式」をまとめましたが、たくさんあるので100ずつに分けることにしました。 こちらでは201-300をまとめました。 3800 pv 12
まとめ #今日の構造式 4(301-400) 今日の構造式シリーズ、4つめです。5に続きます。 5576 pv 8
まとめ #今日の構造式 6(501-) 今日の構造式、6本目です。 なお、このシリーズが書籍化されるとのことです。 1029 pv 2

各まとめ毎に、表にしました。

(GoogleSpreadSheet形式)

リンク Google Docs 今日の構造式シリーズ 今日の構造式 今日の構造式1(1-100) <a href="https://togetter.com/li/1768157">https://togetter.com/li/1768157</a> 1,エタノール 2,酢酸 3,メタン 4,バニリン 5,ブドウ糖(グルコース) 6,エチレン 7,ヒスタミン 8,リモネン 9,ジエチルエーテル 10,ポリエチレン 11,カフェイン 12,ナノプシャン 13,乳酸 14,カロテン 15,アンモニア 16,デキサメタゾン 17,アセトン 18,グリシン 19,

401 - 410

401 "テキサスカーボン"と5価の炭素
402 トランス-2-ヘキセナール
403 ジアゾメタン
404 ザイロン(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)
405 フタル酸
406 ややこしい接頭語「ホモ」と「ノル」
407 十字型の分子
408 テルペン類
409 コランダム
410 ペリプラノンB

佐藤健太郎 @KentaroSato

#今日の構造式 401 今日のタイムラインで、炭素に結合の腕を5本描いてしまった話を見かけたので、そのあたりの話を。5価の炭素を描いてしまうのはよくある話で、「テキサスカーボン」という言葉もあるようです。一説によれば、5本腕の炭素が、テキサス州旗に描かれた星のようだからだそうです。 pic.twitter.com/ik3ZrqReKr

2021-12-18 22:11:32
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佐藤健太郎 @KentaroSato

5本腕を描いてしまうミスは珍しいことではなく、ある超大物化学者も、総説の初っ端の図にテキサスカーボンを描いてしまったことがあります。よりによってこれは、構造決定が誤っていた化合物に関する総説であったので、本人もきまりが悪かったのではと思います。訂正記事も苦笑混じりのものでした。

2021-12-18 22:12:11
佐藤健太郎 @KentaroSato

ところで5価の炭素が存在しないかといえばそんなことはなく、CH₅⁺というイオンが知られています。メタニウムイオンと呼ばれ、実際には図のような構造であると考えられています。また、5価の炭素を結晶として取り出した研究もあります。工夫次第で、原則に反した構造も作り出せるという例です。 pic.twitter.com/ofFlit7lgf

2021-12-18 22:12:55
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佐藤健太郎 @KentaroSato

引用もせず失礼いたしました。論文はこちら。 pubs.acs.org/doi/10.1021/ja… twitter.com/makoto_B/statu…

2021-12-19 00:52:19
Makoto Yamashita @makoto_B

山下の博士論文の内容をご紹介頂いております。ありがたや。 twitter.com/KentaroSato/st…

2021-12-18 23:34:14
佐藤健太郎 @KentaroSato

#今日の構造式 402 トランス-2-ヘキセナール。末端に-CH=Oという構造を持ち、アルデヒドの一種に分類されます。別名は青葉アルデヒドで、その名の通り葉の青臭い匂いの主成分です。この構造を突き止めたのはドイツのテオドール・クルチウスで、クルチウス転位という反応の発見者としても知られます。 pic.twitter.com/XdDJqA4uhM

2021-12-19 21:03:33
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佐藤健太郎 @KentaroSato

ちなみに日本では、この化合物は最初に生の茶葉から抽出されました。一方、カメムシの「おなら」もこの化合物の匂いであることがわかっています。茶葉とカメムシではだいぶ違う気がしますが、このたぐいの化合物は、濃度によって匂いの印象が大きく変わることがあります。これもその一例でしょうか。

2021-12-19 21:03:44
佐藤健太郎 @KentaroSato

(今日はお仕事のため短めで)

2021-12-19 21:05:16
佐藤健太郎 @KentaroSato

有機化学を大きく変えた偉大な研究者でした。ご冥福をお祈りいたします。 twitter.com/chemstation/st…

2021-12-20 10:02:53
Chem-Station @chemstation

2005年ノーベル化学賞受賞者の1人であるGruubs教授(buff.ly/33Cx63r)がお亡くなりになったとのことです。お悔やみ申し上げます。 buff.ly/3yFWfWz pic.twitter.com/k0oHr4p1Uj

2021-12-20 07:56:45
佐藤健太郎 @KentaroSato

#今日の構造式 403 ジアゾメタン。CH₂N₂という分子式で、単純な構造式は描けません。図にあるように、+と-の電荷を含んだ2つの分子の中間的な構造を取ります(共鳴構造)。オゾンなどもそうですが、こうした化合物はえてしてあまり安定ではありません。これも非常に反応性の高い分子です。 pic.twitter.com/kU8r78a7lg

2021-12-20 21:20:09
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佐藤健太郎 @KentaroSato

実際、ジアゾメタンは衝撃や光、熱によって容易に爆発します。先の尖ったガラスや注射針を差し込んだだけで爆発する時もあるので、取り扱いはビクビクものです。さらに毒性も強いので実に嫌な化合物ですが、こういうやつに限ってカルボン酸のメチル化などに大変優秀なので、今も時々使われます。 pic.twitter.com/33pDeweSbj

2021-12-20 21:20:41
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佐藤健太郎 @KentaroSato

こういう変ちくりんな構造は人工のもので、自然界には存在しない――かと思いきや、ジアゾ基を含む天然物も存在します。キナマイシンという化合物がそれですが、当初は右のような構造として報告されていました。まさかジアゾ基を持つとは思いませんので、ミスも無理はないかなという気はします。 pic.twitter.com/HxciZRpLQd

2021-12-20 21:21:23
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佐藤健太郎 @KentaroSato

ジアゾメタンの代替試薬としてはトリメチルシリルジアゾメタンというものがあり、市販もされていて扱いやすいのでこちらが推奨されます――が、これも全く安全安心な試薬ではないことも知っておいたほうがよいと思います(下記ブログ参照)。 orgchemical.seesaa.net/article/199949… pic.twitter.com/bTREfHwfIe

2021-12-20 21:29:25
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佐藤健太郎 @KentaroSato

#今日の構造式 404 ポリ(p-フェニレンビスオキサゾール)。面倒くさい名前ですが、幸いザイロンというシンプルな商標がつけられています。同じ単位が繰り返しつながった高分子の一種ですが、硬い芳香環が直接連結しており、見るからに頑丈そうな構造です。実際、期待を裏切らないスーパー繊維です。 pic.twitter.com/mLv7kSWjCR

2021-12-21 21:53:00
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佐藤健太郎 @KentaroSato

従来スーパー繊維と呼ばれていたアラミド繊維に比べても、強度及び弾性率は約2倍。直径1.5mmのザイロンで、軽自動車を吊り上げられます。分解温度650度と、耐熱性も抜群。このため、防弾チョッキ、溶接加工の際の保護具、さらには宇宙船のパラシュートなどにも用いられる、まさに究極の繊維です。

2021-12-21 21:53:28
佐藤健太郎 @KentaroSato

ザイロンは、2つの化合物をポリリン酸で縮合させて合成します。反応式だけ見ると単純ですが、ポリリン酸は粘性が高く腐食性であり、また生成物に0.1%以下の不純物が混じるだけでも品質が低下するため、事業化は大変でした。一見ただの糸のような繊維には、研究者たちの非常な苦労が隠されています。 pic.twitter.com/PGiWNHmgSD

2021-12-21 21:54:46
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KAZOON @cycloawaodorin

@KentaroSato ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)ではないでしょうか

2021-12-21 22:27:29
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