【新種、思い出】福間健二 #k2fact315

福間健二 @acasaazul

どうやって踊るのか。緑色の、生きていない顔の、でも生きている人が見せてくれた。いない人の手に鼻をこすりつける。もうひとつあって、大きな棒をかつぐ。ぼくは二人に分裂する。ひとりはやっと答が見つかって泣きたい。もうひとりはモスクワの思い出に耳を傾ける。（新種、思い出１）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

世界の川を泳いでこの国の川を泳がないのも、その逆も、この晴れた朝にたどりつかない。来たってこと、どう割り引くにしても呼吸の音にふりかえるとこれ以上のカオスを望まない人の列だ。書き写されたレポートのなかで、もうひとりのぼくは逃げられない肉体をもったまま。（新種、思い出２）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

望みをひとつ。三人で、ひとりがたくさんしゃべって、もうひとりが少ししゃべって、あとひとりは声を出さず、うなずくばかりで、食事がダラダラつづくのは、やめてほしい。サングラスと死亡通知が門をくぐるときに闇から抜けだすもの、パッと咲く花にならなくていいから。（新種、思い出３）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

その町。かつて小さなモスクワと呼ばれ、坂道に沿って二階建ての長屋が並び、耳の聞こえない老人のためにだれかが身ぶりで存在しない箱を動かしていないといけない。匂わない煙。それぞれの、最後の持ち物。売り手と買い手、どちらも静かだ。ぼくたちはもうそこにいない。（新種、思い出４）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

カラスの鳴き声。老兵には期待しないが、可愛いこともある。外階段の夜、そこに死体があること、気づかないか気づかないふりで黒い営みをつづけて霙っぽい雨でも先のとがった逃げる部品に勝手をさせること。集団が。知らないよ、知らないよ。知っているから言うのだ。（新種、思い出５）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

何千人もの集団が。見舞いに来たわけじゃない。一歩、二歩、祝福のはずもなく、戻れない向こう側でなにか生まれたらどうしようと心配で緑色の顔の人もそのなかにいて、どうするのか。負けにならない踏まれ方。七十二歳と八か月、やっとつかんだかな。このぼくはよく眠る。（新種、思い出６）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

消灯を待っての、習慣の告白。眠る前にＤ・ベルやその後輩の読みにくい表情から新しい謎を育てるのは、いまも同じ。神様がいないこと、一瞬忘れるために。逆効果の場合もあって、もうひとりのぼくのベッドは宇宙船。行ってだれと戻る。この世がイヤになっても欲望ある人。（新種、思い出７）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

岸と底、どちらが好きかは黙っている。ロケットはいつもルーマニアあたりから。何から遠ざかるのか。その瞬間にはわからない。徐々にわかる。困惑しないブカレストのおばさんたち、さようなら。小さな牛、大きなネズミ、さようなら。歯ぎしり、初期の思い出を走りぬける。（新種、思い出８）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

中世、ルネッサンス、それから工場の仲間と詩や曲を作ってパンク時代によみがえる準備をした。できたのか。コロナの霞のなかの、半世紀後の模倣者たち。マスクとは関係なくここでも謎が踏まれる。で、簡単にはそれが解けない。自分こそが最大の謎になるように歌ったのだ。（新種、思い出９）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

パンクの何十年も前のルンバが流れる。いいね、じゃないぞ。死体をまたいでも気づかない都会では機能しない物語をどこに運ぼうというのだ。生まれるのは。暗い地下室の過去からいなくなるのは。このぼくには今日という日が存在してお昼はアヤちゃんのほうれんそうカレー。（新種、思い出10）#k2fact315

福間健二 @acasaazul

（三日月書店の） アヤちゃんのほうれんそうカレー。 （新種、思い出10）#k2fact315 pic.twitter.com/VAbJMB4coY

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