茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの「他者という鏡」

脳科学者・茂木健一郎さんの9月1日の連続ツイート。 ぼくたちが毎日見る鏡について
1
茂木健一郎 @kenichiromogi

「連続ツイート」をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています! 今朝は、ぼくたちが毎日見るもの。

2011-09-01 06:56:27
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(1)人間は、鏡を見て化粧をする唯一の動物である。他者が自分をどう見るか。そのことを、あらかじめ取り入れてシミュレーションし、自己イメージの中に取り入れる。女性は絵描きである。自分の顔という素材をキャンバスして、だんだん上手に絵を描いていく。

2011-09-01 06:57:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(2)女性は他者の視線を取り入れて自分のイメージをつくることに長けているが、男性は苦手である。椎名誠さんは、「男子トイレで鏡を見て髪を直しているやつを見ると殴りたくなる」と言った。よくなでつけている男いるけど、前と後で何も変わっていないんだよね。 不思議。

2011-09-01 07:00:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(3)物理的な「鏡」以上に大切なのは、「他者」という「鏡」である。自分という存在が、他人の心の中にどう映るか。そのことによって、「私」を認識する。他者という鏡がなければ、私たちは自分を見いだすことができないのである。

2011-09-01 07:01:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(4)何か大切なものを共感できる他者は、大切な増幅装置となる。夢は、単独で持っているだけでなくて、共有することで言語化され、「現実」に一歩近づくのだ。共感する他者は、自己の範囲を拡大させる。その鏡の中に、大写しになった自分がいる。その時、自分とやっと出会う。

2011-09-01 07:02:46
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(5)すれ違う他者も、また大切である。自分にとっては興味を持てないものに熱中する人。自分の大切な思いを伝えたのに、曲解されたり、揶揄されたりする時、傷つくと同時に、「ああ、そうか自分はこういう人間なんだ」と認識する。心がひりひりしなければ、自己認識はできない。

2011-09-01 07:03:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(6)共感する鏡と、すれ違う鏡と。曲がったのや、歪んだのや、曇ったやつ。そんなさまざまな他者がいるからこそ、私たちは多様な「自分」を見いだすことができる。たくさんの、多様な鏡と出会うだけ、「私」が豊かに膨らんでいく。いろいろな角度から、さまざまな調子で。

2011-09-01 07:06:32
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(7)脳の前頭葉には、ミラーニューロン、ミラーシステムが存在すると示唆する実験がある。機能は未だ十分には解明されていないが、「鏡」なしに私たちが他人の心を読み取り、コミュニケーションすることができないことはおそらく事実である。「鏡」は、自我と他者の裏通り。

2011-09-01 07:07:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(8)他人がこう考えている、こう感じていると思うのは、自分がそう考え、そう感じているからである。逆に他人の未知の感情が自分の中に入ってくることがある。成熟や高貴や、野蛮や弛緩や。他者という鏡に出会うことで、自分の中の感情のレパートリーを広げていけるのだ。

2011-09-01 07:09:19
茂木健一郎 @kenichiromogi

たか(9)理想的なパートナーとは、自分の最も純でやわな核をそのまま映し出してくれる人だろう。「ベターハーフ」には二義ある。つまりはパートナーがベターなのであり、パートナーという鏡に映る自分自身も、またベターなのである。それは分離を前提にした概念ではない。

2011-09-01 07:10:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「他者という鏡」についての連続ツイートでした。今日も他者という「鏡」に向き合いましょう。

2011-09-01 07:11:18