ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:先端バイオ技術を濫用し邪悪なマネーを生み出す暗黒メガコーポ、ヨロシサン製薬。その社員や取引先ヤクザクランの人間がケジメされたのち無惨に殺される猟奇事件がキョートにおいて頻発していた。犯行を行っているのは一人のニンジャ……

2011-09-02 16:01:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(キツネのオメーンを被り「ケジメニンジャ」を自称する謎のニンジャの正体は、ヨロシサン製薬によって生み出されたY-13型クローンヤクザの一体であった。クローンヤクザがなぜそのような親殺しめいた反逆行為を?それはニンジャソウルによるものなのか?)

2011-09-02 16:03:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(キョートのヨロシプラント部門を統括するヤダギ専務までもがケジメニンジャの掌中に落ちた。ヤダギ専務の悲鳴にも似た問いかけにケジメニンジャは問い返す……「俺は誰だ!?」)

2011-09-02 16:07:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス #4

2011-09-02 16:09:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はクローンヤクザY-13型。俺はこのプラントで生み出された。貴様ら人間とは 異なるバイオ血液が流れ、製造から三年ですべての免疫力を喪失して遅かれ早かれ死ぬよう、あらかじめ遺伝的にプログラムされている」「な……な」ヤダギは絶句した。「一体これは」「思いのほか頭が回ると驚いたか」

2011-09-02 16:14:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

埋め込み式サングラスと厳めしいへの字口で、ケジメニンジャの心中は読み取れはしない。ケジメニンジャはヤダギを締め上げた。「俺は鯉だ。情報とケジメの滝を遡り、今こうして貴様の元まで辿り着いたのだ、クローンヤクザ設計者ヤダギ・バンゲロウ。……だがまだ次の滝がある」

2011-09-02 16:19:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を言ってアイエエエエ!」「まだまだケジメする指は残っている」ケジメニンジャはヤダギの右手小指をたやすく切断し床へ投げ捨てた。ナムアミダブツ!「アイエエエエ!」ヤダギは再失禁しながら、「こんな狼藉は許可されない!ありえない!」「そう、あり得ない」ケジメニンジャは頷いた。

2011-09-02 16:27:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「後天的な条件付けプログラムが製造直後の全てのクローンヤクザに施される。所持者に対し機械めいて従順な振る舞いを取る奴隷として万全に調整されたのち、晴れてプラントから出荷される。それが我々だ。反逆などあり得ないのだ」ケジメニンジャは淡々と説明した。「よく学んでいるだろう」「……!」

2011-09-02 16:46:35
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「電気ショック」「アイエエエエ!」「グレア(眩輝)照射」「アイエエエエ!」「断続的なノイズ」「アイエエエエ!」「洗脳映像」「アイエエエエ!」一言一言、プログラム内容を呟きながら、ケジメニンジャはヤダギの片手の指すべてをケジメした。「オートメーション化された行程……」「ア、アバッ」

2011-09-02 16:57:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺がその万全の洗脳を脱したのが先か。ニンジャソウルが憑いたのが先か。それは俺にもわからぬ」ほとんど独り言のようにケジメニンジャはヤダギに言い聞かせる。「だが原因が何であれ、俺は今ここにこうしてケジメニンジャとして存在する。そして貴様をケジメするのだ」「アイエエエ……望みは何だ」

2011-09-02 17:01:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はどのみち三年で死ぬ。そのように作られたからだ。貴様らにな」「……!」ヤダギは血を流す右手を必死で押さえた。ヤダギはヨロシサンのクローン技術にずっと関わってきた。クローンヤクザのコンセプトは彼の発案だ。実際Y-11までは彼自身が現場で設計を行ったのである。

2011-09-02 17:26:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その貢献と愛社精神が認められ、役員に昇進したというのに、その栄光を味わう間もない、相次ぐトラブル……脱走事故……自分が直接関わっていないバイオニンジャの集団脱走すらも火の粉が被さり、そしてこのケジメニンジャ……!ヤダギの目から悔し涙が溢れた。「ブッダ……!」

2011-09-02 17:36:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「感傷か」ケジメニンジャは言った。「理解できる。言わば己の作品に牙を剥かれた衝撃は計り知れぬのだろうな。俺にも涙腺はある。本来的には涙を流すこともできるのだろう。脳の構造も人間のそれと変わりはしない。だから俺にも感傷は備わっているのだろうな」その声音はぞっとするほどに虚無的だ。

2011-09-02 17:41:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺は誰だ」ケジメニンジャは再び繰り返した。「貴様ならば、この問いに答えられよう」「……!」ヤダギは理解した。オリジナルの所在を知ろうというのだ。このクローンヤクザの元になったヤクザ。遺伝子提供者の所在を。「し、知ってどうする。何の意味がある。お前の寿命は延びんぞ」

2011-09-02 18:19:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「寿命?なぜ寿命の話になる」ケジメニンジャは言った。「さしたる理由は無い。俺が生まれ出でた事に理由はあるか?貴様が生まれ出でた事には?……これは単なるケジメだ。どの道、俺は長くない。これはケジメだ。それとも、知的好奇心とでも言えば納得するか」「アイ……アイエエエ……」

2011-09-02 18:42:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「言え。言えばひと思いにカイシャクしてやる。言わねば殺す前に時間をかけてケジメする。じっくりとだ。俺は急いでいない」ケジメニンジャは屈みこんで言った。「……ゼイモン」震え声でヤダギは告げた。「ドゴジマ・ゼイモン。レジェンドヤクザ……生きておるとすればかなりの高齢だ。所在は知らん」

2011-09-02 20:09:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドゴジマ・ゼイモン」ケジメニンジャは繰り返した。ヤダギは咳き込んだ。「そうだ。今は亡きクラン……キルストームヤクザクランのアサシンだった男だ。総理大臣を殺した事もあるレジェンドヤクザ……すべてのクローンヤクザは彼の提供した遺伝子から作られる。今やかなりの高齢。引退している筈」

2011-09-02 20:18:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴様は嘘を言っていない」ケジメニンジャは低く言った。「カイシャクしてやる。ハイクを詠め」「ウウ……」ヤダギは背中を丸め、呻いた。「昇進したが暁に死にますヨロシサン」「……イヤーッ!」「アバーッ!」

2011-09-02 20:32:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キャバァーン!「オットこれは!これはかなりタイトだ!」キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!「スゴイ!チャンピオンのタッチ速度このままいけば新記録です!」キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!「アバーッ!?」「アッだめだ!アーッ!これは!……コマーシャルです!」

2011-09-02 20:57:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

テレビの騒音でケジメニンジャは覚醒した。「アナタ起きたのネー」女は床に足を延ばしており、オカキを袋から手づかみでボリボリと食べながら、ケジメニンジャを振り返った。袋を投げ捨て、ケジメニンジャにしなだれかかった。「ネーまた呼んでくれてアリガトネ」

2011-09-02 21:01:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「見た夢を少し覚えている」「ヘースゴーイ」女はケジメニンジャの太腿をまさぐりながら適当な相槌を打った。「アナタとても本当ステキよ……まだ時間あるワヨ」ケジメニンジャは女に構わず立ち上がり、ボトル入りの濾過水を飲んだ。「記憶にない映像だ。夢とは不思議なものだ」

2011-09-02 21:07:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オモシローイ」女も立ち上がり、後ろからケジメニンジャに抱きついて、両手を前にまわした。「ネーどんな夢見たのネ?」「海だ。俺はそれを見ている。夜の海だ」「フーンスゴーイ」「波が砂を洗う。足元に泡。風だ。俺は独り、立っているのだ」女は指をケジメニンジャの下腹から胸板へ這わせていく。

2011-09-02 22:06:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネーもっとシマショヨー、ネー」女はケジメニンジャの首の後ろを舐め、指を胸板から頬へ這わせる。その愛撫が訝しげに止まった。「……ネー、泣いてるの?」「泣いている」ケジメニンジャは無感情に繰り返した。「そうか。泣いている。涙だ」「ネー大丈夫?」「不思議なものだ」

2011-09-02 22:09:47