ブルバキの論理体系と「選択公理」

ブルバキの述語論理体系から必然的に「選択公理」が定理として導かれることの説明です。
数学
6974view 3コメント
24
鏡 弘道 @kagami_hr
じゃあブルバキの体系と「選択公理」の関係を書きます。
鏡 弘道 @kagami_hr
ブルバキの論理体系の記法はポーランド記法で括弧不要等の特徴があるのですが、ブルバキ自体「この記法は今後使用しない」ということで「普通の記法」に置き替えています。
鏡 弘道 @kagami_hr
ブルバキの命題論理については通常のものと考えて問題ないと思います。
鏡 弘道 @kagami_hr
述語論理についてはちょっと変わっています。τ 記号なるものが導入され R(x) を論理式とするとき τ_x(R(x)) は対象式であるという言語規則が導入されます。
鏡 弘道 @kagami_hr
τ_x(R(x)) の「直感的」な意味は R(x) を満す x が存在する場合その x のどれか。存在しない場合不定の対象。という感じです。もちろんこのようなことは規則には記載されません。でも最初の意味がもはや「選択公理」っぽいです。さらにスコーレム項を想起させます。
鏡 弘道 @kagami_hr
いいかえると直感的に ∃xR(x) と R(τ_x(R(x)) は同じことを主張しています。そこでブルバキでは ∃xR(x) は R(τ_x(R(x)) の省略記号とみなされます。
鏡 弘道 @kagami_hr
(公理) t を対象式とするとき R(t) → R(τ_x(R(x)).
鏡 弘道 @kagami_hr
この公理により R(x) を満たす x が存在するとき τ_x(R(x)) は R(x) を満す x の任意のどれかという感じになります。
鏡 弘道 @kagami_hr
この記法は定義可能な対象式を具体的に定義する場合非常に便利です。例えば { | } なる新規の記号を導入する必要なく {x : R(x)} = τ_X(x ∈ X ⇄ R(x)) と定義できます。
鏡 弘道 @kagami_hr
∅ = τ_X(∀x(¬(x ∈ X))) とか。それから順序数なしで X の濃度 Card(X) は Card(X) = τ_Y(Eq(X, Y)) (ここで Eq(X, Y) は 「X, Y 間に全単射が存在する」ことを意味する論理式とします)
鏡 弘道 @kagami_hr
(定理) (X_i)_{i ∈ I} を集合族として各 X_i は空でないと仮定する。このとき Π_{i ∈ I} X_i は空でない。
鏡 弘道 @kagami_hr
(証明) i ∈ I に対して f(i) = τ_x(x ∈ X_i) と定義する。X_i は空集合でないので ∃x(x ∈ X_i) が成り立つ。ところがこれは定義により τ_x(x ∈ X_i) ∈ X_i のことである。したがって f(i) ∈ X_i (証明終
灼眼のあか☆ねこ @math_neko
@kagami_hr 選択公理と同値ではなかったでしたっけ ?
鏡 弘道 @kagami_hr
そうです。ブルバキでは選択公理は公理ではなく論理規則から導かれる定理です。論理体系を変更しない限り選択公理というか定理を否定できません。 RT @math_neko: @kagami_hr 選択公理と同値ではなかったでしたっけ ?
鏡 弘道 @kagami_hr
ブルバキの集合論はロジックの部分から十分な厳密さで記述されています。ですが彼らの用途には十分と考えたのか、数学の道具としての便利さのみを重視し、集合そもののの考察については全く考慮されていない体系であると思われます。
鏡 弘道 @kagami_hr
そんなわけで基礎論や集合論の人達には嫌われている場合がほとんどかと思います。私自身は目的を限定すれば非常に簡単で便利な体系かなと思っている部分はあります。
鏡 弘道 @kagami_hr
ながながとすみませんでした。
鏡 弘道 @kagami_hr
おまけ) ブルバキの等号の公理 (a) (s = t) → (R(s) ⇄ R(t)) (これは常識的) (b) ∀x(R(x) ⇄ S(x)) → τ_x(R(x)) = τ_x(S(x)) (これは最初ちっとも分からなかった)
鏡 弘道 @kagami_hr
あ。ばれた。実は (b) を書いているときに気がついてどうしようかなと思っていたのです。 RT @ta_shim_at_nhn: @kagami_hr  (b) がないと選択公理が証明できないですよね。

コメント

鏡 弘道 @kagami_hr 2011年9月4日
「おまけ 等号の公理」を追加
Eijiro Sumii @esumii 2011年9月4日
ブルバキのτ記法のオリジナル(?)であるヒルベルトのε計算については http://en.wikipedia.org/wiki/Epsilon_calculus#Bourbaki_notation http://plato.stanford.edu/entries/epsilon-calculus/ あたりも参考になるでしょうか。素人による釈迦に説法ですがご容赦…
鏡 弘道 @kagami_hr 2011年9月5日
「おまけ (b)」が必要そうなことを追加。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする