- quantumspin
- 2002
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いまチェスタトンの『正統とは何か』を読んでいるんだけど、冒頭から懐疑論者とか唯物論者が狂人扱いされていてなかなか強烈。しかし論理展開もしっかりしていて、さすが逆説の大家
2022-01-09 21:24:00おお「なぜ卵は鳥になり果実は秋に落ちるのか。その答は、なぜシンデレラの鼠が馬になり、彼女のきらびやかな衣装が十二時に落ちるのか、その答えとまったく同じである。魔法だからである。「法則」ではない」
2022-01-10 06:45:27でも読んでたらリアリズムの文脈で諸作を批判できないような気もするので、読んでないか、黙殺しているか。『正統とは何か』を引いてるミステリ評論なんて読んだことないしな。
2022-01-10 07:36:05「子供はいつでも「もう一度やろう」と言う。大人がそれに付き合っていたら息もたえだえになってしまう。大人は歓喜して繰り返すほどの力を持たないからである。しかし神はおそらく、どこまでも歓喜して繰り返す力を持っている。きっと神は太陽に向かって言っておられるに違いない—―「もう一度やろう」
2022-01-10 15:28:47チェスタトン『正統とはなにか』読了。いやミステリわかった気になっていてスミマセンでした自分。これを書いてからブラウン神父シリーズを書いていたなんて恐ろしすぎる。読み方が全く変わってしまうじゃあないか。
2022-01-14 06:22:51というか世界観全体が揺さぶられてしまった。懐疑論や唯物論、オプティミズム、ポリティカルコレクトネスなど、こんにちではあまりに常識となってしまった思想原理の逆説が次々と暴かれて、それぞれの綻びを独自のキリスト教的世界観で縫合していく論述スタイルなんだけれど、恐ろしいほどブレがない。
2022-01-14 06:34:08シャーロック・ホームズ批判というか、科学捜査全般に対する批判の真意がわかってきた。この世界観、こんにち描かれているミステリ小説の大半がかるく吹き飛ばされてしまうな。。
2022-01-14 06:40:44本格ミステリに思想はいらない。好きで書いているんだし、面白ければそれでいいじゃあないか。そのように考えてしまう人は、むろん『正統とは何か』など読みはしないだろうけど、ミステリ形式それ自体が、世界認識という、人間の根本〝思想〟を主題に据えた物語である事に無自覚ではないだろうか。
2022-01-14 06:57:25かく言う自分自身が、エラリー・クイーンをリベラルと結びつけて読むとか、これまで考えた事なかったもんな。しかし言われてみれば、あれほどいびつな世界観の物語もなかなかない。チェスタトン流に言うと狂人の論理。パズラーやフェアプレイは、それ自体がひとつの思想原理だったんですね。
2022-01-14 07:01:57「私はおとぎ話を子供部屋の床の上に残して、外の世間へ出て来た。けれども、おとぎ話ほど理屈にかなった本はまだそれ以来お目にかかったことがない」と本気で語る作者が生み出すエンターテインメント作品が、思想でなくて何なんだろうか。文学至上主義に対するこれほど痛烈な批判もないと思う。
2022-01-14 07:15:28プラグマティズムにせよ分析哲学にせよ、19世紀末に英米系で出てきた概念ですから、ポストモダン以降の探偵小説の形を考える上で、ドイルやチェスタトンに戻るのは必然なんですよね。
2022-01-17 22:29:52チェスタトンの別の評論に、探偵小説は自らの愚かさを悟り幸福になるために読むような事が書いてあって、すげーってなった。哲学書は読むと知識が得られ賢くなった気になるが、それで幸福が得られるとは限らない。でも探偵小説は違う。自分の偏見に気づくと幸せに近づくと。
2022-01-17 22:44:15こういうのは、フェアプレイとか読者への挑戦とか、そうしたゲーム感覚からは出てこない発想なんですよね。パズラーへの移行を探偵小説の進歩のように捉えてしまうと、黄金時代以前のミステリ作家がよって立つ思想を見落としてしまう。このあたりが、ポストモダン以後の探偵小説を考えるヒントになる筈
2022-01-17 22:54:58法月綸太郎が『消息』でドイルやチェスタトンに向かっていくのも、やはり後期クイーン的問題の先を考えての事と思う。都筑道夫もチェスタトンの系譜ですし。
2022-01-18 07:46:42チェスタトンであれば、後期クイーン的苦悩は懐疑論者が自らの外部を枠で囲ったからこそ生じる苦悩であり、偏見であると言うだろう。そうした認識の仕方をチェスタトンは狭いと批判している。
2022-01-18 07:59:36こうした偏見からの解放は、元来「幸福」と結びつくものなんですよね。偏見に囚われ不幸になっていくげ現象は、まさにいま、世界で起きている分断に通じる。こうした偏見をこそ暴き、幸福に導いて行くのが、探偵小説であり、批評であると、恐らくチェスタトンなら言うのではないかな。
2022-01-18 08:10:24