【ある冒険者の会話】

サザンクロス @Mizuho_K

【Prologue】 「本当なんだ！ 何処かの誰かが、俺たちのことを盗み見てるんだ！」 「そう言われてもねえ。僕たちにゃ実感もなければ、その話に根拠もなし、そして実害もなし」 「もし本当だとしても、気配を消すのがうますぎて対処しようがないよね」 「お疲れなのですよ、きっと」 「……」

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【ある冒険者の会話1】 「あんた、ここは初めてだな。良かったら旅の記録をつけていかないか」 「旅の記録を？」 「ただで、とは言わん。書いてくれれば宿代は半額だ」 「構わないが……出鱈目な作り話を書くかもしれないぞ」 「世の中は嘘みたいな本当の話ばかり、だろう？」 「それもそうか」

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【ある冒険者の会話2】 「これ美味いな！ 初めて口にした味だ」 「故郷の料理さ。皮を剥いて半日ほど茹でたら、塩釜を作ってこれまた半日焼く。乾燥させて脂肪分を落とし渋みを抜きつつタレに３日ほど漬け込んで完成。そのまま食べると頭が痺れるからね」 「よくそんなものを食べようと思ったな……」

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【ある冒険者の会話3】 「最近は国からの依頼が無いな」 「世界征服を予告した奈落領の魔王が復活する時期だから、国王陛下と騎士団総動員で準備中。今回はお隣の魔王さんとも組んで対処するらしいよ」 「もうそんな時期か。国の依頼は安いけど手堅いから、さっさと済ませてほしいもんだ」

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【ある冒険者の会話4】 「竜の牙と鱗で、いつもなら釣り銭が出るはずだろ？」 「あんたの腕は信用してるし、俺の眼も腐っちゃいない。隣国で流行り病の流言が飛び交ってるとかの影響で、材料が不足してるんだ」 「何だよ、ツイてねえな……」 「嫌なら事が落ち着くまで待つんだな」

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【ある冒険者の会話5】 「ながーい詠唱と見せかけて詠唱中に接近戦に転じる。どうかな？」 「格闘戦の最中に詠唱するような奴もいるんだ。取り立てて凄いことでもないね」 「そっかー。……で、この会話が詠唱だってことに、そこの間諜は気付いたかな」 「灰になる直前には気付いたと思うよ」

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【ある冒険者の会話6】 「俺には人の心を読む力があってな」 「うわ最悪だなこっち来んな」 「最後まで聞け！ 読めると言っても相手の同意がある場合だけさ。そこで、だ。俺と組んで一儲けといかないか？」 「というと？」 「賭博さ」 ―― 「どうして！ お前は！ 女じゃなくて手札を見ろよ！」

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【ある冒険者の会話7】 「信用問題とは言うが、ほんの少しでいいんだ。多目に作った金貨を分けてくれればさ」 「なら、材料費と手間賃を寄越しな。金貨１枚の製造につき、金貨２枚だ」 「それじゃ意味がないだろう！」 「だから、この仕事は信用第一なのさ。理解したならさっさと失せな」

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【ある冒険者の会話8】 「泉の怪物討伐……何か情報は？」 「こちらの攻撃は無効化した上で反撃してくるらしい。斬撃には斬撃、銃撃には銃撃で倍返し、という具合にな」 「面倒そうな奴だな。他には？」 「手がかりになるかは分からんが、銃を撃った奴には金と銀の弾丸が撃ち込まれていたそうだ」

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【ある冒険者の会話9】 「買った武器は装備しないと意味がないぜ」 「おいおい、わざわざ言うまでもないだろそんなこと」 「武器の性能を完全に発揮できる状態じゃなきゃ装備とは言わんからな」 「例えば？」 「魔力を込めないなんて可愛いもんで、弾を買わない、鞘から抜かない、他には――」

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【ある冒険者の会話10】 「さすがに限界だな……野草で飢えを凌ごう」 「滅茶苦茶マズいじゃん……食いたくないなあ」 「大丈夫だ、この香辛料がある。強い香りと辛みで、どんなヤバい食い物も食えるようになるんだ」 「誤魔化すってこと？」 「そういうことだ。希少だから温存したかったがな」

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【ある冒険者の会話11】 「斬首か絞首か、こいつの末路はお前が選べ」 「……せめて苦しまないようにやってくれ。斬首だ……」 「いいだろう。お前の選択がもたらす結果を、よく見ておくんだな」 ―― 「うまいか」 「……うまい」 「生きるってのは、こういうことだ。知っておけ」

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【ある冒険者の会話12】 『よくぞここまで来た。だが貴様達が此処に足を踏み入れるに相応しい叡智の持ち主か試してやろう。朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足……これは何を表すか』 （人間？） （人間だね） （人間……） （待て、ボンボエリカ虫かもしれん） （それアリなの？） （深読み……）

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【ある冒険者の会話13】 『管理システムチェック。XMS-01 圧縮炸裂型フレイムランチャー、XSA-00 次元断裂式レーザーソード、XLS-02 空間破砕用ビームライフルが使用可能』 「え？ 何だって？」 『貴方たち風に言えば、炎の杖、光の剣、雷の矢ですね。後で手入れの仕方と使い方を教えますよ』

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【ある冒険者の会話14】 「今日は湖底の探索だ」 「止めとくよ。俺は泳げない」 「心配ない、水中呼吸の術具は用意してある」 「ほう……いや、泳げないことの解決にはならないだろ」 「問題ない、重りを仕込んだ靴を用意した」 「それ、襲われたときはどうするんだ？」 「ちゃんと助けてやる」

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【ある冒険者の会話15】 「綺麗に焼けたねえ」 「そうだな」 「みんな灰になったねえ」 「跡形もないな」 「恨まれるかねえ」 「死人は恨まない」 「ここが故郷だった子が何処かにいるかもねえ」 「そうだな」 「わかってもらえるかねえ」 「疫病の痕跡も、証拠も消えた」 「無理かもねえ」 「ああ」

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【ある冒険者の会話16】 「勇者と呼ばれてます」 「そういうもんだな。君は？」 「盗掘家だよ。金目当てだよ」 「正直者は好きだよ。君が？」 「自称旅人」 「自由でいいね。そして君」 「剣士。説得は得意だ」 「最初は口でお願いね。さて、僕らはひと稼ぎするまでの付き合いだが、皆よろしく頼むよ」

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【ある冒険者の会話17】 「荷物運びね……積荷は？」 「古い自動人形だよ。厳重に梱包してるけど、馬車の振動で誤動作するかも。まあ、何か喋ってても気にする必要はないからね」 「わかった。俺も人形遊びは趣味じゃない」

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【ある冒険者の会話18】 「おお、死んでしまうとは情けない」 「お言葉ですが、こうして蘇生しましたので死んだとは言えません」 「だが負けたのであろう」 「いいえ、私は戦っていないので負けたとも言えません」 「では何故死んだのだ」 「食中毒でございます」

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【ある冒険者の会話19】 「この何の変哲もない氷、火種を近付けると――なんと燃えるんだ。しかも融けないときた」 「ほう、どういう仕組みなんだ？」 「俺にも分からんが、これがどれだけ凄いものかは分かるだろ？ この燃える氷……金貨100枚でどうだ」 「他所を当たってくれ。貴重なのは分かるが、ね」

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【ある冒険者の会話20】 「熱した鍋に牛脂と根菜を投入、火が通ったら水を牛乳を半々で入れる。刻んだ香味野菜と果菜に小麦粉と鶏のもも肉と香辛料と塩を混ぜて鍋に投入。よく煮込んだらパンとチーズの粉をかけて炙って完成……この説明いる？ 料理係は俺なんだけど」 「いる。ごはんがおいしくなる」

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【ある冒険者の会話21】 「ん？ この地図……ここは山じゃないのか」 「どう見ても入り江だな」 「連絡しようぜ、謝礼貰えるぞ」 「いや、いくらなんでもこんな大きな間違いはしないだろう」 「……この地図が作られてから、つい最近できたってことか？」 「山ひとつ消えてるんだ。関わるのはよそう」