【逃走ノート・完全版】福間健二 fukuma10l

一日一回ずつ10回完結でtweetされる、福間健二さんのtweet詩をまとめています。今回は【逃走ノート】の完全版。 「元気なころの、段ボール箱で眠り、水で酔うきみの恋した男じゃない。ぼくは。回避と接触の、ニューバランス。他人の靴を盗み、逃げる理由からも逃げる。」(逃走ノート6より) ☆第19回萩原朔太郎賞が、福間健二詩集『青い家』(思潮社刊)に決定。おめでとうございます! 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

弓なりの堤防の上を歩いて逃げてきた。海は、波は、人生は、錯乱する老人たちにまかせて、ぼくは夜の街に出る。最初の敵。最初の出来事。ちゃんとおぼえてるけど、それよりいまは、ワインとおいしい食べものにありつくこと。お金、いくら残ってるか?(逃走ノート1) #fukuma10l

2011-08-27 08:31:32
福間健二 @acasaazul

きみの、休むことを知らぬ両手両足の、仕事と踊りを区別しない快活さに出会う夢を見る。そのためならぼくは棄てる。少年時代。ドアの鍵。移動のための暗号、略号。それに、生きてない人たちに背負わされた荷物も、帽子も、希望のうたも。(逃走ノート2) #fukuma10l

2011-08-28 08:52:29
福間健二 @acasaazul

丘の上から飛んでくる紙飛行機のメッセージ。だれの少年時代でも、だれの見ている雲でも、ふりかえらない。思い出という罠。仕掛けるのはこっち。走る石、走る犬、走る「無秩序」を追い抜いて、長袖の襟つきシャツに着替えるこのぼくだ。風が冷たい。(逃走ノート3) #fukuma10l

2011-08-29 09:45:09
福間健二 @acasaazul

駅から出てきた人たち。十人にひとりは絶望しきった弟。心配する姉の存在をうるさく感じて、盛りのサルスベリの花を見ようとしない。いま、この自由管理社会。他に花はないのに。ぼくは笑った。一瞬一瞬が燃え尽きる。さびしい雑草だけど、すねないよ。(逃走ノート4) #fukuma10l

2011-08-30 08:16:29
福間健二 @acasaazul

姉さんは魔法を使える。「がんばろう」よりも「負けるな」よりも強い虫たちを操って悪夢の外に出る。生きている者のための夏。指と指をからませ、一回しかできないこと。やったね。でも、ぼくはその弟じゃない。のどの奥では決着がついてない。いま、何時? (逃走ノート5) #fukuma10l

2011-08-31 09:53:11
福間健二 @acasaazul

うた、ない、世界。午前三時ちょっと前。反抗と弾圧の物語は終わっても、履きつぶした靴はまだ深い夜だ。元気なころの、段ボール箱で眠り、水で酔うきみの恋した男じゃない。ぼくは。回避と接触の、ニューバランス。他人の靴を盗み、逃げる理由からも逃げる。(逃走ノート6) #fukuma10l

2011-09-01 08:14:29
福間健二 @acasaazul

助けるな。お金をおいていけ。そう教えられたけど、あらしの予感は外れ、通れない門もなく、突然のキスで台なしになる「関係」も転がってない。ひとり。中間にいること。これだ。大股で歩く者、大股で歩きながらどこにも帰らない者を見出すのだ。(逃走ノート7) #fukuma10l

2011-09-02 09:25:56
福間健二 @acasaazul

パッと消える。この愚かさ。変化を期待しない。この砂漠。笑う。この盲目。黒いマントなんかいらないさ。不気味な親しいもの。最初はそっと撫でてやる。紙の上に描かれた見知らぬ弟のように。フリーダイヤルで架空の苦情を訴える。返ってくるのはうなる風の音。(逃走ノート8) #fukuma10l

2011-09-03 10:01:49
福間健二 @acasaazul

鳩の排泄物。丈夫な糸。その下の、ゲットー育ちの、人を欺く技術。この世から隠されたもの。もうそれを思い出すためでも夢見るためでもないけれど、ぼくは何分でも息を止めて実現する。可愛い桃の装置を動かすのを惜しまないきみの、最後のわがままを。(逃走ノート9) #fukuma10l

2011-09-04 08:44:03
福間健二 @acasaazul

壁と壁のあいだ。人々が出入りして視線と希望の果実をくれる。秋。手錠のかわりの、粗い肌理の。気づかないきみに悪意はないと願う。どこからともなく、うた。うたえない、うた。うたえないけど、きこえてる。きこえてるけど、その糸、その誘いには乗らない。(逃走ノート10) #fukuma10l

2011-09-05 09:50:19

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