ついのべクラスタによる “星新一生誕85周年” 祭り
今日はショートショートの神様 星新一さん生誕85周年(Googleホーム参照) ということですので、「ノックの音がした」と「エヌ氏」をお題に何篇か #twnovel を書いてみたいと思います。乗っかってくれる人がいると嬉しいです。ではではまた夜にお会いしませう。
2011-09-06 07:05:50ノックの音がした。空耳かと思った。ところが再びノックの音がした。今度はさっきより大きな音だ。気味が悪いので無視することにした。ノックの音は次第に大きく激しくなってゆく。私は後ずさりしてドアから離れた。何も見てない。聞いてない。私はただ、郵便物を届けに来ただけだ。 #twnovel
2011-09-06 07:00:53@laybacks ノックの音がした。どうぞ、と促すと扉が少しだけ開き、隙間から暗闇に浮かぶ大きな目だけが見えた。目はぎょろぎょろと室内を見回し、私の姿を見つけると今度はじっと見つめてくる。私は溜息を一つ、おいでと声をかける。隙間から姿を現した奴は「ニャン」と愛らしく媚を売った。
2011-09-06 07:31:35#twnovel トボトボと会社への道を行く。見上げれば久しぶりの晴天。暑い。疲れた。もう働きたくない。何もしたくない。誰にも会いたくない。「そう言うなよ、今までだって二人して頑張ってきたんじゃないか。何があっても俺はいつもお前のそばにいるぜ」振り返ると俺の影がニッと笑った。
2011-09-06 08:39:31#twnovel ノックの音がした。ドアを開けると、上等なスーツを着た紳士。差し出してきた名刺には、CEOとある。「十年前、ここに来て"水をくれ"と頼んだ者です」思い出した。「あの時のコップ一杯の白湯のおかげで、今の私がある」ちょうどカップ焼きそばのお湯を捨てるタイミングだった。
2011-09-06 09:01:58ノックの音がした。動きたいが体が反応しない。朦朧とした頭で考える。こんなところで何をしてるんだろう。もう嫌だ。俺はロボットじゃない。やめてくれ。これ以上一歩たりとも動けやしないんだ!だが現実は甘くなかった。「立て!もう一本!」鬼コーチの千本ノックはまだまだ続く。 #twnovel
2011-09-06 09:19:37@laybacks ノックの音がした。出てみると役者をしている友人が立っていた。「実は俺、今度の芝居でエヌ氏って役をもらったんだ。どんな役作りをすればいいと思う?」私は喜んで彼を招き入れた。長い夜になりそうだ。#twnovel
2011-09-06 09:37:48ノックの音がした。その音には聞き覚えがあった。十年前別れた恋人との秘密の合図。その記憶が蘇ると共に背筋がゾクリと震える。彼女は数年前亡くなったからだ。誰だ。覗き穴から外を伺う。小学生位の少女が見えた。何だ、偶然か。ドアを開けると少女が言った。「こんにちは、パパ」 #twnovel
2011-09-06 09:48:01ノックの音がした。いや、それは気のせいだ。TVの音声がそう聞こえたのだ。再びノックらしきものが聞こえる。でもそれは足元のペットボトルが倒れた音なんだ絶対。また音がした。今度はドンドンとはっきり聞こえる。違う、違う。全部気のせいだ。俺はまだこの部屋に居続けるんだ。 #twnovel
2011-09-06 10:09:00ノックの音がした。さっきと逆に左のドアから開けてみるが、やはり誰も居ない。右のドアも同じ。いったい誰がいたずらをしているのか知らないが、これ以上されないように両方のドアを開けておいた。これですぐにわかるだろう。ところが誰も見えないのに、またノックの音がした。 #twnovel
2011-09-06 10:52:41#twnovel ノックの音がした。僕は本を置いて立ち上がり、玄関の宅配ボックスを開けた。そこには焼きたてのピザが入っていた。支払いはクレジットだから、配達人と顔を合わせた事はない。バニーガール姿だったら面白いのにな。と思いながら僕はピザを頬張る。天窓に浮かぶ地球を見上げながら。
2011-09-06 10:56:05#twnovel n氏はドアを見ていた。誰でもいいから来ないかなあ、来客があったら最高のおもてなしをするのに、と思っていた。日が傾き夕焼けが部屋を染めた。ため息をついた時、書斎から物音が聞こえた。n氏は一冊の本を手にとった。コン、コン。ノックの音がした。
2011-09-06 10:57:29ノックの音がした。こんな時間に誰だろう。明日は早いのに。ドアを開けるとそこにいたのは紛れもないn氏だった。「行こう」「…はい」次の日、一人の花嫁が消えた。 #twnovel
2011-09-06 11:17:30#twnovel ノックの音がした。エヌ氏はすぐに返した。またノックの音がした。少しあとに返した。しばらくあとにノックの音がした。1日後に返した。3日後ノックの音がした。1週間後ノックの音がした。エヌ氏はあわてて返したけど、もうノックの音はしない。
2011-09-06 11:24:38#twnovel 友人や親戚達が帰ると、家の中は私と彼だけが残された。時計の針に目をやり、私は先刻までひっきりなしに出入りのあった玄関扉を閉めた。今夜はもう尋ねてくる人もいないだろう。彼と私の二人だけの長い夜のはじまりだ。ふいにノックの音がした。彼が眠る、柩の内側から。
2011-09-06 11:49:38ノックの音がした。「はい!」とエヌ氏は応えた。再びノックの音がした。「入ってくれ!」とエヌ氏は言った。またもやノックの音がした。「ドアを開けろ!」とエヌ氏は叫んだ。ノックの音は止んだ。部屋の中央でエヌ氏は途方にくれた。この部屋の扉は一体どこにあるのだろうか。 #twnovel
2011-09-06 11:50:27#twnovel ノックの音がした。ドアの外には白く巨大な物体が立っていた。反射的にドアを閉めた瞬間、それが何なのか思い出した。ホシヅルだ。以前罠にかかった子供のホシヅルを助けた事も思い出した。恩返しに来たのか?と思いながら再びドアを開け、倒れてきたホシヅルに私は押しつぶされた。
2011-09-06 11:53:07#twnovel ハンガーノックの音がした。「何言ってんの。そのお腹の音はただの空腹でしょ」隣で運転する野暮な男がからからと笑う。「次のSAで食事でもいかがかしら」わたしはクールビューティーらしく微笑む。到着したら即トイレまで走る、その言い訳だけを考える。もはや男女さえ厭わない。
2011-09-06 11:53:49ノックの音がした。部屋の中から。通りすがりの廊下で、思わず足をとめる。「…どちらさまで?」「どちらさまが良いですか?」逆に返される。「天使でも悪魔でも、殺し屋でも敵国のスパイでも、貴方の望みどおりに。貴方は創作の扉を叩く、アイディアのノック音に気付いたのだから」 #twnovel
2011-09-06 12:06:37#twnovel 海を挟んだ遠恋は辛く、スカイプで会う貴方は無機質な存在で、私を包んでくれた温もりが恋しい。でも、そんな日々も漸く終わる。帰国の夜、鍵が掛かってない扉からノックの音がした瞬間、思わず視界が滲んでふらついてしまう。そんな私を笑う彼が腹立たしくも愛しい。やっと会えた。
2011-09-06 12:08:49ノックの音がした。彼はしぃと人差し指を立て居留守を決めこむ。私は彼の腕の中で声を出さずに笑う。二人の世界には他に何もいらない。ノックの音が止むようにこの心臓もゆっくり動きを止め、やがて二人で朽ちていくのだから。そうして私達はこの世から、永久に不在になれるのだ。 #twnovel
2011-09-06 12:20:46ノックノック。「はーい」ガチャ。 #twnovel 「はーっははー! 扉を開けてしまったな! わしがかの有名n」バタン。「あ、こら! 台詞の途中で閉めるな! ウケてもウケなくてもいいから台詞を最後まで言わせないか! おい、こら! ……。あのすみません、開けてくださいお願いします」
2011-09-06 12:29:02ノックの音がした。時計の針が日付が変わった事を指し示す夜夜中、こんな遅くに如何なされたと問うや、「窓から明かりが漏れてましたゆえ、遅くまで頑張っておられるのだなと夜食をお持ちしました」という。それならばと私は苦笑いと共に、彼女を窓一つ無い部屋へと招き入れた。 #twnovel
2011-09-06 12:38:32支配者と言うのは自ら望んでなるものではない。気品ある彼女は知っていた。支配欲を剥き出しにするまでもない。真の支配者とは相手に「支配されたい」と思わせるものなのだ。 #twnovel エス氏は今日も望んで彼女に尽くす。彼女は時々その柔らかな身体を触らせ、満足げに声を出す。「にゃあ」
2011-09-06 12:40:11