ンベベ・デスティニー

Twitterに感動巨編が上がったのでまとめました。
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つこさんさん。📚🐕 @tsuco33

@igaigauniuni 「お化粧のしかた、教えてほしい」と、泣きそうな瞳でかえでは言った。

2022-02-18 23:06:30
豆田 ✿ 麦 @mametamugi

@igaigauniuni @tsuco33 じゃあうにの次のはかえでちゃんね!

2022-02-19 17:27:55
いがうら @igaigauniuni

@mametamugi @tsuco33 異世界へ転生したカエデは、ショッキングピンクやターコイズブルーで顔面を塗りたくる文化を持つンベベ族と出会い……!

2022-02-19 17:30:47

書いてくれました

いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 「お化粧のしかた、教えてほしい」と、泣きそうな瞳でかえでは言った。 確かに彼女はまぶたに気持ちばかりの青を乗せるばかりで、ノーメイクと変わらない。 彼女はこのンベベ族を救う巫女として神がお連れくださった方であり、族長の息子マポポとの婚姻も内定している。

2022-02-19 18:11:43
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 その賢さで土地に流行る奇病を鎮め、マヨネイズなる奇天烈な調味ソースを広めた彼女は確かに巫女であろう。しかしマポポのそばには兄妹同然に育ったポミミがおり、ポミミはカエデを疎ましく思っているようだ。

2022-02-19 18:40:31
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 カエデが人知れず涙を流したのは巨大魔獣マンモーズ討伐の祝勝会の夜。ポミミの指示でンベベの女たちは誰ひとりとして、カエデに化粧を施してやらなかった。女たちは皆一様にルリの青とサンゴモモの果汁で華やかに顔を彩ったが、無色のカエデはただポツンと会場の中心で燃え盛る炎を見つめるばかりだ。

2022-02-19 18:56:01
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 彼女は会場を離れ、駄々広い草原にひとり座る。私はサンゴモモの果汁の入った壺を手に、彼女の横へ腰かけた。 「それを塗れば、私もンベベの一員になれますか」 カエデの声は震えている。私にはそれを肯定することはできなかった。

2022-02-19 19:10:35
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 その後も巫女の快進撃は続き、ンベベ族には10より大きい数の概念が生まれた。湯に浸かる、手を洗うという習慣が生まれ、この1年で新生児が一人も死なないという快挙まで成し遂げる。しかし、それでも、彼女に化粧を施してやる者はいない。ポミミはマポポの傍を離れようとはしなかった。

2022-02-19 20:23:39
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 一方でンベベ族の縄張りやその周囲では、未だかつて類を見ない規模の中級魔獣が跋扈するようになった。ンベベ族から腕の立つ者を集め、討伐体が結成される。ポミミは「巫女であるなら同行すべきだ」と主張し、多数決によりカエデの同行が決まった。出発の日、色鮮やかな顔の女たちが討伐体を見送った。

2022-02-19 21:46:42
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 戦況は思わしくなく、カエデは負傷者の救護に奔走する。私は討伐隊の一団から抜け、群れの中心を突っ切って北へ走った。ゴンゴ族の縄張りだ。彼らは好戦的でンベベ族と対立していたが、魔獣の群れという共通の敵の前では手を取り合うほかない。

2022-02-19 23:23:39
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 果たしてゴンゴ族はンベベ族に加勢した。やがてリーダー格の魔獣を討取ると、群れはいずこかへと去って行く。カエデはゴンゴ族へ丁寧に礼を言い、討伐隊と共に帰路へついた。そして私のもとへ来て言う。「お化粧の仕方を教えてほしい」と。

2022-02-19 23:55:08
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 集落へ戻ると、女たちがカエデを取り囲んだ。死んだ者、深い傷を負った者の妻や恋人たちだ。その中にはポミミもいた。マポポは左腕を失う怪我を負っていた。こんな惨憺たる状況になるとは、偽物に違いないと言うのだ。女たちはまるでカエデを拒絶するかのように一層化粧を濃くしていった。

2022-02-19 23:58:50
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 誰もが寝静まった夜、カエデはまたひとり草原を眺めていた。私が横に並ぶと慌てて涙を拭い、小さく笑う。私は彼女に化粧を施してやることにした。コイシロガイを砕いた白でカエデの鼻筋を撫でる。マンモーズの角から作ったネックレスを掛け、ピィと口笛を吹いた。

2022-02-20 00:09:31
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 口笛を合図に、草の陰から多くの屈強な男たちが現れた。彼らは無駄のない動きでンベベ族の集落を囲む。私が手を挙げると、一斉に火を放った。カエデは目を瞠ったが、すぐには状況を理解できないのか動かない。すぐにンベベ族が飛び出してきた。集落に悲鳴が満ちる。

2022-02-20 00:21:08
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 全てのンベベ族が拘束されるのに、そう時間はかからなかった。マポポが私を睨みつける。 「おまえゴンゴだったのか」 ポミミがカエデに怒鳴りつける。 「やっぱりおまえは偽物だ!悪魔だ!」 ゴンゴ族の若者たちがマポポとポミミに槍を突きつけた。 「族長とその奥方だ、口を慎め」

2022-02-20 00:29:58
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 「どういうことですか」とカエデが問う。私がひざまずくと、それに倣ってゴンゴ族の男たちも膝をついた。 「コイシロガイは族長の妻にのみ許される化粧。ゴンゴは素肌を尊びます。化粧を化粧で隠すのは、心を偽る悪魔の所業」 ンベベ族を振り返ると、女たちは夜中だというのに色鮮やかな肌をしている。

2022-02-20 00:35:21
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 風呂を覚えたンベベ族だが、化粧だけは一向に落ちなかった。彼らの肌はもう赤に青に紫に彩られ、仮面を被っているかのようである。 ンベベの男の中には、巫女の素肌に魅入られた者も少なくない。それが一層、女たちの悪意を刺激したのだ。 しかし男たちは巫女を守らなかった。

2022-02-20 00:40:33
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 「神に遣わされし巫女を虐げるンベベ族はこの地に不要」 私はそう言ってカエデを抱き上げ、牛の背に乗せた。ここから先の惨劇は、巫女が見る必要のないものだ。カエデの知るべき化粧はコイシロガイの白があればいい。私は牛を引いてゴンゴの地へと戻ることにした。了

2022-02-20 00:48:47
いがうら @igaigauniuni

@Gyopon @mametamugi @tsuco33 エピローグ 狩りを終えて家に戻ると、我が子が絵を描いていた。ルリの青、サンゴモモの赤、それらを混ぜた紫と、コイシロガイの白。鮮やかなその絵は悪魔などとは程遠い、夢に見る花畑のようだ。その中心に私と我が子、そしてカエデの姿が描かれていた。(本当に了。

2022-02-20 00:54:28

感想