大屋雄裕氏「憲法が制約する対象は政府であり国民ではないという主張をする方々がいます」 2022年3月1日

「両側にいい加減な議論があるのでちょっと正確に書きます(わりとうんざりしている)」 「私人に対してはこのように間接的な形で憲法が規範性を持つという見解が通説かと思います(間接適用説)」
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ipatrioticmom @ipatrioticmom2

もう10人くらいに国民には憲法の遵守義務はないと言われてるんですが、それなら14条の国民は法の下に平等で差別されない、も守らなくていいんでしょうか。すると差別問題は倫理道徳の範疇になりますね。 @takehiroohya twitter.com/mdkmg/status/1…

2022-03-01 02:35:36
ぱーかあ🇺🇦 @MDKMG

@ipatrioticmom2 @takehiroohya 憲法で定められている国民の義務は納税・教育・勤労の3つで、それ以外は憲法遵守義務が私人・私企業にはない…ってのが一点、次に他国企業・公職に就くのも職業選択の自由で保障されています。

2022-03-01 02:12:37
Takehiro OHYA @takehiroohya

このあたり、両側にいい加減な議論があるのでちょっと正確に書きます(わりとうんざりしている)。 twitter.com/ipatrioticmom2…

2022-03-01 14:43:22
Takehiro OHYA @takehiroohya

まず憲法99条の定める憲法遵守義務の名宛人は公務員であり国民が含まれていないというのは事実。この点や、アメリカ憲法などに国民の義務を定めた条文がないことから、憲法が制約する対象は政府であり国民ではないという主張をする方々がいます。

2022-03-01 14:43:23

憲法99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

Takehiro OHYA @takehiroohya

これについては、まず日本国憲法は26・27・30条などで国民の側の義務を規定しており事実問題として誤っていることに加え、米憲法も政府の側の権限(例・租税を課す権限)を規定した裏側として国民の納税義務を想定していることは明らかであり、結局は記述スタイルの差に過ぎないと考えられます。

2022-03-01 14:43:24

憲法
26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
② すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

Takehiro OHYA @takehiroohya

では国民には憲法を守る義務があるのか。これについては、たとえば14条で信条による差別が禁じられていることから政府が特定政党の支持者を公務員として採用しないことは許されないが、すべての企業が同様の義務を負っているわけではないと解されています。

2022-03-01 14:43:24

憲法14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

Takehiro OHYA @takehiroohya

たとえば共産党本部で働いている人は警備員まで含めて共産党員だとされていますが、まあそりゃねえという話ではある。宗教団体などもそうでしょうが、特定の思想信条を持っていることが当該団体の基礎になっているような場合、それを共有しない人を排除することはある程度許容されます。

2022-03-01 14:43:25
Takehiro OHYA @takehiroohya

ある程度というのはどの程度か。たとえば障害者については一定以上の比率で雇用することや合理的配慮を提供することが義務付けられており、障害者排除的な信条に基づく団体だからという理由で免除されるようなことはありません。

2022-03-01 14:43:26
Takehiro OHYA @takehiroohya

どのような排除がどの程度認められるかは最終的に立法や裁判で規定されるところ、それは国家機関が憲法に基づいて行なうわけで、憲法上の価値や規定が機能することになるでしょう。私人に対してはこのように間接的な形で憲法が規範性を持つという見解が通説かと思います(間接適用説)。

2022-03-01 14:43:26
Takehiro OHYA @takehiroohya

なお通説というのはまあ一般的な話としてこの内容で説明するのは許されるやろという感じのもので、アカデミックな水準では異論や批判がそれなりにあります。憲法の少なくとも一部は私人に直接の適用があるという見解も有力かと思いますが(直接適用説)、その逆(無適用説)はもう見かけないかなあ。

2022-03-01 14:43:27