【創作企画】第2話 異能 そして代償【UP A Mystery】

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UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

用事を済ませて廊下を歩く、1人の探偵がいた。

2022-02-24 21:04:16
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

春始めとはいえまだまだ寒いな、と羽織っている上着を手繰り寄せる。

2022-02-24 21:05:00
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

1階のバーを出て空き家の扉を横目で見ながら、中庭回廊への扉を静かに開ける。ギィィ、と小さく音を立てて茶色の扉を開けば、春の夜風が彼の頬を優しく叩いた。 上を見上げれば、吹き抜けから満天の星空が見える。

2022-02-24 21:05:40
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

バーの前とはうってかわり、静かなそこを抜けて1階の廊下へ出た。 誰もいないのか、彼の足音だけが響く。

2022-02-24 21:07:04
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

すぐ正面にある玄関ホールに続く扉を開けて、2階への階段を上がる。 そのまま大きな絵画のある左側の廊下を通り抜け、曲がり角を左へ。 右手にある扉をひとつ見てから、その横の扉の前に立つと────

2022-02-24 21:07:51
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彼は、Bと書かれた扉を、そっと開けた。

2022-02-24 21:09:09
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「───起きてたのか、ユースティア」 「………」

2022-02-24 21:09:57
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

彼───リオ・アダムは驚いて正面の丸机のそばの椅子に座っているペアの少女、ユースティアを見た。 髪を下ろして、寝間着のままそこに小さく座っている彼女の表情は、窓から入る月明かりで陰になってよく見えない。

2022-02-24 21:11:02
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

それでは寒いだろう、と慌ててリオは部屋に入り自分の上着をユースティアに羽織らせる。表情は見えないが、「ありがとう」と呟く声は震えていた。

2022-02-24 21:11:40
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「…、…眠れないなら、キッチンから温かい飲み物でも…」

2022-02-24 21:12:58
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俯いてその後何も喋らなかったユースティアが、突然口を開く。なにか取ってこようと扉の方に足を向けたリオは驚いて踵を返した。

2022-02-24 21:14:24
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

いつの間にか顔を上げて、ようやく見えた彼女のその表情は、いつになく真剣だった。 その大きなロイヤルパープルの瞳をじっと見つめていると、ユースティアは小さく口を開く。

2022-02-24 21:15:31
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「ひとつ……お願いがあるんだけど」 (…お願い?)

2022-02-24 21:17:15
UP A Mystery【完結】 @C_UP_A_Mystery

口を小さく結んで、こちらをじっと見つめてくる少女。こんな夜遅くまで自分が来るのを待って起きていて、話があるというのだから、なにか重要なことなのだろうと、リオは目線を合わせるためにしゃがみこんで優しく促した。

2022-02-24 21:18:05
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「……俺に出来ることなら。 話してごらん?」

2022-02-24 21:18:50
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「……………私ね、探偵のリオに、探して欲しいのよ」

2022-02-24 21:19:33
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ユースティアはそう言って、少し目線をさ迷わせる。 少し言いづらそうに、膝に置いた拳を小さく握りしめてしかし、もう一度決心したように彼と視線を合わせた。

2022-02-24 21:20:20
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「─────人殺しの、犯人を」

2022-02-24 21:21:04
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