ナウシカの先行作!?M・ジョン・ハリスンの傑作「ヴィリコニウム〜パステル都市の物語」感想まとめ
- athird_official
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ファンタジー風に見えてパステル都市ことヴィリコニウムのSFっぽい建築や、主人公に行き先を示す使いの鳥が人工知能の機械仕掛けだったりする部分は素直に楽しい。小人と呼ばれる技師がパワードスーツを着込んで活躍したりして、メカメカしさとファンタジーの絡みが印象的。
2022-01-18 22:39:46ここからはネタバレしていくことにするけど、二人の女王をめぐる戦争のなかで現われる殺戮機械の存在が後半の鍵になっていて、技術レベルが低くて滅んだ文明の遺物を武器にするくらいしか活用できないという状況から、殺戮機械の謎を解くことで死からの再生の技術が手に入ることになる。
2022-01-18 22:39:46幸福な結末に見えて、クロミス卿が「死について思いなやむことはなくなった」ヴィリコニウムを後にするのは、妹の死に罪悪感を持ち続けるからでもあり、再生という死を無化する技術に対して背を向けるのは、科学技術に対する文明批評の意味合いもあるだろう。ここらへんなるほど宮崎駿っぽい。
2022-01-18 22:39:47不死への拒絶が根底にあるように見え、遺物の別様な活用も、昔の仲間達との再会が裏切りの悲劇になるのも、死を思うクロミスのラストの態度もその現れと言えないか。ヴィリコニウムが通常のシリーズとは異なりパリンプセスト的だと言われるのもその一環ではないか、と。
2022-01-18 22:39:47一度終わったものはそのまま続くわけではなく改鋳される遺物のように似た素材をシャッフルして新しく別の物が作られる、というような。併録の短篇群が同じ時間軸を共有しているかどうかも定かではないし、「ヴィリコニウムの騎士」はそうした万華鏡的なシリーズ性のマニフェストに見える。
2022-01-18 22:39:48「ヴィリコニウムの騎士」のタペストリーから見えるヴィジョンはこちらを見返してもいるようで、複数の別の時間軸を見せてもいるようだし、「俺は人生をどう生きればよいのか?」に対して「これまでと同じように生きる必要はない」「われらはおのれの生きる世界を自ら作るものだ」30P
2022-01-18 22:39:49という返答はその都度その都度作り直されるものとしての生、まるでゲームのプレイのような複数の可能性としての世界を示しているように思える。パリンプセストといえばそもそもこのヴィリコニウムという地名はスコットランドにあるらしく、それに虚構を重ね書きして作られたものなわけで。
2022-01-18 22:39:49以上ネタバレ含んだ感想。ここからはまだ読んでない人に書くけど、このシリーズをまだ読んだことない人はまず長篇『パステル都市』から読むのを勧める。最初の短篇群から読むと設定や何やらが説明されずに出てくることになるし、短篇は『パステル都市』の描写を踏まえたものがあるので。
2022-01-18 22:39:50話が一番わかりやすいのも『パステル都市』だと思う。『パステル都市』という主軸を据えてから短篇群を別側面からのアプローチとして読んで行く方がわかりやすい。私は雑誌で短篇を先に読んだ時は今ひとつ掴めないなと思っていたし、執筆が後になる短篇のほうが文章が入り組んでくる印象もある。
2022-01-18 22:39:51ヴィリコニウムを読んでいると、都市の通りの名前とか遠方の地名とか時に地名なのか人名なのかもわからない名前が出てはほとんど説明もなく消えていくのね。「この印象はTRPGで出しづらいやつな」と思いながら読んでました。
2022-01-19 19:48:58#読了 #日本怪奇幻想読者クラブ ヴィリコニウム パステル都市/M・ジョン・ハリスン 私は掲載順に読んだが、最後に収録されている「パステル都市」から読むのが読みやすくてオススメ。(連合軍からの攻撃を打ち下すべく仲間を集めに向かうクロミス卿の話。戦い以外にも、 pic.twitter.com/cxX8u12dtU
2022-01-19 23:42:29道中の錆砂漠、機械の鳥、足が20本の蜥蜴、ゴーレムなど楽しめる) 著者は「ヴィリコニウムの騎士」から読むことを勧めているけど、前半4つの短編は、パネルを貼り合わせたように急に場面が変わり、数々の幻想的な描写に気を取られて、何の話だっけ?と迷子になる。
2022-01-19 23:42:29『ヴィリコニウム パステル都市の物語』(M・ジョン・ハリスン/大和田始訳/アトリエサード)うちにもきました。機械文明と薄暗がりの幻想。〈錆の砂漠〉と、滅亡の美。わたくしのフォロワーさんには刺さる御方も多いはず…😏 pic.twitter.com/MP7YkOUqOV
2022-01-22 20:02:35ヴィリコニウムのパステル都市読んだ、M・ジョン・ハリスンはスタイリッシュな「ライト」がめちゃめちゃ好きなんですけど、本作もいまや常套となったポストアポカリプスのサイエンスファンタジーの枠組みに肉付けされた沈鬱な叙情と皮肉な文明論的詠嘆のスタイリストぶりが際立っている
2022-01-23 14:09:49めちゃめちゃナウシカというのはそれはそうで(飛行機械はともかく化学物質に毒された大地と海や巨神兵的な奴まで出てくる)、他にもスター・ウォーズなライトセーバーまで出てくるし、発表当初としては驚くべき景色が現在はどれだけ浸透したかの感慨はあれ、むしろそれらを描くハリスンの筆に注目したい
2022-01-23 14:14:16栄華をきわめた廃文明の遺した古代機械を発掘しては使い回し、時には解体してより粗雑な道具に作り直すスカベンジャーな営みと、それに立脚する帝国の有り様はもはや“滅び”として扱うしかないもので、そうした諦念が陰鬱な語りとして全編を覆っているし、また主人公たる視点人物の造形ともなっている
2022-01-23 14:18:18この、“何やってもスカベンジャー”な慨嘆はしかしどうしても漫画版ナウシカにおけるナウシカの決断と比較せねばならないだろうし、他にも例えば何だったら∀ガンダムにおけるそれと比較してもよい
2022-01-23 14:20:51なので、以上コンテンツに親しんでいる現代の読者であるほど、パステル都市終幕の主人公クロミスに同意するだろうし、それからのヴィリコニウム帝国の行き末に暗雲を見て取ることにはなりそうではある
2022-01-23 14:22:56ヴィリコニウム、ナイトランドクオータリーに訳載された短編群もあるけど短編群は凝集度がすごいし、固有名詞も一貫しない(なぜなら歴史なるもの転変するのが常なので)関係上、パステル都市から読み始めるのが最上なんだけど、これ原書ヴィリコニウム買ったかつてのわたくしに教えてやりたいな
2022-01-23 14:32:39ヴィリコニウム、ナイトランドクオータリーに訳載された短編群もあるけど短編群は凝集度がすごいし、固有名詞も一貫しない(なぜなら歴史なるもの転変するのが常なので)関係上、パステル都市から読み始めるのが最上なんだけど、これ原書ヴィリコニウム買ったかつてのわたくしに教えてやりたいな
2022-01-23 14:32:39ゴランツ版ヴィリコニウムもやはりヴィリコニウムの騎士から始まってるけど、パステル都市の後日談なのでパステル都市から読み始めたほうがいい pic.twitter.com/2Tzl2E8yhK
2022-01-23 14:36:34『ヴィリコニウム』収録の「奇妙な大罪」にえがかれているマリ・ルイドはこのような儀式なのでした。 #ヴィリコニウム同胞団 twitter.com/LfXAMDg4PE50i9…
2022-01-23 19:04:36メリークリスマス! 画像は英国サウスウェールズ州で今でもクリスマスに続けられているという奇習「Mari Lwyd」です。馬の頭蓋骨を掲げた一団が村の家屋を一軒ずつ襲撃。住人と詩歌バトルを行います。住人が負けたら一団は家に侵入し、さんざん飲み食いして去ってゆくというもの。怖いけど楽しそう! pic.twitter.com/9wdqdyfIV9
2020-12-24 11:32:05M・ジョン・ハリスン『ヴィリコニウム』(大和田始訳/アトリエサード)読了。遠い未来の沈みゆく暗い人類の再生の物語であり物語の再生である。複雑なタペストリーに見入るように繰り返し読む楽しみのある作品。
2022-01-23 22:00:50『風の谷のナウシカ』元ネタの一つと言われる『パステル都市』を含む『ヴィリコニウム パステル都市の物語』(M・ジョン・ハリスン) 装画、デザイン、解説、翻訳すべてが素晴らしい。 pic.twitter.com/gLXQsPpoCf
2022-01-23 22:50:51きょうから寝るまえの読書は、M・ジョン・ハリスンの『ヴィリコニウム パステル都市の物語』だ。収録されている「パステル都市」は、サンリオSF文庫の『パステル都市』で読んだが、改訳されているらしい。ほかにも短篇が収録されているので、合わせて読む。ひじょうに楽しみだ。 pic.twitter.com/tZYwJIhbaP
2022-01-27 13:06:09