茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの『「これくらいのことはこれからも繰り返しあるさ」と思っていたら、「もう二度となかった」』

脳科学者・茂木健一郎さんの9月11日の連続ツイート。 中学校時代の思い出
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茂木健一郎 @kenichiromogi

emのpocket wifi,「仕様」を乗りこえ今やっと復活したのでこれから連ツイを試みますが、新幹線もすでに品川駅に近づき、途中で切れる可能性がありますのでご容赦!

2011-09-11 08:34:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(1)中学校のとき、秋にみんなで学校ちかくの河川敷に遠足にいった。赤いジャージを着て、それは今からおもえばかなりみっともないことだったのだけど、当時は気付かなかった。川のほとり、すすきが生えて、 太陽に照らされていた。トンボたちが空を舞った。

2011-09-11 08:36:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(2)ぼくが好きな女の子も赤いジャージを着て、その子がどこにいるのか、いつも気になって。でも、ぼくは、表面は、自分の仲間たちとばかな遊びをしてさわいでいた。ひっつき虫を見つけて、きむらに投げたりした。

2011-09-11 08:36:59
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(3)そのうち、勇気をふるって、ぼくの好きな女の子にひっつき虫をなげようとしたが、うまくいかなかった。かわりに、ポケットに入れておいた。何かの記念に、とでも思ったのだけれども、学校に着く頃には、すっかりとげとげがひしゃげてだめになっていた。

2011-09-11 08:37:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(4)その秋の一日は、ほんとうに素朴で心から込み上げる喜びに満ちていて、それは、主に空間の配置に関することだった。ぼくがここにいて、あの子があそこにいて、すすきの穂が揺れていて、蝶が飛んでいて、太陽が上にあって、そして、風がふいていて。

2011-09-11 08:38:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(5)肝心なことは、その時のぼくが、その河川敷への遠足を、特別なことだとは思っていなかったということだ。ぐれてた関根とか、身体の大きな山崎とか、そいつらがいっしょに歩いていく、みっともない赤いジャージを着たその学校遠足は、日常の延長くらいに思っていた。

2011-09-11 08:39:36
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(6)「こんなことは、これからも繰り返し起こるさ」。中学生のぼくは、それくらいに考えていたのだろう。学校とか遠足とかは、それくらい慣れ親しんだ体験だった。毎年やるんだよ、こんなの、とくらいにたかをくくっていた。

2011-09-11 08:40:24
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(7)それからすぐに、受験の季節になった。ぐれていた関根や、身体の大きな山崎も、なんとはなしにぴりぴりし始めて。好きなあの子が、どこを受けるとか、そんなうわさも聞こえてきて。やがて、教室の中の配置に気を配る、そんな心の余裕も、みんななくしていた。

2011-09-11 08:41:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(8)あっという間に、卒業式。生徒会長をやっていたぼくの第二ボタンを、後輩がもらいにきたりして、はずかしかった一日が終わってみると、関根も、山崎も、好きだったあの子も、みんな消えていた。それで、ほんとうにおしまいだった。

2011-09-11 08:42:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

こも(9)「これくらいのことは、これからも繰り返しあるさ」と思っていたら、「もう二度となかった。」それが、あの秋の日の、みんなで学校から歩いていった遠足。すすきの穂が揺れていて、トンボがとんでいて、関根がいて、山崎がいて、あの子がいつも心の片隅にいた。

2011-09-11 08:44:01
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「これくらいのことは、これからも繰り返しあるさ」と思っていたら、「もう二度となかった。」ことについての、連続ツイートでした。

2011-09-11 08:44:59