這い寄る混沌さんによる、日本陸軍の小銃弾の話。

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這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ぼろ太さんから希望があったので、急遽旧軍小銃の小話を展開してみる。

2011-09-10 21:27:03
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

十三年式~十八年式村田銃の頃は口径11mm、二十二年式村田銃は口径が8mmと、比較的大口径だったのですが、この頃の火薬は黒色火薬を使用しており、そこまで威力がありそうにないですね。それらの弾薬を一新する時に作られたのが「6.5mm三十年式実包」です。

2011-09-10 21:35:14
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

三十年式実包の開発時、無煙火薬を使用した新型実包の試作を6mm、6.5mm、7mmで試した所、6mmは工作技術の関係上、7mmは反動の強さが問題となり、6.5mmが採用されたという経歴があるようです。

2011-09-10 21:38:03
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

当時は仮想敵国であるロシアのコサック騎兵の騎馬突撃の撃破が弾薬の威力想定であり、それまでは7.7mm以上の口径が必要だと訴えられてきたのですが、コレについては軽量の円筒弾を高初速で撃ち出すことにより、技術的克服をしたようです。

2011-09-10 21:41:05
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

まあそんなこんなで採用された三十年式実包ですが、実際に使い始めると「6.5mmでは焼夷弾や曳光弾が作れない」「対物威力が足りない」という問題が露呈してきました。見た感じでは主に機関銃を運用する時の問題ですねー

2011-09-10 21:45:25
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

そこで口径6.5mmよりも威力がある7.7mm口径の実包を作る事研究が始まり、1932(昭和7)年に弾丸重量13.2g、装薬量2.85gの半起縁式(セミリムド)の九二式実包が開発されます。

2011-09-10 21:50:02
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

丁度この時三年式重機関銃を元に、口径を7.7mmに仕様変更して再設計された「九二式重機関銃」が同時期に制式採用されています。勿論九二式実包もこの重機関銃に合わせた設計をしてあり、徹甲弾、焼夷弾、曳光弾など各種特殊実包も合わせて開発されました。

2011-09-10 21:52:38
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

こうして鳴り物入りで7.7mm口径の弾薬と機関銃を採用して、実際に戦場に投入してみたんですが……小銃は6.5mmに対して機関銃の口径は7.7mmと違うことで現地は混乱、戦場での弾薬補充で支障をきたしてしまいました。

2011-09-10 21:56:53
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

そこで、三十年式実包を使用する小銃を、重機関銃と同じ口径である7.7mmを使用する小銃に置き換えるための研究が始まり、諸々あって1939(昭和14)年に「九九式短小銃」が採用されました。

2011-09-10 22:01:41
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

あ、ちなみに九九式小銃は短小銃型と長小銃型の2つがあり、主に生産されたのは短小銃型の方でした。

2011-09-10 22:04:29
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

それに、九二式実包では反動が強すぎて撃ちにくいため、弾頭重量を11.8gに、火薬量を2.8gにまで落とした無起縁(リムレス)式弱装弾も小銃と同時に開発されており、弱装弾の方は「九九式実包」として制式採用されています。

2011-09-10 22:10:22
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

まあそんなこんなで開発された7.7mm弾薬とそれを使う小銃は早速生産に乗り出し、本来ならば全軍に渡って7.7mm口径で統一されるはずだったのですが……その最中に運悪く太平洋戦線が勃発、九九式小銃と三八式小銃が混在したまま大戦争に駆り出される事態となってしまいます。

2011-09-10 22:13:37
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

しかも弱装弾である九九式実包とフルサイズである九二式実包が問題で、セミリムドである旧式の九二式実包は九二式重機関銃でしか使えず、九九式小銃で無理に使うと銃が壊れてしまうという有様。九九式実包の方は重機関銃でも使えるものの、給弾不良や照尺距離が狂うなどの不具合を起こしました。

2011-09-10 22:18:21
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

更に実は九二式実包の薬莢後尾の起縁部分が無起縁式に変更されている「九七式実包」も採用されており、こちらも九二式重機などでは問題はないものの、小銃で使うと反動が強すぎ、銃を痛めてしまいました。

2011-09-10 22:20:39
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ちょっとこんがらがってくると思うのでまとめると、要は太平洋戦争時、旧軍では小銃弾だけで「6.5mm弾」「7.7mmセミリムド弾」「7.7mmリムレス弾(機関銃用)」「7.7mmリムレス弾(弱装弾)」の4種類が混在していたわけです。

2011-09-10 22:22:44
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

……すごいでしょ?これで補給に支障をきたすなという方が無理な相談です。

2011-09-10 22:23:36
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

まあそんなわけで、旧軍は突発的な大戦により二種類の口径と4種類の銃弾を持って戦いに駆り出されることとなり、補給の混乱は現地の根性によって何とかするという、突飛な戦い方を強いられることとなったのでした。

2011-09-10 22:27:44
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

………なんか小銃の話というよりは小銃弾の話になったなぁ……まあいいかぁ。

2011-09-10 22:28:17
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ちなみに一般的に言われる「6.5mm弾は威力が足りない」ですが、それはあくまで対物に対しての威力であり、対人の威力ではないんです。

2011-09-10 22:29:59
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ぼろ太さんが先ほど、小銃弾の威力に関するデータを見やすいグラフにして私に送ってくださったんですが、7.92mm×33クルツ弾(世界最初に使われたアサルトライフル「StG44」で使われる弾薬)と比べてもかなり差があることが分かります。http://t.co/uBEbXQ2

2011-09-10 22:33:07
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プルフェイド・リュパール @purufeido

@Nyarlathotep_44 なんだかんだでフルサイズのライフルですしねえ。当時は歩兵銃といえばその手のやつだから相対的に弱いんでしょうけど。

2011-09-10 22:37:00
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

ちなみに5.56mmNATO弾の弾頭エネルギーが1,767 Jということを考えると、弾頭エネルギーが2,615Jもある三十年式実包の威力がいかほどのものなのか分かりやすいと思います。

2011-09-10 22:37:44
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

口径6.5mmである三十年式実包はあくまでフルサイズのライフル弾であり、その威力に疑問を持ったのは対物威力で、対人威力では無い!というのは知っていただけると幸いですね。

2011-09-10 22:42:19
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

@purufeido そうですね、対抗する米英軍が7.62mmサイズの小銃弾を採用していたから、それよりは相対的に弱いという程度にすぎませんね。

2011-09-10 22:43:45
這い寄る混沌@おえかき練習ちう @Nyarlathotep_44

とまあ、ちょっと話がgdgdになってきたところで今日の小話は終了したいと思いまする。

2011-09-10 22:44:34