音声作品制作「これってバイノーラル収録がいいの？モノラル収録がいいの？」に対するお話

誠樹ふぁん/まさきふぁん @phan_work

【バイノーラル収録】の方が良いか【通常マイク】（モノラル収録）の方がいいか、教えて欲しい…といったお問い合わせや、「どういう指示をしたらいいか教えて欲しい」といったお問い合わせが増えたため、これからちょっとずつまとめ記事を更新します。興味のある方だけ読んで下さい。

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結論から言うと、「慣れてない人はモノラル収録にしよう」という感想が強めで、「編集方法や基本情報をきちんと学んでから制作しよう」がスタートライン。全てをスタジオ収録や外注にするにしても、「バイノーラル収録って実際何なの」がわかってないと、ズレた注文をしやすくなってしまう。

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最近はほとんど無いのですが、「頭の上から話しかけてくる」「股間の方にいるので下側で収録して欲しい」といった指示が入っていたりするのですが、「上下」の指示であり、ステレオの場合、「左右」の表現しかできないので、「上っぽい」だったり「なんか音がこもってる」というような表現になります。

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たまにスタジオにある魔法陣。斜め前や斜め後ろ。なんなら上下も番号が貼ってある…とかあるんですが、ものすごーーーぃ細かな動きを声優さんがしたとしても、視聴者の環境は【右と左】だけで、上下を表現できる収録方法、環境じゃない（厳密には微妙に違う/詳細は後で載せる） pic.twitter.com/QkkHlh9n2U

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感じ取れる（取りやすい）変化として 右・左：遠距離・中距離・近距離（囁き） 中央：顔前・遠距離（中距離と遠距離に関しては、違いを感じにくい/声が小さいとか大きいくらい） くらいで、【止まっている状態】で斜め前…とかは正直わからんかなぁ…という感想。

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じゃぁなんで斜め前とか斜め後ろとかあるん？て所なのだけど、斜め前から右耳元に【移動しながら】はめちゃくちゃ効果的で、「あ、動いてる」を感じられる。「動きながら」を取り入れると、凄く収録方法が活きるんだけど、ここが慣れていないと凄く難しいところで。声優さんも台本制作する人もね。

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声優としての難しさは【移動しながら】というのは「不要な音（ノイズ）が出てしまうかもしれない」という状況で、例えば、片手に紙の台本を持っているとしたら、紙がカサッと揺れる音が入ってしまうかもしれないし（だから最近はタブレットの人が多いと思う）、移動中の足音や服の音が入るかもしれない

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何ならヘッドホンのコードの音とかも入るし… それらを気をつけながらも、演技も集中しなければならないので、座って収録ができるモノラルの収録と違って、【動きながら音を立てないようにしつつ、演技にも集中する】という凄くしんどい難しい技術を当たり前にできないといけない…というのがある。

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スタジオだったり宅録だったりするけれども、共通して難しい部分としては、【耳元での囁き】といった使用方法がとても多く、マイクに直接息がかかる（何ならかける）というようなシーンが多い関係で、湿気対策が大変で、閉め切った防音室で何十分もそれをやってると、最悪マイクがお亡くなりに。

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普通のマイク（モノラル）と違って、最低でも３０万程度。KU100（モアイ顔のアレ）だと１００万なので、機材の扱いに慎重にならないといけないのもあるし、換気休憩を頻繁に入れたり、機材のお手入れとかも大変で、収録時間（スタジオ借り時間）自体が長くなり、制作費がモノラルよりも確実に高くなる

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少し話を戻して、台本制作が大変…という話なのですが、【動きを取り入れると効果的】と言ったように、【キャラクターが自然に動く台本の制作】が必要になってくる。というのも、台本ができてから「右耳」「左耳」とか入れるのは簡単だけれど、【不自然で不必要な動き】が明らかに多くなってしまう。

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別に何の理由もないのに右に動き、何の理由もないのに距離を詰めたり離れたりする。右耳だけだとつまらないから左耳に動く。……これは効果的とは言えないし、「ただバイノーラルにしたかっただけ」という音声にしか仕上がらない。実際、残念だけれど、こういうのが多いし、こうなってしまう原因がある

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・人気があるからバイノーラル収録にしてみただけ ・バイノーラル収録を前提にした台本制作ではない（普通に書いたのを後でバイノーラル化している） ・バイノーラル収録とは何か知らんけど台本を書いてる（効果的な使い方ができない） 最終的に「なんか人気あるからバイノーラルにしとこ」がデカい。

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実際、何度かアンケートを取ったり、最近の販売傾向等を見ると、モノラルの作品は売れづらく、売れる物に関しても、販売価格を抑えなければならない…というのがある。逆に、キャラクターが意味のない動きをしていたとしても、バイノーラル収録である…ということで、販売価格を上げたり、DLが増えたり

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モノラル収録の方が制作費は抑えられるけれど、実際販売数はあまり増えず、バイノーラル収録の方が制作費は高いものの、販売数も多い（※多くなりやすい）という結果があるので、「よくわからんけどバイノーラルなら売れるやろ」になりやすい…というのは正直なところある。制作側もしやすい。

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なので、台本を送ってきて「これってバイノーラルとモノラルどっちがいいですかね？」と言われたら、 「台本としてはバイノーラルである必要性はないし、モノラルの方がいいと思うけど、売りたいならバイノーラルに」 というような返事をするしかない…というのが現状。

誠樹ふぁん/まさきふぁん @phan_work

時々囁くシーンがある…程度であれば、モノラルで収録して、編集でステレオにする…というので制作費を抑えることはできるし、それでも充分効果的だと言えるけど、【全編バイノーラル収録】というのが売りになり、それがないと売れづらい…となってしまうと、効果的かどうか…とかはどうでもいいよね

誠樹ふぁん/まさきふぁん @phan_work

なので、「いいものを作るためにバイノーラルにしました」ではなくて、「バイノーラルにしないと売れないから仕方なくバイノーラルに」が最近の悲しい現状で、謎の動きをするヒロインが多すぎるのは、この辺りが原因かなぁ…と思う。右耳にいたのに突然左耳に移動するとか瞬間移動しすぎやろ能力者か…