”見たくない表現に触れない権利”は存在しない。すでに司法で否定されていた。平裕介弁護士の解説。
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「月曜日のたわわ」全面広告が日本経済新聞に「不安を吹き飛ばし、元気になってもらうため」(コメントあり) natalie.mu/comic/news/472… pic.twitter.com/gh3Kk19YaP
2022-04-04 12:25:07”見たくない表現に触れない権利”は、すでに司法で否定されていました。
弁護士(東京弁護士会所属/2008年~)。研究者→researchmap.jp/7000001277。大学・ロースクールで行政法等の授業を担当(非常勤)。ツイート等は個人的見解で、所属団体・関係団体とは無関係です。ブログ→yusuketaira.hatenablog.com
記事では「見たくない表現に触れない権利」をメディアが守っていない点を問題視しているが、法的には、市営地下鉄の列車内における商業宣伝放送に違法性がないとした最高裁判例が想起される 「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは? huffingtonpost.jp/entry/story_jp…
2022-04-09 12:13:01最高裁判所第三小法廷昭和63年12月20日判決集民155号377頁・商業宣伝放送差止等請求事件の伊藤正己裁判官の補足意見は「他者から自己の欲しない刺戟によつて心の静穏を害されない利益」について憲法の観点から検討を加えている。 courts.go.jp/app/hanrei_jp/…
2022-04-09 12:13:02(同補足意見を引用) 他者から自己の欲しない刺戟によつて心の静穏を害されない利益は、人格的利益として現代社会において重要なものであり、これを包括的な人権としての幸福追求権(憲法一三条)に含まれると解することもできないものではないけれども、 →
2022-04-09 12:14:45これを精神的自由権の一つとして憲法上優越的地位を有するものとすることは適当ではないと考える。それは、社会に存在する他の利益との調整が図られなければならず、個人の人格にかかわる被侵害利益としての重要性を勘案しつつも、侵害行為の態様との相関関係において違法な侵害であるかどうかを判断→
2022-04-09 12:14:46しなければならず、プライバシーの利益の側からみるときには、対立する利益(そこには経済的自由権も当然含まれる。)との較量にたつて、その侵害を受忍しなければならないこともありうるからである。この相関関係を判断するためには、侵害行為の具体的な態様について検討を行うことが必要となる。
2022-04-09 12:14:46以上が伊藤裁判官の補足意見の重要部分だが、これに照らすと、「見たくない表現に触れない」という利益は、常に経済的な自由を含む諸権利・利益に優越するものではない、ということが分かる。法的には、個別具体的な比較衡量を踏まえず、一方の利益だけが常に優先される、ということにはならない。
2022-04-09 12:20:06平成30年司法試験の論文答案を採点した試験委員のコメント(採点実感・法務省HP)も、「不快なものを見たくないとか,…およそあるものを見たくないという感情の保護…を当然のように制約目的として肯定…する答案」は、NGだ、と注意していますね ↓は2021年の関連ツイートです twitter.com/YusukeTaira/st…
2022-04-09 14:10:41「不快なものを見たくないとか,…およそあるものを見たくないという感情の保護それ自体を当然のように制約目的として肯定…する答案が目についた。この種の利益保護を制約目的として認めることについて,検討ないし一定の留保が必要であるとの意識を持ってもらいたかった」(平成30年司法試験採点実感) pic.twitter.com/El8q2L0ALq
2021-12-18 08:57:351000RT、1500いいね!有難うございます 同じく「表現の自由」関連の告知です。私がいま担当している映画等の芸術表現助成の補助金の裁判のこともぜひ知ってください↓ (拙稿)映画「宮本から君へ」助成金不交付裁判・東京高裁判決の問題点と 表現の自由の「将来」のための闘い jicl.jp/hitokoto/backn… pic.twitter.com/vXWjXiQBBK
2022-04-09 16:30:38地裁は、専門家組織の芸術的観点に基づく交付内定判断を尊重すべきとし、一人の俳優の不祥事だけを理由とする補助金全額の不交付決定は「違法」だと判断しましたが、高裁は真逆の判断をしました 私たちは、クラファン(CALL4)を開始しました。皆様よろしくお願いいたします! call4.jp/info.php?type=…
2022-04-09 16:33:33左が補助金不交付決定を違法とした東京地裁判決の一部、右が逆に適法とした東京高裁判決の一部です 高裁は、専門家組織が芸術性が高いと認めても「国民の理解」が得られない限り、文化芸術と無関係の抽象的な理由による官僚的判断を支持してしまいました。高裁は、「国民の理解」を言い訳にしています pic.twitter.com/CrIJEovnI4
2022-04-09 17:15:35このような非専門的・非芸術的・抽象的な(具体的なリスクのない)「公益」なる概念を理由とする官僚的判断が、いとも簡単に「適法」とされるようでは、市民の「表現の自由」(憲法21条1項)や「文化的な…生活を営む権利」(25条1項)が実質的に保障されている国とはいえません。原告は上告して争っています
2022-04-09 17:15:36高裁判決が確定すれば、映画のみならず他の芸術(例えば美術)への補助金も、さらには学問研究の助成金(科研費等)についても、当該芸術作品等を全く見てもいない人による「あーそれに税金使うのは何となくダメかもね」というアンケートが一定数集まりさえすれば、表現者を萎縮させることが可能となります pic.twitter.com/THCAwNYqxb
2022-04-09 17:25:30宮藤官九郎さんの週刊文春の連載いまなんつった?の「この映像は……」(2019年11月14日号)↓でも、この「宮本から君へ」への補助金(助成金)不交付の事件が取り上げられています。これは本当に正当な評価だと思います 東京地裁もこの宮藤さんと基本的に同じ考え方で、不交付決定を「違法」としています pic.twitter.com/0DYevva4b7
2022-04-09 17:34:06違法適法の問題ではなく、自主規制の適否の問題にすぎないという意見もありますが、これも危険です。「オタク」が許しても「世間が許さない」という論法がまかり通る社会になります 特定の表現内容を「非国民」だとして(政府ではなく)「世間が許さない」とする社会を最も切望しているのは、権力者です pic.twitter.com/45T9ER3osF
2022-04-09 21:32:35①「オタク」が許しても「世間が許さない」性表現漫画の広告(不特定多数人が見る)はNGだ ②「サヨク」が許しても「世間が許さない」反戦漫画は図書館から排除しろ ③「現代美術好き」が許しても「世間が許さない」芸術祭の補助金は出すな 便利な論法です。政府は「世間」を理由にやりたい放題できる
2022-04-09 21:43:09(太宰治『人間失格』から引用↓) 「…お前の、女道楽もこのへんでよすんだね。これ以上は、世間が、ゆるさないからな」 世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。……そう言われて、ふと、 「世間というのは、君じゃないか」
2022-04-09 21:53:16このように《役人の本心は補助金を申請した団体の表現内容(政府批判等)が気にくわないだけなのに、それを秘し「世間」のせいにしてその団体には補助金を出さない》という手法は、卑怯ですが、裁判所も乗っかってしまうくらい巧妙です しかし、太宰もいうように「世間」とは役人の「主観」にすぎません
2022-04-09 23:24:53前記東京高裁判決は、文化芸術の公的助成について専門的観点を軽視しても適法だと裁判所が行政にお墨付きを与えてしまっていて、強い萎縮効果を生む問題判決です 文化芸術以外の分野、特に科研費など学術関係の補助金にも悪影響が及ぶでしょう。例えば、↓の拙稿の例のように jicl.jp/hitokoto/backn… pic.twitter.com/WykJEsDVN9
2022-04-09 23:30:382,000RT、3,500いいね!ありがとうございます! 宣伝になりますが、法学セミナー804号(2022年1月号)2~8頁に、助成金不交付処分を「違法」とした前記東京地裁判決(映画「宮本から君へ」助成金不交付訴訟・東京地判令和3年6月21日)に関する拙稿↓が掲載されています。皆様よろしくお願いいたします! pic.twitter.com/fBhFBcc24p
2022-04-10 00:07:44