-
NikkeiScience
- 18943
- 105
- 7
- 11

主に生きものや生物学の話を書くお仕事をしています。ぎりぎり平成生まれ。昔は少しだけ植物の研究をしてました。2023年4月から,日経サイエンス編集長。

日経サイエンス5月号「辛い!の科学」の発売期間中、スパイスにまつわるいろんな科学の小話を #辛いの科学 で呟いていこうと思います~。
2022-03-26 17:59:261日目

その1 激辛のトウガラシを丸かじりしたら辛いのは当たり前。でも、かじり方次第では平気で食べられます。 トウガラシの辛み成分カプサイシンは、種のくっついている「胎座」と呼ぶ部位に集中して蓄えられています。つまり、胎座を外して残りの部分を食べれば辛みをほとんど感じません。 #辛いの科学 pic.twitter.com/zCU4m7aD71
2022-03-26 18:11:50


…本当にそうなの?というわけで食べてみました。この写真のトウガラシは上野のアジア料理向け食材の店で購入したもので、「すごく辛いよ!」という店のおばちゃんのお墨付き。 でも、写真左側の胎座を含まない部分はほとんど辛みを感じず、ピーマンみたいでした。「でもこれ実はもともと #辛いの科学 pic.twitter.com/9tF9p7dlSE
2022-03-26 18:21:27

辛くないトウガラシの可能性もあるな…?」と思い、念のため右側を一かじりしたところ…めっちゃ辛い!! たしかに同じ果実の中で部位ごとに全然辛さが異なりました。生のトウガラシを手に入れる機会がありましたら、ぜひおうちでお試しを…! #辛いの科学
2022-03-26 18:26:562日目

今日の #辛いの科学。 パプリカは甘くてみずみずしく、日本でイメージされる鷹の爪のようなトウガラシとは無縁の野菜にみえます。でも実は、生物学的な種としてはパプリカと鷹の爪は同じなのです。どちらも「Capsicum annuum」という種です。 pic.twitter.com/nQmhoUcxAI
2022-03-27 19:36:16

同じ種なのに、辛さがここまで異なるのはなぜなのか。トウガラシの辛み成分であるカプサイシンの合成には、Pun1という遺伝子が関わっています(’pun’は辛い味を意味する英語pungentの頭文字)。パプリカではこのPun1遺伝子が壊れて機能を失っているため、辛くないのです。
2022-03-27 19:38:16
Pun1が壊れたトウガラシの個体が初めて見つかったのは16世紀の米国だと言われているそう。トウガラシの種子は紀元前の遺跡からも出土しますが、パプリカの歴史はそれより新しいんですね。
2022-03-27 19:39:03
ちなみに、数多あるトウガラシの品種のうち、どれを「パプリカ」と呼ぶかは国や地域によって差があります。日本ではいわゆる「甘いパプリカ」だけをパプリカと呼ぶことが多いですが、国によっては「辛いパプリカ」もあったりします。…ややこしや!
2022-03-27 19:39:363日目

今日の #辛いの科学。 トウガラシはトマトやピーマンと同じナス科の仲間です。果実の見た目は異なりますが、花を見ればそのことがわかります。江戸時代の人々もそれを見抜いていたのか、佐藤信淵が1827年に著した経済書『経済要録』第4巻で、トウガラシが「辣茄」と書かれていたことがわかります。 pic.twitter.com/1HRzKjC0qO
2022-03-28 20:02:38


辣茄、つまり辛いナスという意味でしょうか。写真をみると、トウガラシは「蕃椒」という書き方もあったようです。異民族や外国を指す「蕃」と香辛料を指す「椒」の組み合わせですね。これらの文献の原本は国立国会図書館のデジタルコレクション(dl.ndl.go.jp)で見られます。
2022-03-28 20:03:27
ちなみに、トウガラシと同様海外から伝わったトマトは「蕃茄」と書かれていました。海外からきたナスということですね。他に「蕃柿」という書き方もあったようです。果実の甘味を柿に見立てたのでしょうか? 漢字表記から、当時その野菜がどのように捉えられていたのかが見えてくるのが面白いです。
2022-03-28 20:05:114日目

今日の #辛いの科学 は辛みセンサーTRPV1について。 トウガラシを食べると,辛み成分のカプサイシンが舌の内部にまで浸透し,舌の感覚神経の細胞表面にあるTRPV1という辛みセンサーにくっつきます。TRPV1の反応を脳は痛みとして受け止めるため,辛いものを食べると舌がヒリヒリするわけです。 pic.twitter.com/9ENVihvt39
2022-03-29 23:22:01

ところがこのTRPV1は,カプサイシンだけでなく,43度以上の熱にさらされた時も同じように反応します。つまり,辛い料理を食べた後のヒリヒリ感と,温泉などでかなり熱めのお風呂に入った時の肌の痛みは同じ感覚,ということです。 このほかに,酸の刺激もTRPV1の反応を引き起こすトリガーになります。
2022-03-29 23:23:57
また,ちょっと変わったところではタランチュラの毒(!)もTRPV1に作用します。トウガラシとタランチュラという全く別の生き物が,どちらも我が身を守るためにTRPV1を標的にした物質をこしらえているわけですね...!
2022-03-29 23:26:265日目

今日の #辛いの科学 はワサビの辛さについて。 昨日トウガラシのカプサイシン刺激を受け取る辛みセンサーTRPV1の話をしましたが,実はワサビの辛さに対応するセンサーが別に存在しています。 ワサビの辛み成分はアリルイソチオシアネートといって,この成分に反応するのが辛みセンサー「TRPA1」です。 pic.twitter.com/bk7VfLp3TT
2022-03-30 21:34:50

TRPA1はTRPV1と構造が非常に似たタンパク質で,感覚神経の細胞表面に存在します。そして,同一の神経細胞の表面でTRPV1とTRPA1は働きます。TRPA1がワサビの成分に反応すると,カプサイシンにTRPV1が反応した時と同じく,痛みの刺激が脳に伝わります。ワサビのツーンとした痛みの正体はこれです。
2022-03-30 21:36:47
ところでトウガラシは舌がヒリヒリしますが,ワサビのツーンとした痛みは鼻にきます。これはアリルイソチオシアネートが揮発性の高い物質で,鼻腔へ抜けた成分が鼻の感覚神経のTRPA1で感知されるためです。香辛料ごとに反応する辛みセンサーが違うことで,スパイスの様々な刺激を楽しめるわけですね。
2022-03-30 21:37:266日目

今日の #辛いの科学 はクールな辛みセンサーTRPM8について! トウガラシのカプサイシンに反応する辛みセンサーTRPV1(トリップ・ブイワン)は43度以上の熱にも反応します。これと真逆の性質を示すのが,TRPM8という辛みセンサーです。こちらは25〜28度以下の低温に反応して脳に刺激を伝えますが,それ pic.twitter.com/V4SqjBRIlq
2022-03-31 23:12:04