営利的表現・営業広告の自由も表現の自由が根拠です。平裕介弁護士の解説、その2。

平裕介弁護士”営利広告の自由・営利的表現は、広く規制されて良いみたいな主張は、営利広告も”表現の自由”として保障される現在の通説とは整合しません”
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まとめ 低価値や営利目的、TPO。どれも表現の自由の問題です。平裕介弁護士が解説する、”月曜日のたわわ”広告と表現の自由。 ””見たくない表現に触れない権利”は存在しない。すでに司法で否定されていた。平裕介弁護士の解説。”から続く、平裕介弁護士の表現の自由についての解説です。 10197 pv 347 19 users 14

平 裕介 @YusukeTaira

営利的表現・営業広告の自由も、「表現の自由」が根拠だと解されています 例えば、渡辺康行ほか『憲法Ⅰ 基本権』(日本評論社、2016年)228頁〔宍戸常寿〕は、「営利広告」の自由につき「現在の学説は…国民の知る権利に奉仕するものとして、憲法21条によって保護されると解している」と解説しています pic.twitter.com/kPi87BGTeS

2022-04-23 01:39:29
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平 裕介 @YusukeTaira

また、法人(例えば、株式会社日本経済新聞社)にも、上記の営利広告(営利的言論、営利的表現)の自由が、憲法21条1項の「表現の自由」を根拠として保障されると解されます(渋谷秀樹『憲法起案演習』(弘文堂、2017年)55頁↓と同じ見解です) 法人にも、営利広告の自由が憲法21条1項で認められています pic.twitter.com/eD9ff7W7Yk

2022-04-23 01:47:29
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平 裕介 @YusukeTaira

なお、以下は、上記のツイートと関連するツイート・ツリーです(他の論点についても言及しています) twitter.com/YusukeTaira/st…

2022-04-23 01:57:23
平 裕介 Yusuke TAIRA @YusukeTaira

①低価値表現にすぎない、営利的広告にすぎない、②ゾーニング・TPOの話にすぎない、③自主規制にすぎない、④私人間効力の話にすぎない、⑤職場でのハラスメントと同じ、等の理由付けから、 日経の広告掲載・不掲載の問題は「表現の自由」の問題ではない、と主張するツイートが多く、正直驚いています

2022-04-11 22:30:33
平 裕介 @YusukeTaira

以上のとおり株式会社日本経済新聞社の営利広告の自由は憲法21条1項の表現の自由の規定で保障されると解されるわけですが、これに加え、広告を出す個人や法人の営利(・意見)広告の自由もまた憲法21条1項の表現の自由の規定で保障されると解されています。つまり2つの表現の自由の問題だということです

2022-04-23 02:04:45
平 裕介 @YusukeTaira

さらにいえば、日経新聞が講談社の営利広告(全面広告)を掲載した事案でいうと、①株式会社日本経済新聞社、②株式会社講談社のそれぞれの営利広告の自由(憲法21条1項)が問題となり、③コミック作者の表現の自由(憲法21条1項)も関連して問題になります。本件は、三重に「表現の自由」の問題だといえます

2022-04-23 02:13:49
平 裕介 @YusukeTaira

企業の広告の自由の根拠が営業の自由(憲法22条1項)だとする見解はあるが、企業の広告の自由が基本的人権ではないと言い切る(今日においてもそのような立場しかないと言う)大学の研究者がいるようで驚いています。政治学は同じ法学部の一学科だったりもするのでその授業を履修している学生が心配ですね

2022-04-23 10:50:39
平 裕介 @YusukeTaira

当該政治学者は、「基本的人権」ではないと述べたのですが、にもかかわらず、多方面から批判されたからか、かなり時間が経ってから、「憲法論」を述べたものではないなどと言い出したようです…。見たくないものを見ない「権利」といっておいて「法律論ではない」と言ったケースと同じで、呆れますね

2022-04-23 11:44:42
平 裕介 @YusukeTaira

しかし、こんなあり得ない言い訳が許される社会になれば、専門家の権威は地に落ちますし学生も疑ってしまい授業を真剣に聴かなくなりますね… 一切断りなく、基本的人権を憲法論のそれとは異なる意味で使ったなどと後で(都合が悪くなってから)言い訳されても意味不明ですし、正直に訂正すべきでしょう

2022-04-23 11:49:08
平 裕介 @YusukeTaira

憲法論や法律論ではない話をさも憲法論や法律論を述べたかのように述べ、聴衆を騙し、炎上させておいて、炎上&延焼を達成後に、しれっと、いやあれは実は憲法論や法律論ではなかった、私は間違っていない、誤解した聴衆が悪い、などというのは、「誤解したのなら遺憾だ」という政治家答弁と同じですね

2022-04-23 11:54:07
平 裕介 @YusukeTaira

複数の学説がある論点で、特定の説(例れば法人の人権否定説)を採るのはもちろん自由です。しかし、当該研究者の政治的・党派的な立場・信条を優先し、自分の採る見解(通説でもない)が唯一絶対の立場・説であるかのように述べ、権威を利用して素人を誤導し、バレたら法律論ではないと言うのは酷すぎます

2022-04-23 13:24:37
平 裕介 @YusukeTaira

誤解されている方がいらっしゃるようなので、一応補足しておきますが、法人の人権否定説は、憲法学説における通説ではありません。法学部生以外の学部であっても、憲法(人権)の授業では普通に学ぶ(べき)事項の1つです ↓ 芦部信喜著・高橋和之補訂『憲法 第七版』(岩波書店、2019年)89頁。 pic.twitter.com/QHg9rs66v0

2022-04-23 13:53:32
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平 裕介 @YusukeTaira

営利広告の自由が「見たくない表現に触れない権利」に劣後するなどという旨のご主張があるようですが、市営地下鉄の列車内の商業宣伝放送に違法性がないとした最高裁判例(囚われの聴衆事件判決)くらいはご確認された方が良いと思いますよ… ↓は、関連ツイート・ツリーです twitter.com/YusukeTaira/st…

2022-04-23 15:31:52
平 裕介 Yusuke TAIRA @YusukeTaira

記事では「見たくない表現に触れない権利」をメディアが守っていない点を問題視しているが、法的には、市営地下鉄の列車内における商業宣伝放送に違法性がないとした最高裁判例が想起される 「月曜日のたわわ」全面広告を日経新聞が掲載。専門家が指摘する3つの問題点とは? huffingtonpost.jp/entry/story_jp…

2022-04-09 12:13:01

まとめ ”見たくない表現に触れない権利”は存在しない。すでに司法で否定されていた。平裕介弁護士の解説。 ”月曜日のたわわ”広告を批判するハフポストは、記事で”見たくない表現に触れない権利”を持ち出してますが、それはすでに司法によって明確に否定されていました。 50835 pv 1823 99 users 37

平 裕介 @YusukeTaira

①企業広告に表現の自由があると「違憲状態となる」との迷言や、②「判例や解説と現状との間」に「大きなズレ」が生じるから「政策実施の立場」からはこのズレを修正すべき旨の主張があるようです しかし、判例・学説(特に通説)、ひいては憲法尊重擁護義務を無視・軽視する、非常に危険な言説ですね… pic.twitter.com/QvfABxtrd9

2022-04-25 17:33:50
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平 裕介 @YusukeTaira

このような考えを持った“専門家”が政府や政党等の諮問機関やアドバイザー等になると、憲法や立憲主義が軽視され、ひいては違憲な法令が作られやすくなってしまいます 違憲な法令を裁判で覆すのは長い時間と費用がかかりますので違憲判決を勝ち取れたとしても市民や企業にとっては大ダメージとなります

2022-04-25 17:33:50
平 裕介 @YusukeTaira

政策評価法(行政機関が行う政策の評価に関する法律)2条2項によると、「政策」とは「行政機関が、その任務又は所掌事務の範囲内において、一定の行政目的を実現するために企画及び立案をする行政上の…方針、方策」等ですが、この政策の実施も憲法尊重擁護義務遵守が大前提です elaws.e-gov.go.jp/document?lawid… pic.twitter.com/rHgdM2hMSu

2022-04-25 17:46:39
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平 裕介 @YusukeTaira

行政法学でも、憲法は「第一にあげるべき」法源であり(橋本博之『現代行政法』(岩波書店、2017)7頁)、「基本的人権の尊重」が市民に対する行政活動の「基本原理」とされています 憲法学で積み重ねられてきた通説とは全く異なる珍説を行政の「政策」として「実施」すれば、立憲主義は崩壊するでしょう pic.twitter.com/ctdZPpMHGv

2022-04-25 18:06:00
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平 裕介 @YusukeTaira

また、行政学の観点からも、従来の判例学説(特に通説)を無視・軽視することになる「政策実施」なる言説には大きな問題があります 政策(:「行政活動のプログラム」(森田朗『新版 現代の行政第2版』(第一法規、2022)154頁))の執行活動の要件として、(当然ですが)適法性があげられています(同182頁) pic.twitter.com/biCw6Afu6H

2022-04-25 18:14:36
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平 裕介 @YusukeTaira

↑の政策の執行要件である適法性という点ですが、前提として、橋本教授の上記教科書にもあるとおり憲法・基本的人権に適合するように法律を解釈して適用することが求められます。ですから、政策の実施や変更等に際して人権を無視・軽視してよいことにはならず、従来の判例通説を踏まえる必要があります

2022-04-25 18:20:54
平 裕介 @YusukeTaira

従来判例や通説と「現状」(政策実施を主導する者が考える主観的な「現状」)との間に「ズレ」があるとき、「政策実施の立場」を理由に、別の異説を採用するという手法は、立憲民主党など野党が主張してきた政府の集団的自衛権の行使に係る「解釈改憲」と同様の手法です 与野党問わずおかしいと言うべき

2022-04-25 18:31:12
平 裕介 @YusukeTaira

当然ですが、上記のツイート・ツリーば、判例や通説を盲信すべきだなどと述べるものではありません 「政策実施の立場から」などという曖昧かつ非立憲的なマジックワードを使い、判例や通説の論拠・理由を考慮・重視することなく、行政の政策を独善的に進めて良いともみられる言説を批判するものです

2022-04-25 18:52:20
平 裕介 @YusukeTaira

(2つ上のツイートの誤記訂正) (誤)立憲民主党など野党が主張  ↓ (正)立憲民主党など野党が批判

2022-04-25 20:14:28
平 裕介 @YusukeTaira

民主政の過程と関係ないから営利広告の自由・営利的表現は、広く規制されて良いみたいな主張は、現在の通説(営利広告も憲法21条1項の「表現の自由」として保障されるとする見解)とは整合しないものですね 長谷部恭男「営利広告の規制」同『続・Interactive 憲法』(有斐閣、2011年)73頁以下(77頁) ↓ pic.twitter.com/0Pt2H6GgaX

2022-04-27 12:08:10
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平 裕介 @YusukeTaira

営利広告が憲法21条1項の「表現の自由」として保障される説が今日の通説であることついては、毛利透ほか『憲法Ⅱ 人権 第3版』(有斐閣、2022年)244頁。 同頁は「営利的表現に対しても表現の自由の保障を及ぼすべきだとの考えが一般的である」と解説しています。「一般的」とは「通説」とほぼ同じです

2022-04-27 12:18:57