「著作権法は模倣(パクリ)を一律で禁止している訳ではありません」弁護士によるトレパクについての法律解説がわかりやすい

勉強になります
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福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

弁護士(日本及びニューヨーク)。骨董通り法律事務所 for the Arts 代表。日大芸術学部・神戸大学大学院・iUで客員教授。内閣知財本部・文化庁・デジタルアーカイブ学会・JPASNで委員や理事。 近著『18歳の著作権入門』(ちくま新書)『エンタテインメント法実務』(弘文堂・編著)ほか。優しくしてください。

kottolaw.com

福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

ネット上では断続的に、「トレパク」が話題になりますね。 時には人の絵などをトレースしたか否かだけに議論が集中して、トレースなら即アウト、してなければセーフ、という論調も見られます。念のために書いておくと、少なくとも著作権にはそんなルールはありません。

2022-05-03 09:21:37
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

この点、著作権法は模倣(パクリ)を一律で禁止している訳ではありません。 なぜなら、情報の模倣やそれに基づく創造、つまり二次創作は、人間と社会の発展にとって、かなり本質的な条件だからです。とはいえ、あまりにパクリ天国では困る。

2022-05-03 09:24:52
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

そこで著作権が設けたバランスラインが、特徴的な表現の無断借用は禁止、その元にあるアイディアや、ありふれた表現の借用は自由、というものです。 トレースしても、それが個性的な表現の借用に至らなければセーフですし、トレースしなくても、個性的な表現を借りていれば原則はアウトです。

2022-05-03 09:27:48
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

ただ、著作権は、どんなに似ていても偶然の一致は許すのですね。トレースが確認できれば偶然の一致はありえないので、「偶然じゃない」と言うためにトレースの存在を示すことはあります。 その場合でも、例えば誰が描いてもそうなりそうな、特徴のない描線をトレースしただけなら法的にはセーフです。

2022-05-03 09:31:17
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

作風の模倣(パスティッシュ)が問題になることもありますね。 これは(狭い意味では)個別の作品ではなく、ある人の絵柄・モチーフの傾向やテクニックを真似たようなケースで、多くの場合はアイディアの借用レベルだと考えられます。よって著作権的にはセーフの場合も多いでしょう。

2022-05-03 09:33:13
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

この辺り、自分も好きで色々なところで書いてきましたが、最近では裁判所がどの程度をアイディアの類似(セーフ)と考えて、どの程度だと表現の類似(アウト)と判断したか、アートの視点から裁判になったケースを整理した岡本弁護士のコラムが割と面白いです。 kottolaw.com/column/210227.…

2022-05-03 09:37:09
リンク コラム 現代アートの見方・捉え方 - 『アイデア』と『表現』の境界線 岡本健太郎|コラム | 骨董通り法律事務所 For the Arts ピカソは、マティスの作風をイメージして「黄色い髪の女」を描き、マティスは、ピカソの同作品を思って「夢」を描いたと言われています。2人の巨匠の関係性を示すエピソー 16 users 39
福井健策 FUKUI, Kensaku @fukuikensaku

なお、これは法的なルールの話ですので、ある個人やコミュニティがそれとは別の意見を持つのは全く自由です。 ただ、紹介した「アイディア/表現」などは世界的に議論の積み重ねがあって発達してきたルールですから、少なくとも「なぜ人々はそれが良いと考えたのか」は理解して、議論したいですね。

2022-05-03 09:43:21

福井先生の著書

エンタテインメント法実務

福井 健策,小林 利明,骨董通り法律事務所

正しく理解しておきたい

局長 @tatami_shino

このバランスラインは同人関係者男女問わず暗唱できるようになっておきたい。140字できれいにまとまってる。 twitter.com/fukuikensaku/s…

2022-05-03 11:35:21
cozy_garbage @CozyGarbage

イラストなら最初は好きなキャラ描くとこから始まるし、音楽なら好きな曲を弾く。 芸術は模倣から始まる。 twitter.com/fukuikensaku/s…

2022-05-03 10:42:37

過去にはこんな判例も

井二かける@新作よろしく @k_ibuta

博士イラスト事件がセーフで、スイカ写真事件がアウトという時点で、もはや素人感覚とは真逆。その判例を知っていると、なかなか他人の作品を著作権侵害だと断じることはできないと思う twitter.com/fukuikensaku/s…

2022-05-03 10:26:43
リンク 駒沢公園行政書士事務所日記 幼児向け教育ビデオキャラクター事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜 : 駒沢公園行政書士事務所日記 最高裁判所HP 知的財産裁判例集より 幼児向け教育ビデオキャラクター事件 ★東京地裁平成20.7.4平成18(ワ)16899損害賠償請求事件PDF 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸 裁判官 平田直人 裁判官 柵木澄子 ---------------- 1 user
リンク 特許業務法人 三枝国際特許事務所[大阪・東京] SAEGUSA & Partners [Osaka,Tokyo,Japan] タウンページ・キャラクター事件 みずみずしいスイカ 事件 | 特許業務法人 三枝国際特許事務所[大阪・東京] SAEGUSA & Partners [Osaka,Tokyo,Japan] 【著作権:資料】 参考裁判例■タウンページ・キャラクター事件(東京地判平成11年12月21日)-類似性否定この事件では、被告の作成したタウンページ・キャラクターの図柄と原告作成のキャラクターの図柄との類似性が問題となりましたが、東京地裁は、以下のように述べ著作権侵害を否定する判断を下しました。「X漫画のキャラクターとY漫画のキャラクターは、本を擬人化したという点では共通しているが、それ自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではない。」■みずみずしいスイカ 事件(東京高判平成13年6月21日)-類 1
hiro @hiro

ダンスのフリには著作権が適用されないという話を思い出した twitter.com/fukuikensaku/s…

2022-05-03 09:54:35

※原則的には振り付けは著作物ではあるものの、すべての振り付けが著作物とは限らないということのようです

リンク 著作権のネタ帳 踊るにも許諾が必要?!ダンスの著作権 昨今では学校の授業にも取り入れられている「ダンス」。いわゆる「盆踊り」のような、みんで楽しく踊れるものから、プロによるとても難度の高いハイレベルなものまで様々ありますが、そのダンスを魅力的なものにしている要因として、実際 3 users