転生したらミミックだったが誰も開けに来ない件（積み）【1】

帽子男 @alkali_acid

転生したらミミックだったが誰も開けに来ない件。 （積み）

帽子男 @alkali_acid

壁を二百回叩かないと開かない隠し部屋とかに安置されていた。

帽子男 @alkali_acid

毎日天井の虫を数えている。最近は床のコケの成長観察を始めた。

帽子男 @alkali_acid

時々メンタルをいわして薬飲んで運転して事故った前世のことを思い出している。警察と親族には申し訳なかった気持ちになる。

帽子男 @alkali_acid

じっくり眺めるとおもむきがある隠し部屋だなって。

帽子男 @alkali_acid

寝てた。よく寝る。

帽子男 @alkali_acid

天井の虫は四種類ぐらいいることがわかった。だんだん見分けがつくようになってきた。

帽子男 @alkali_acid

赤、黒、斑、縞。斑は飛ぶ。縞は黒を食べる。

帽子男 @alkali_acid

苔は部屋の湿気がわずかに増す時期には花？蒴柄？を咲かせ、胞子を拡げる。 なかなか見ごたえがある。 虫には有毒らしくよく死ぬ。そこから苔がまた広がる。しかし黒だけは影響を受けないらしく、いつも苔を食べている。

帽子男 @alkali_acid

苔の花からは不思議な匂いがする。

帽子男 @alkali_acid

壁そのものにも模様があるのに気付いた。自分が入っている宝箱？の内側にも同じ模様がある。

帽子男 @alkali_acid

ひまなので壁の模様を覚える。薄れているがそばには絵もあるようだ。かつては顔料で多彩に描かれていたのだろう。じっと見ていればなんだか判別がつくような気もする。

帽子男 @alkali_acid

そういえば赤い虫は鳴くようだ。はじめはかさこそという足音と区別がつかなかったが、だんだん聞き分けられるようになってきた。

帽子男 @alkali_acid

赤い虫の鳴き声は、交尾の季節に互いを呼び合うためのものと、ほかの虫、特に縞の虫の接近を警戒する際に立てる音がある。 どちらも驚くほど長く、複雑で抑揚がある。まるで歌のようだ。

帽子男 @alkali_acid

歌なのかもしれない。

帽子男 @alkali_acid

よくは解らない。模様調べに戻る。 壁の模様は同じ形が繰り返しあらわれる。ひょっとしたら文字か、少なくとも記号なのかもしれない。

帽子男 @alkali_acid

文字のような気がしてきた。

帽子男 @alkali_acid

違うかも。

帽子男 @alkali_acid

また寝てた。

帽子男 @alkali_acid

取引先のお偉いさんがキレちらかす夢を見ていた。 今にして思うとあんなことでどうしてメンタルをいわせたんだろか。

帽子男 @alkali_acid

でももう取り返しはつかない。 ところで、ひょっとしたら模様の横にある絵は人間を描いているのかもしれない。棒を掲げたヒゲのおじさんだとすれば納得がゆく。

帽子男 @alkali_acid

笛を持った髪の長い女の子かも。

帽子男 @alkali_acid

斑の虫が増えた。すごい数だ。四百三十七匹いる。 燐光を発して隠し部屋の中を飛び回っている。おかげで色々なものがはっきり見えた。 壁の模様のそばにあるのは絵ではなく埋め込まれた髑髏だ。髪やヒゲのように見えたのは染みだ。あと棒か笛に見えたのは大腿骨だ。

帽子男 @alkali_acid

模様も虫食いか何かかも。箱の内側にあるのもそうかも。

帽子男 @alkali_acid

違う。やはり女の子だ。あの染みは顔料か何かだ。 壁に埋め込んだ髑髏の上に顔料で生前の顔立ちや衣装を重ねて塗ったのだ。それが剥げてきたに違いない。 大腿骨でできた笛だ。穴が開いている。