【新しい渦巻】福間健二 #k2fact329

福間健二 @acasaazul

川べりを走り、風景の一部、メロディーの一部となって、泳ぐ鳥の家族、自転車の天使たち、橋の上のジーンズ、存在感の勝負では負けるだろうが、友だちが何人も死んで川のむこうの影が合図していると思ったりするのはぼくだ。生きている自分。久しぶりに走って息があらい。（新しい渦巻１） #k2fact329

福間健二 @acasaazul

人差し指で描いた模様がだんだん爬虫類になって、呼びだしわけでもない雲が動く。寝そべって結論的な紫の円形がぐるぐるまわるのを感じていた。彼方に新宿のビルが見える。無傷、承服できない。立ってズボンについた灰をはらう。退化した脚を思いだそうとする動きだった。（新しい渦巻２） #k2fact329

福間健二 @acasaazul

小さな花たちが結果であるよりも原因になろうとして押しひらくドア。ゼロ地点から旅してきてそのなかになにか発見したい人とどうすれちがうか。ぼくの体験。ぼくの告白。それもこれもどうでもいい五月になり、手で土に穴を掘る。忘れかけていた体の大事な動きのひとつだ。（新しい渦巻３） #k2fact329

福間健二 @acasaazul

スパゲッティーと具の合わせ方、まちがえた。ミルクをいれる容器、まちがえた。その二つの失敗の認め方、たぶんもっとまちがえて、また川に。同じように逃げきてきた人がいる。急に歌いだした。サンタ・ルチア、銀色のイタリア語だ。私の舟に乗ってください。乗りますよ！（新しい渦巻４）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

なつかしい罠。自由、という広い海に出た。深い孤独に突き落とされている。割らなければ食べられない果実。歩き抜けない体温の距離。あと四分。目を向ける場所次第で。いや、目は閉じて。心の廊下を通ることをそのまま言う。手と手。足裏と足裏。生きるよろこびのために。（新しい渦巻５）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

分岐点。ほとんど規則的に黒い滴が、ということは、チェックできない穴があるのだ。突き刺す役割の、でも道化的詩人。両手の指がちゃんと五本あって何に間に合わない。そっちこそ何を見てニヤリとしたのかと質問で返された。知るのが遅れた事実の、機能しない先端どうしだ。（新しい渦巻６）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

子どもの日の、翌日。共感の天才はリトル・ドッグだけじゃない。どんな動物にもなれる、人をからかう機械を避けて、新しい渦巻に踏み込む。順番は逆だとしても、空間と時間の切れ目と継ぎ目、そこになにかがもう存在しないことに興奮して。夢を見る。裂ける。同じことだ。（新しい渦巻７）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

雲と山のあいだの光る目。なにか吸い込まれるというなら、ぶりかえす足首の痛みか、近くにいつも何人かいる卑劣な存在への動揺とかだ。この週末も救いたいものは変わらないが、夢を飛びちらして踊る男が帰ってきた。おみやげは。内海の島のレモンと感動する能力だってさ。（新しい渦巻８）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

季節という機械。その一部となって、いま何が欲しいとか言う。死でも解放でもない海に出るまでの、川の流れ。反論、洪水の前。このジャージャーメンは肉みそがうまく絡まない。考える。古典的には星たちとともにだが、行動制限なしの大型連休、遠くには行かなかったきみと。（新しい渦巻９）#k2fact329

福間健二 @acasaazul

小さな工場の小さな手。ここにある、ということ。シャツ、また裏を着ていて注意される。それよりも、きみの瞳に何世紀も気づかなかった。レモンよりも空豆に感動する。まだ乾いていない傷口に和音を使う。三つの芽に負けないために。裂ける直前の、体温は三十六度五分。（新しい渦巻10）#k2fact329