京都府立植物園の蝶類の種多様性を島の生物地理学の考えを適用して評価する

京都府立植物園を含むエリアで「北山エリア再開発計画」が取りざたされている。ここでは生物多様性の現況の一つとして、府立植物園で2015年以降に確認したチョウ類の種数を写真も交えてお伝えする。
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目  次

言っておきたいこと
比較対象
セセリチョウ類
アゲハチョウ類
シロチョウ類
シジミチョウ類
テングチョウ類
マダラチョウ類
タテハチョウ類
ジャノメチョウ類
チョウ相のまとめ
島の生物地理学の視点からの評価
「花とみどり」から「花・みどり・生き物」へ


言っておきたいこと


植物園は園芸植物や希少植物の保存・情報発信を主たる目的とする施設である。同時に、地域の生物多様性ホットゾーンとして、自然的環境や小動物・昆虫およびその生息場所を保全・創造する場としての潜在的機能を有する施設でもある。


京都府立植物園は1924年に開園され、もうすぐ100周年を迎える日本でトップレベルの植物園であり、面積24haの敷地にテーマ別に約12000種類、約12万本の植物が植えられている(京都府HP、Wikipedia)。


京都府は京都府総合計画で定めた「北山『文化と憩い』の交流構想」の実現に向け、「北山エリア整備基本計画」や「京都府立植物園100周年未来構想」を策定しており、府立植物園の現敷地を蚕食するように商業施設やイベント用地が増設されようとしているようだ(京都府HP、https://www.pref.kyoto.jp/kyoto_sports/news/documents/02_eriaseibi.pdf


今回のツイートのまとめでは、京都府立植物園で2015年以降に36種のチョウ類を確認した。これは、京都府から記録のあるチョウ類109種の33%、里山環境がかろうじて維持されていた1980年代末の京都西賀茂の種数の77%に相当する。植物だけでなく、小動物や昆虫を含めた生物多様性を保全するために植物園を賢く活用すること(wise use)を京都府立植物園の未来構想の重要な柱に据えるべきだ。

なお、京都府立植物園の野鳥の種多様性については、https://togetter.com/li/1894667 をご覧いただきたい。

京都府立植物園で出会った植物たちについては、https://togetter.com/li/1907330 をご覧いただきたい。


比較対象


植物園のチョウ類の種多様性を評価するため、京都府全域で1964年9月30日までに記録されている種数(白水 隆,1965,日本産蝶類府県島嶼別分布表,原色図鑑日本の蝶,北隆館)と京都西賀茂の里山で記録された種数(今井長兵衛,1995,京都西賀茂における都市化とチョウ相の変化,環動昆7: 119-133 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeez/7/3/7_119/_article/-char/ja/)を用いた。
なお、1930年代と1950年代の西賀茂のチョウ類データは森下正明(1967)京都近郊における蝶の季節分布,自然,生態学的研究(森下・吉良編),95-132,中央公論社,https://reference.morisita.or.jp/papers.html の論文13 に示されている。


セセリチョウ類

今井長兵衛 @medanjin

京都府立植物園で確認したセセリチョウ類:ダイミョウセセリ(写真左上)、キマダラセセリ(写真右上)、チャバネセセリ(写真左下)、イチモンジセセリ(写真右下)の4種。 pic.twitter.com/hf2Qhd0hWr

2022-05-17 13:57:56
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上から ダイミョウセセリ:2019年7月5日
    キマダラセセリ:1998年8月19日、大阪市鶴見緑地
    チャバネセセリ:2019年9月27日
    イチモンジセセリ:1997年9月9日、大阪鶴見緑地

今井長兵衛 @medanjin

1964年9月30日現在で京都府から記録のあるセセリチョウ類は14種(白水, 1965)。そのうち京都市北区西賀茂の里山で見られたのは1960年代半ば8種、1980年代末7種(今井, 1995)。

2022-05-17 14:01:19
今井長兵衛 @medanjin

近年の西賀茂に生息すると推定されるセセリチョウ類7種のうち近年の京都府立植物園で確認できなかったのは、ヒメキマダラセセリ、コチャバネセセリ、オオチャバネセセリの3種。従って、京都府立植物園では京都西賀茂の里山に生息すると推定されるセセリチョウ類の57%が確認されていることになる。

2022-05-18 14:53:02


アゲハチョウ類

今井長兵衛 @medanjin

京都府立植物園へ。母の日で入園料無料ということもあり、人出が多かった。アゲハチョウ類はアゲハ、アオスジアゲハ、ジャコウアゲハ(写真左)、カラスアゲハ、クロアゲハ、モンキアゲハ(写真右)、ナガサキアゲハの7種を確認。 pic.twitter.com/bQPrqdN4FQ

2022-05-08 16:59:02
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上  ジャコウアゲハ:2022年5月8日
下  モンキアゲハ:2022年5月8日

今井長兵衛 @medanjin

京都府立植物園では、上記7種のアゲハチョウ類にキアゲハを加えた8種を確認。1964年9月30日現在で京都府から記録のあるアゲハチョウ類は11種(白水, 1965)、そのうち京都市の平地でも見られたのは6種?。モンキアゲハは1970年代半ば、ナガサキアゲハは1990年代半ばに京都市の平地まで分布を拡大。 pic.twitter.com/FX7hohBRGg

2022-05-11 12:08:10
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   キアゲハ:2019年10月3日

今井長兵衛 @medanjin

近年の京都府に生息し京都府立植物園では見られないアゲハチョウ類は、ギフチョウ、ウスバシロチョウ、オナガアゲハ、ミヤマカラスアゲハの4種と外来種ホソオチョウ(木津川)で、在来4種は山地性である。したがって、京都府立植物園では京都市の平地に生息するアゲハチョウ類8種の全てが見られる。

2022-05-12 17:49:28


シロチョウ類

今井長兵衛 @medanjin

京都府立植物園で確認したシロチョウ類:モンシロチョウ(写真左上)、ツマキチョウ(写真右上)、キチョウ(写真左下)、モンキチョウ(写真右下)の4種。 pic.twitter.com/OW3UvLM1tx

2022-05-14 16:45:38
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上から モンシロチョウ:2021年6月20日、京都静原
    ツマキチョウ:2007年5月12日、京都西賀茂
    キタキチョウ:2019年9月27日
    モンキチョウ:2021年4月2日、京都賀茂川