えっちなことをしないと出られない部屋に閉じ込められたが、自ら心臓を止めて仮死状態に陥ることで脱出を図る話
私の名前は流 雹子(16)! 一流シェフを目指す16歳! 今は一流シェフを目指して私立お料理キングダム学園に通っている16歳! みんなからはヒッチコック【狂犬料理人】って呼ばれている 一人で山へバーベキューへ行った帰り、私は怪しい人たちに拉致されてしまった
2022-06-05 07:37:40「ガアアアアアアアア」 拉致されるのに夢中になっていた私は、背後から近付いてくるもう一人の男に気が付かなかった 殴られた私は気絶した そして目が覚めると私は…… 個室に閉じ込められていた!
2022-06-05 07:46:54「ググ……ちくしょうこの私が拉致されるとは」 未だ朦朧とした意識の中、とにかく現状把握を試みる 無機質なコンクリートの壁。一畳くらいの大きさ。いうならネカフェの個室だ 「ヒッチコック!?なんで貴方がここに」 個室にはもう一人の料理人がいた
2022-06-05 08:05:15室内にいたもう一人の料理人。彼女の名前は鳥藤フォージ 私とは私立お料理キングダム学園で常に潰しあっている16歳だ。右ストレートが重い キノコ料理が得意で、みんなからはトリュフォー【茸御膳王】と呼ばれている
2022-06-05 08:10:34「トリュフォー!?なぜお前がここに!?」 「それはこっちのセリフですわ!私は海釣りへ行ってたらいきなり拉致されたのですわ!!」 いきなり、個室の壁に設置されたテレビ画面が起動して校長先生の顔が映し出された 『お目覚めカネ諸君』 「「校長先生!!」」 『教頭先生だ』
2022-06-05 16:03:53テレビ画面に映し出された校長先生はアーヤ・ゲドコクリコ校長先生という名前だ。みんなからは吾郎と呼ばれている。 『今日は仲の悪いお二人に親交を重ねて貰うためにこうして集まってもらいましてよ。オホホホホ』 吾郎校長は左手に持ったビニール袋から薔薇の華を撒き散らしながら高らかに笑い上げた
2022-06-05 16:08:20「どうやらこれは校長先生の卑怯な罠のようだな。トリュフォー、ここは一時停戦して校長を仕留めにかかろうぜ」 「そうですわ。犬猿の仲といえど、呉越同舟すればこの個室からも脱出できるはず」 個室には鍵がかかっており、狭い室内で二人はうまく身動きが取れなかった。
2022-06-05 16:11:43テレビ画面の校長はひとしきり薔薇を撒き散らし終えると、ビールサーバーからビールを注ぎ始めた。 「ラオホビールというのは燻製ビールのことでございましてよ。アタクシは富士高原の複雑な味よりも本場シュレンケルラのシンプルな薫香が好き。あなた方にもそうあって欲しくてよオホホホホ」
2022-06-05 16:16:11テレビ画面の校長はひとしきりビールサーバーを飲み干すと、グラスの中に撒き散らした薔薇を入れ始めた 「あなた方にはこのラオホビールのように仲良くなって貰うわ。そう、この部屋はエッチなことをしないと出られない部屋なのよ」 私とトリュフォーは同時にテレビ画面にストレートを叩き込んだ
2022-06-05 16:19:52「ヒッチコックさん、どうやらここはどちらか一方しか出られない部屋のようですわ」 「そのようだな。お前との因縁もこれまでのようだ」 その時、部屋の鍵が開いて校長先生が入ってきた 「話はまだ終わってなくてよ」 「「校長先生!!どうしてここに」」 「教頭先生だ」
2022-06-05 16:21:38私は校長先生の胸ぐらを掴もうとしたが、校長先生は登山服を着ていた。 「厚手だな、くそっ」 「繰り返しますが、この部屋はえっちなことをしないと出られない部屋よ。部屋をよくご覧なさい」 言われてみれば、確かにこの部屋は変だ。ネカフェのような個室にも関わらず、部屋には絵が飾られている
2022-06-05 16:25:55「ヒッチコックさん。この部屋、変ですわ」 「ああ、この部屋に飾られているのはモディリアーニの絵だぜ」 なんと部屋の中にはモディリアーニの絵が飾られていたのだ。モディリアーニといえば近代絵画の巨匠の一人。その絵には高い価値がつく 「お二人とも、その絵は真作よ」 「「えっ!?」」
2022-06-05 16:28:40モディリアーニの絵といえば高い価値がつく。つまり、この絵を売れば、億万長者だ 「一体なぜ」 吾郎校長先生は私たちの困惑する顔を見て笑い始めた 「ヒッチコックさん、トリュフォーさん、部屋に鍵は掛かっていなくてよ!」 「「えっ!?」」 トリュフォーが校長を蹴り飛ばすと、勢いで扉が開いた
2022-06-05 16:33:06扉の向こうは荒天吹き荒ぶ山の中だった 「お気づきになって!?ここはアタクシの用意した山小屋(場所は伏す)。あなた方がえっちなことをすれば救助ヘリで助けてあげましょう」 「この悪天候の中でモディリアーニの絵を無事に運ぶなんて不可能だ」 「そんなことをしたら絵の価値が著しく下がりますわ」
2022-06-05 16:41:24つまり、私とトリュフォーがえっちなことをすれば、救助ヘリを強奪してモディリアーニの絵を無事に運べる しかし、えっちなことをしなければ、悪天候の中でモディリアーニを持って無理に下山し、傷ついた絵の価値は下がって売れなくなるだろう これはまさしく、えっちなことをしないと出られない部屋だ
2022-06-05 16:43:35「さあ、金に汚いあなた方なら必ずえっちなことをするはず。アタクシの前で早く親睦を深めなさい」 次の瞬間、トリュフォーが自らの心臓に右ストレートを叩き込んだ 「ヒッチコックさんと親睦を深めるくらいなら死んだ方がマシよ」 トリュフォーは血を吐きながらも凄絶な笑みを浮かべた
2022-06-05 16:53:13「そんな。この子たちの覚悟を甘く見ていた」 予想外の事態に校長は狼狽えていた。しかし、私は気づいた。トリュフォーはクレイジーでキレた奴だが、決して無謀ではない。これは自ら仮死状態に陥ることで敢えて救助を呼ばせようとする作戦なのだ
2022-06-05 16:55:15「その覚悟気に入ったぜトリュフォー。このヒッチコックもご一緒仕る」 いうが早いか、私の方も心臓に寸勁を撃ち込んだ。私は完全に心臓を破壊されて気絶した。 「そんな……これが二人の愛だとでもいうの!?」 発狂した校長は血溜まりの中で伏せる二人の生徒をバーストで撮りまくった
2022-06-05 16:58:04血溜まりの花々が美しい湖面の景色を咲かせる。その只中で、瞳孔を開いて転がるヒッチコックの死体を見つめたトリュフォーもまた目と口から大量の血を流しながら悔しそうに微笑む 「貴方と心中なんてごめんでしてよ……」 スマホの容量がパンパンになった校長は登山姿のままでスマホで救助を呼んだ
2022-06-05 17:01:09「ちょっとレスキュー!早く来て頂戴!レスキュー!」 しかし、美しいブラッディリリーの花々でいっぱいになったスマホはマトモに機能しなかった。ストリーミングサービスに加入してなかったのだ 「何よりこの携帯。全然役に立たないじゃない」 発狂した校長はその場にスマホを打ち捨てた
2022-06-05 17:03:19スマホを捨てた校長は山小屋に放火すると、登山姿のままで下山を始めた 「ひいいいいこんな悪天候の中での下山なんて無理でしてよ」 既にラオホビールをサーバー一台分飲み干した校長の精神力は既に限界だった 「こうなったら山小屋で一晩過ごすしかない」 その時、山小屋が爆発した
2022-06-05 17:06:55「嫌ああああああ」 爆発に巻き込まれたヒッチコックとトリュフォーの死体が山の斜面を滑落していく 「モディリアーニが……」 千鳥足の校長は足を滑らせて山の斜面を落ちていった 「ああああ〜!」
2022-06-05 17:08:53