世阿弥と佐渡と二ッ岩マミゾウの話、ネタだしまとめ

タイトルの通りの備忘録。
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銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

俺東方二次設定として、佐渡に配流された世阿弥をマミゾウさんが庇護して京都に戻れるように算段を付けるのと引き換えに、忘れられ消えてしまうかもしれない妖怪のことを演目に残して欲しいと持ちかけたというやつがあり、ぼんやりと考えてるだけだったのを、先日犬王を観てから真面目に考えはじめた。

2022-06-27 23:42:23
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

世阿弥が佐渡でなにを残したかについては、主に『金島書』と娘婿の金春禅竹に向けて送った手紙というのがある。 世阿弥の佐渡配流と『金島書』 | CiNii Research cir.nii.ac.jp/crid/139057217… #CiNii

2022-06-27 23:45:10
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

で、世阿弥が京都に戻れたかどうかというのは確たる証拠がなく諸説ありの状態。いちおう、世阿弥の晩年にその名前で寺に記録があったりするので、証拠が無いわけでもないらしい。これらは今、論文の複写依頼をかけているのでいったん保留。

2022-06-27 23:48:28
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

世阿弥の佐渡配流を命じた六代将軍の足利義教が暗殺されているのと、世代的に重なりのある一休宗純が世阿弥の京都復帰に力を貸したというような話がある。(伝説の域を出ないが

2022-06-27 23:53:15
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

犬王道阿弥と世阿弥/観阿弥の関係性はこうした研究があり、これに先日観た犬王のイメージを重ねていく。 道阿弥から世阿弥が受け継いでいるものがあり、幽玄のかたちの影響にもかなり大きな割合がありそうではある。 犬王道阿弥の研究 | CiNii Research cir.nii.ac.jp/crid/105056428… #CiNii

2022-06-27 23:56:12
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

実際のところ自分程度の知識では能の思想や表現にまで食い込んだ話はできないと思うので、能に描かれる妖怪達のかたちの有り様というふわっとしたところに描写をもっていきたい。

2022-06-27 23:58:17
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

能に登場する妖怪はどれも本人ではなく、死後の霊である。世阿弥(に限らないが)演目はほとんど、本編というべき妖怪の活躍物語が終わったあとのアフター、それもバッドエンド後の二次創作である。

2022-06-27 23:59:41
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

妖怪というものが記録に残されることで簡単に変容、変質してしまうものなので、世阿弥は妖怪のかたちそのものを書き残すのはすべきことではないと考えた。ゆえの本人ではない死後の霊を用いてその無念や思い残しを語らせるというかたちに演目をつくった、という方向に持っていきたい。

2022-06-28 00:01:39
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

妖怪本人をえがくのではなく、その演目の向こうに妖怪の姿を想起させる、幽玄のあらわしかたをした。その演目のつくりかたこそ、世阿弥が若き日に観た父観阿弥、そして犬王道阿弥たちの影響によるものであった、という。

2022-06-28 00:04:28
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

この話の続き。もうちょっと二者を絡ませる接点が欲しいなといろいろ考えたけど、能を舞うことと狸の化かしというのはわりと近しいものではないかという結論に至った。 すなわち、自分ではない別のものの様相、振る舞いを行って、相手に自分では無いものと認識してもらうことだ。 twitter.com/domioriha/stat…

2022-06-28 20:59:29
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

世阿弥(に限らず、当時の猿楽を舞っていた者たちの多く)が能楽論として行っていたものとして、観客に期待される通りのタイミングで、期待される振る舞いをすることというのがある。 世阿弥の能楽論における「意表」の意識 | CiNii Research cir.nii.ac.jp/crid/105028267… #CiNii

2022-06-28 21:01:38
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

別のものに化けるということはすなわち、相手が「化けているもの」に期待するとおりの振る舞いをすることだ。 鵺なり鬼なりの姿を演じているとき、演者は観客から鵺っぽい振る舞い、鬼っぽい振る舞いをすることを望まれている。

2022-06-28 21:04:03
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

その上で二者に差異があるとするなら、狸や狐が何者かに化けて相手を化かそうとするときには、相手に期待される振る舞いの他に、化けている自分自身が化けることで成し遂げたい目標というものがある。他者から期待される振る舞いと、自分の目的。そのふたつのすり合わせが狸の化かしだ。

2022-06-28 21:06:06
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

次。金島書は世阿弥が佐渡に滞在している出来事を記したもので、佐渡で成立したか、京都に戻ってきたあとに書き直したかという議論があるらしい。 いずれにせよ、細かい出来事が丁寧に記録されているので、完全に記憶に頼ったものではなく、世阿弥は佐渡にいる間に日常の記録を残していただろう。 twitter.com/domioriha/stat…

2022-06-28 21:09:26
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

いっぽうで世阿弥が金春禅竹に送った手紙には、佐渡はとても田舎で紙もないため、ボロい紙を二枚繋ぎ合わせてこれを書いたが大事に読んでね、という記載がある。 そんな状況の割には、世阿弥はどこかの時点である程度自由に記録のために紙を使える環境があったろうと推測される。

2022-06-28 21:11:17
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

世阿弥の執筆スタンスとして、風姿花伝を何度も書き足したり改稿したりした記録があるらしいし、能の演目についてもおそらく演目として完成させるまでには何度も書き直すという作業をしていただろう。一発書きするまではすべて頭の中で決めるというのはおそらくないはずだ。

2022-06-28 21:13:03
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

とすると、世阿弥に十分な量の記録用紙を提供した人物がいるとしてもいい。 このあたりもマミゾウさんのやったこととして解釈できるんじゃないだろうか。

2022-06-28 21:13:57
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

金島書の奥付は世阿弥が佐渡にいる間に書かれており、仮に後年になって京都で清書したとするなら普通はその書き直した時の年月を記載すると思われるので、たぶん佐渡にいる間に書き上げられている。 金島書はただのメモ書きなどではなく保存/見せることを意図したものでもある。

2022-06-28 21:20:31
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

このあたりは世阿弥は佐渡で死んだという話の論拠でもあるんだが、逆に言うなら自分の後継者になる娘婿との大事なやりとりでも紙の入手に苦労していた状況から、1年でずいぶん状況が変わったということになるはずなので。

2022-06-28 21:21:54
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

最初は、失意のうちに佐渡に流された世阿弥が狸の化かしを知って晩年の境地に至る部分を悟ったみたいな感じにしようと思ったけど、世阿弥の芸能論を読んでると彼はずっと若いときから既に圧倒的な境地におり、しかもそれを言語化して書き残し、秘伝書として伝えるというとんでもないことをやっている。 twitter.com/domioriha/stat…

2022-06-28 21:24:19
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

単純に上手な芸の極みにあるのではなく、敢えて予想外のこと、下手な芸をして「意表をつく」ことが観客の心を掴むには必要であること、それは熟達し習熟の境地になったときにこそ必要なこと、若いうちにはできないことが老いたときにこそできることなど、実に多角的な視点である。

2022-06-28 21:27:00
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

ここまでくると逆にマミゾウさんのほうが世阿弥の芸から化かしを学んだとする方が自然かもしれない。設定上、鎌倉の頃のマミゾウさんは今ほど化け術が得意ではないというのを昔書いたし、この出会いでひとつ殻を破るみたいにするのはちょうどいいかも。

2022-06-28 21:28:17
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

この非風(正しくない演じ方)を少し混ぜることでかえって是風(素晴らしい演じ方)になるという境地は、世阿弥自身も演者が熟達を極め、老境に入ってから行うものであると考えていて、世阿弥が後継者にと想定していた観世元雅はこの境地に至る前に死んでいる。

2022-06-28 21:32:10
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

観世元雅が余命世阿弥のこの劫来風の思想を聞かされ、自分には過ぎたもので身につけずとも口伝を聞いたのみで十分だと述べており、世阿弥はこれを必要なことをしっかりと理解していて偉いと褒めているが、結果的に世阿弥が芸の見出した境地を引き継ぐものが誰もいなかった、という状況はあるだろう。

2022-06-28 21:36:53
銅折葉@3/31(日)東方名華祭E-03 @domioriha

それが即、二ツ岩むじなの化かしとの関係になるわけではないが、二人の似て非なる「他者を演じること」が相互に関係し合ったという描き方はできるんじゃないだろうか。

2022-06-28 21:38:31