専門分野は分子腫瘍学・分子生物学。抗体を活用した研究を行ってきました。腫瘍免疫は重要なテーマなので免疫学も守備範囲。大学で教えています。
数日前に、ナカムラクリニックの中村篤史先生とお話しする機会がありました。先生は逆風にもめげず頑張っておいでです。このツイッターで発信していることを中心に紹介。その時に同席された方がシェディングの被害にあわれているという話をお聞きしましたので、シェデングに関するツイートを開始します
2022-06-25 14:22:50シェディングについていろいろ情報を集めてみましたが、問題はいつまでmRNAが残存するのかということと血液中のスパイクタンパク質の定量が難しいことです。血液中にスパイクタンパク質が放出されることはわかっているのですが、スパイクタンパク質に対する抗体ができると当然結合します。
2022-06-25 14:25:42最初の接種の際には以前に感染した人以外はスパイクに対する抗体はありませんので、抗体が結合していない状態のスパイクタンパク質を定量可能です。抗体を定量しようとする時によく使用するのがサンドイッチELISA法というものですが、この方法では二種類の抗スパイク抗体を使用します。 pic.twitter.com/GCDuhOVvmC
2022-06-25 14:31:17貼り付けた図の抗原というのがスパイクだと考えてください。抗原に抗体が結合してしまうとこの方法では測定不可能。実はこの方法で血液中のスパイクタンパク質を測定する試みを実際に行ったことがありますが、検出できませんでした。そこで血液サンプルを電気泳動してウエスタンブロットでの検出に挑戦
2022-06-25 14:36:15生物屋さんのほとんど経験済みのことと思いますが分野外の方のためにMBL社のサイトを紹介しておきます。このトライアルは感度不足で検出できませんでした。このあたりで実験は断念し論文検索の旅に出ました。 ruo.mbl.co.jp/bio/support/me…
2022-06-25 14:39:29これらの実験を行なっている間に気がついたことがあります。mRNA型生物製剤を接種して2週間もすればスパイクタンパク質の抗体が誘導されますから一回目の接種直後だけしかフリーのスパイクタンパク質は存在しない。ということはmRNA型生物製剤接種後のほとんどの期間は抗体が結合していることになる。
2022-06-25 14:53:19抗体が結合したスパイクタンパク質は不活化されていますので、もしも抗体が結合したものが接種者から放出されても大きな問題にはならないはず。おそらく本命は別の形態でスパイクが放出されているはずと考えました。シェディングの本命は何かということで、文献を探す旅に出ました。今日はここまでです
2022-06-25 14:57:02シェディングに関する発信の二回目です。今回はmRNAの持続時間、スパイクタンパク質の持続時間について考えてみたいと思います。このmRNA型生物製剤の接種が始まった段階では、mRNAは不安定な物質であり細胞内ではすぐ分解されてしまうのだから長期的な副反応など考える必要がないと多くが発言。
2022-07-03 05:01:55いわゆる専門家と呼ばれる方たちは異口同音にこのようなことを主張していました。すぐ壊れてなくなるから安心して接種してくださいと言っていました。もしも細胞に導入されたmRNAが通常のmRNAと同様にすぐ壊れてなくなってしまうのであればシェディングについて議論する余地はなかったことでしょう。
2022-07-03 05:03:01遺伝子情報が細胞内で発現する仕組みは中心命題あるいはセントラルドグマとよばれます。中心命題という大げさな名前がついている理由は、これが分子生物学の中核をなす概念だからです。DNAに記された生命の設計図は最初にmRNAにコピーされ、コピーされた遺伝情報は核から細胞質に移動してそこで翻訳。
2022-07-03 05:04:18翻訳された結果タンパク質が合成されます。細胞内には主要なRNAは三種類あります。転移RNA(tRNA)、リボソームの構成要素であるrRNAそしてmRNAです。タンパク質合成で活躍するのがリボソームと転移RNAです。貼り付けた模式図の緑で示されているのがtRNAです。 pic.twitter.com/fDm3gTBJDk
2022-07-03 05:07:50tRNAは、ひっくり返しただるまのような形で書かれているリボソームと連携して、アミノ酸を運んできて遺伝暗号に従って次々とアミノ酸を連結してタンパク質を合成する反応を行います。tRNAとrRNAは安定にしておく必要があります。タンパク質を合成する反応において重要な役割を担っているからです。
2022-07-03 05:11:00これらの二種類のRNAが不安定だと翻訳反応が途中でストップしてしまい異常なタンパク質ができることになります。この事態を避けるためにtRNAとrRNAは安定化されています。それに対してmRNAは不安定であるべき存在です。mRNAが安定だとタンパク質の合成量のコントロールができなくなるからです。
2022-07-03 05:14:34mRNAが安定で細胞内にずっと存在し続けると延々とタンパク質が合成されることになり細胞が破裂するような事態さえ考えられます。例えば、受精卵から個体ができあがる過程では、必要なタンパク質を必要な時期に必要な量だけ合成しなければならないことがわかっています。
2022-07-03 05:16:47生物が正しく個体を形成し、体の機能が正しく保たれるためには遺伝子発現制御、つまりmRNAの合成量を制御することでタンパク質の生産量を精密に調節しなければなりません。mRNAが安定だとこのしくみが機能しなくなるわけです。今回のmRNA型生物製剤ではどうか。実はこれが大きな問題なのです。
2022-07-03 05:18:54通常であれば不安定のはずのmRNAを安定化したのが今回のmRNA型生物製剤!RNAを構成する4種類の塩基のうち、Uつまりウリジンをシュードウリジン化してあります。それも単なるシュードウリジンではなく1メチル-シュードウリジンを使用しています。1メチルシュードウリジンはtRNAにも含まれています。 pic.twitter.com/z5GoD0JmhC
2022-07-03 05:20:51tRNAの安定性を高めるために一部のウリジンがシュードウリジンを置き換わっています。ここで気がつくのはtRNAでは全てのウリジンがシュードウリジンに置き換わっているわけではないということです。tRNAの模式図を貼り付けておきます。図で、ACGUではない見慣れない記号がシュードウリジンです。 pic.twitter.com/to6SwbqSJE
2022-07-03 05:23:17tRNAを安定化するには部分的にウリジンをシュードウリジンに置換するだけで十分。ところが、mRNA型生物製剤では全てのウリジンが1メチルシュードウリジンに変換されています。そのため、mRNA型生物製剤で細胞内に導入されたmRNAの寿命がどのくらいあるかは全くの未知数です。note.com/hiroshi_arakaw…
2022-07-03 05:25:15荒川先生のNoteを貼り付けておきました。参考になると思います。細胞に導入されたmRNAは完全にシュードウリジン化されていますのでtRNAの例から考えるとかなり長期間細胞内で維持されるものと考えるべきでしょう。細胞分裂が盛んな組織であれば細胞分裂にともなってmRNAは薄まっていくでしょう。
2022-07-03 05:27:43一方で、細胞分裂の頻度が低い組織では安定化されたmRNAはずっと高いレベルに保たれると考えるべき。心筋や神経系の細胞は細胞の代謝回転速度が低いため、心筋炎が重大な副反応として生じることがこれで理解できそうです。神経系へのダメージも同様でしょう。自然の摂理に反する手法を使用している!
2022-07-03 05:29:55mRNA型生物製剤によって、肝臓、副腎、卵巣そして血管内皮細胞などに導入された1メチルシュードウリジン化されたmRNAが長い寿命を持つものと推定できることは理解できたものと思います。mRNA型生物製剤のゲノムのへの組み込みの可能性もあり得ますが、今回はその点については議論しないことにします
2022-07-03 05:31:49このようなことをベースにして話を進めていきますが、問題はmRNAの持続時間およびスパイクタンパク質の持続時間のデータです。最初に出てきたのは4ヶ月という数字です。それはこの論文に出てきます。エクソソームに注目した論文です。jimmunol.org/content/207/10…
2022-07-03 05:34:53この論文ではスパイクタンパク質がエクソソームに含まれる形で血液中に放出され、それは4ヶ月間継続するというものです。エクソソームが何か知りたい方のために東レのサイトを貼り付けておきます。エクソソームは最近注目を集めています。 3d-gene.com/about/article/…
2022-07-03 05:38:20スパイクタンパク質がエクソソームの膜上に存在していることが示されており、さらにそれは接種後4ヶ月にわたって血液で検出できることが書かれています。そのエクソソームでマウスを免疫出来ることも書かれていました。図のBの上の段の右がそのエビデンスです。 pic.twitter.com/0hFlAW9nNs
2022-07-03 05:43:08