鏡の国の王子さま(仮)・現在進行形共同作品(非公式)古い順2

鏡の向こう側にうっかり足を踏み入れたギニュー特戦隊&ザーボン。 彼らが見て、出会ったものとは? 紗羅香とザーボン王子が共に綴り、互いの世界を『鏡』を介して共有する小説。 実況ツイート式でお届けします。 続きを読む
1
@saraka4237

『ザーボン王子』が甘い香りに誘われてやって来た場所は、キッチンだった。中から音が聞こえるが、何をしているのか見当がつかない。気になってドアを開けてみた。 #sarass2

2011-09-21 00:55:42
@saraka4237

そこには先ほど救護室にいたギニューが、ガスバーナーを手にしていた。「何をしているんだ?」突然聞こえてきた声にギニューは驚いてドアの方を見たが、入ってきたのが『ザーボン王子』だと知ると、「何だ?もうおやつの催促か?」と、呆れた顔で言った。 #sarass2

2011-09-21 00:56:33
@saraka4237

「今日は王子の好きなクリームブリュレだ。もう少しで出来るから、ティールームで待ってろ」そう言うとギニューは、パティシエの顔に戻った。調理台の上には、白い容器に入ったブリュレが置いてあった。「ティ・・・ルーム?」『ザーボン王子』は、おうむ返しに言った。 #sarass2

2011-09-21 00:57:08
@saraka4237

「おい・・・まだ寝ぼけているのか?」溜め息を吐くギニューだが、怒っているわけではなかった。冷凍庫から箱を取り出すと、ブリュレと共にトレイに乗せた。「仕方がない。一緒に行くか」ギニューは『ザーボン王子』を促すと、キッチンを出た。 #sarass2

2011-09-21 00:57:35
@saraka4237

ティールームに着くと、ギニューは作業を再開した。運んできたブリュレの上に砂糖を散らし、ガスバーナーで焦がし始めた。カラメルの甘い香りが辺りに漂う。「こんなもんか」バーナーの火を止め、冷凍庫から出してきた箱を開けた。中身はアイスクリームだった。 #sarass2

2011-09-21 00:58:37
@saraka4237

ギニューはアイスクリームをすくい、そのまま表面がカリッと焼けたブリュレに乗せた。熱でアイスが溶け出す。そして、最後にブルーベリーソースをかけた。「よし、出来たぞ!」仕上がったクリームブリュレを『ザーボン王子』の前に差し出した。 #sarass2

2011-09-21 00:59:17
@saraka4237

「熱いうちに食え」『ザーボン王子』は、言われるがままにブリュレを口に運んだ。冷たいアイスがブルーベリーの酸味と混ざり、ブリュレの濃厚な甘さを引き立てる。「美味い!」一言叫ぶと、あっという間に平らげてしまった。その食べっぷりに、少々驚くギニュー。 #sarass2

2011-09-21 01:00:05
@saraka4237

「そんなに腹が減っていたのか?まだあるが、食うか?」奇妙な違和感を覚えつつ、ギニューは新たなブリュレを用意した。 #sarass2

2011-09-21 01:00:47
@Z0211_2

テーブルに置かれたふんわり甘い香りで誘うブリュレを再び口に運び始めた『ザーボン王子』。 いつもはゆっくりと口に運び、一口一口を楽しむように食しているのにどうしたことか。 「どうした?朝食はしっかり食べただろう?何か激しいスポーツでもしたのか?」  #sarass2

2011-09-24 22:54:45
@Z0211_2

紅茶を注ぎながら、ギニューは尋ねてみた。 「・・・・・・。」 そっとスプーンを置いた『ザーボン王子』は、ボーっとした様子で一言も発しない。 「おい・・・王子?」 ギニューは再び声をかける。 #sarass2

2011-09-24 22:55:18
@Z0211_2

「・・・・わから・・ない・・・」 「え?」 俯き、か細く消え入りそうな声で呟いた『ザーボン王子』に聞き返したギニュー。 「ギニュー・・・私は今まで何をしていたのだ・・・?わからないのだ・・・。」 #sarass2

2011-09-24 22:55:37
@Z0211_2

確かに様子はおかしいと思っていた。 いつもの元気な様子は無く、表情も乏しい。 「・・・・・記憶喪失・・・なのか・・・?」 ギニューは恐る恐る尋ねた。 #sarass2

2011-09-24 22:55:44
@saraka4237

「記憶喪失・・・」『ザーボン王子』は繰り返して言った。何も思い出せないと言うことは、そういうことなのだろう。「では、私は『ザーボン王子』と言う名前なのだな?「違うだろ。『王子』は名前ではない。お前は『ザーボン』だ」ギニューは、真面目な顔で言った。 #sarass2

2011-09-24 23:59:21
@saraka4237

「本当に何も覚えていないのか?」言われて、ザーボンは改めて考えてみる。「そう言えば・・・」「ん?どうした?」「さっき食べたあれ・・・どこかで味わったことがあるような・・・」「思い出したか!?」ギニューは身を乗り出して訊く。「無いような・・・」「どっちなんだ!?」 #sarass2

2011-09-25 00:00:03
@saraka4237

ザーボンの返答にギニューは落胆するが、ふと、あることを思い出した。「それより王子。今朝からグルドを探していたのではないか?」と言ってから、更に付け加えた。「記憶が無いのに言っても仕方がないが、会えば何か思い出すかも知れんぞ?」 #sarass2

2011-09-25 20:59:32
@Z0211_2

「グルド・・・?」 ザーボンはギニューの口から出た【グルド】という単語にピクッと反応を示した。 その一瞬の反応を見逃さなかったギニューは、ザーボンの両肩を力強くガシッと掴み、 「なんだ?!なにか思い出したのか?!」 #sarass2

2011-09-25 22:23:06
@Z0211_2

少しの沈黙の後、静かに 「・・・・・いや・・・分からないな・・・」 ザーボンは俯き、ゆっくりと首を振りながら呟いた。 「・・・そうか。まあ、ゆっくりと思い出せばいい。」 ギニューは掴んでいた両肩を離すと、笑顔でそう言った。 ほんの少し寂しそうに・・・。 #sarass2

2011-09-25 22:23:17
@Z0211_2

そのギニューの様子を見てなのか、 「・・・が、がんばって思い出すから・・・!!」 と、ザーボンは両手に握り拳を作りながら力強く発した。 #sarass2

2011-09-25 22:23:31
@Z0211_2

「ああ・・・焦らなくていい。・・・あっ!だが、このことは皆に言ってはいかんぞ?メディアに出たら、最悪、この星が大混乱を起こすからな?」 「で、では・・・ど、どうしたら・・・いいのだ?」 #sarass2

2011-09-25 22:23:41
@Z0211_2

「ずっと一緒に行動するわけにはいかんからな・・・そうだ!通信機を渡す。分からないことがあれば、それでこっそり連絡してこい。」 そう言うと、ギニューは早々にティールームを去り、通信機を取りに別の部屋へ向かった。 #sarass2

2011-09-25 22:24:05
@Z0211_2

一人になったザーボンは今、自分がいるティールームの心地良さを初めて感じた。 座っている椅子から立ち上がり、オープンテラスになっている方へと歩みを進めると同時に穏やかな風を受ける。 空に鳥が鳴き声を上げて舞っている。 「平和だな・・・」 小さな声で何気なく呟いた。 #sarass2

2011-09-25 22:24:15
@Z0211_2

しばらく外の空気を吸っていると、隣にはいつの間にかギニューが戻って来ていた。 「王子。お前、ここからの眺めが大好きだったんだ。ティールームに来ると必ずって言っていいほど、ここに来てたと思うぜ?」 その言葉で、穏やかな表情だったザーボンの表情がまた少し曇った。 #sarass2

2011-09-25 22:24:25
@Z0211_2

「大丈夫だ。手掛かりがあれば、突然思い出すだろうよ。」 笑顔で励ますギニューは、手に持っていた箱から小さい丸型のものを取り出し、ザーボンに手渡した。 「これが、さっき話した【通信機】だ。襟の後ろにこうやって着けるんだ。」 #sarass2

2011-09-25 22:24:35
@Z0211_2

ギニューは自分の通信機を見せながら、使用方法を説明する。 「このボタンを押しながら話せば、オレにお前の声が届く。小声で構わない。このマイクは性能がいいからな。」 ザーボンはギニューに渡された通信機を早速、襟の裏側に装着した。 #sarass2

2011-09-25 22:24:47
@Z0211_2

「じゃあ、オレはいろいろやることがあるからな。お前は城の敷地内から出なければ、どこをうろついても大丈夫だ。しばらく散歩でもしてくれ。じゃあな。」 ギニューはザーボンに告げると、足早にどこかへ消えていった。 #sarass2

2011-09-25 22:24:56
1 ・・ 4 次へ