実在したアイヌ語人名を創作物(フィクション)で使ってはいけません

なんか「同名を付ける(被る)事は避けた」って話と「実在人名を用いる際は創作(フィクション)ではなく史実に基づく話(ドキュメンタリー)でなくてはならない」という話が別々に存在してるのを、都合の良い部分だけかいつまんで合わせてないです? この論が成立すると特に誰として参照したワケではないアイヌが絡んだ創作物のアイヌのキャラクター名称と同じ人名がいたという証明のしようがない事象で差し替えを要求とか発生しかねないと思うのですがね…。
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丹菊逸治 @itangiku

実在したアイヌ語人名を創作物(フィクション)で使ってはいけません。それはアイヌ伝統文化では絶対に許されない行為です。

2022-07-24 11:12:49
丹菊逸治 @itangiku

アイヌ社会においては過去の話ではなく、現在までそれは同じです。アイヌ語人名は完全に個人ごとに作られるので同名はありえません。後から同名人物の存在を知った場合には改名します。

2022-07-24 11:49:52
丹菊逸治 @itangiku

カムイ(神々)は人間(個人)から供物(酒やイナウ)を受け取り、代わりにその個人の願いをかなえ、幸運を授けます。アイヌ語人名は神から人間に幸運を授けるときの住所(ID番号)のようなものです。同じ名前があると混乱するのです。

2022-07-24 11:51:18
丹菊逸治 @itangiku

アイヌ伝統文化の考え方では、同名者がいると神からの幸運、悪神からの不運が間違った人間に当たってしまいます。また、故人の名前を別人につけると、死者が生きていると神々に誤解され、早死させられるかもしれません。

2022-07-24 11:53:21
丹菊逸治 @itangiku

これは伝統文化においてだけではありません。アイヌ社会においては過去においても、現在においても「実在のアイヌ語人名」は特定の実在の人物その人のことであり、フィクションではありえません。そもそも「同名の別人物」がありえないからです

2022-07-24 11:55:36
丹菊逸治 @itangiku

この仕組みのために、「実在のアイヌ語人名を使った創作物(フィクション)」は「嘘」ということになってしまいます。これは過去のことではなく、現在でもそうなのです。

2022-07-24 11:57:33
丹菊逸治 @itangiku

「創作物で実在したアイヌ語人名を使う」とアイヌ社会ではそれが史実だと受け取られます。史実でないなら嘘だということになります。明らかに嘘とわかる創作物(ファンタジーなど)で使われた場合、それは故人に対する侮辱です。現代の子孫の誰かがOKしても後々トラブルになる可能性があります。

2022-07-24 11:59:37
丹菊逸治 @itangiku

なお、地域によっては生まれ変わりに近い考え方があり、数世代前の先祖の名前を付ける習慣もあったようです。それについては私は詳細を知りません。

2022-07-24 15:26:13
丹菊逸治 @itangiku

「同名がない」「数世代前の先祖の名前を付ける」という、一見矛盾したシステムの混在はニヴフ民族、カムチャツカのコリャーク民族などに広がっており、アイヌ民族にも両方あって不思議はありません。ただしアイヌ民族で「先祖の名前を付ける」のは地域的に限定されるのではないかと思います。

2022-07-24 16:44:39
丹菊逸治 @itangiku

ニヴフ民族の場合も基本的には名前は個人ごとに作られるものであり、特別な場合に先祖の名前が付けられます。コリャーク民族の場合は原則として生まれ変わりです。生まれ変わりで名前が循環するになる仕組みは北極にも広がっています。

2022-07-24 16:48:05
たね🍣 @TanestarP

@itangiku それで同名じゃないってことをどうやって証明するんですか…?

2022-07-25 00:22:01
iron irony @ironirony2

@TanestarP 共同体の中で口頭伝承し、防がれるのではないでしょうか。「後から同名人物の存在を知った場合には改名します。」とのこと、違う地域の共同体に同名の人がいたりしたら改名なのでしょうね。

2022-07-25 08:38:07
🍹𝙝𝙞-𝙛𝙞 ®︎🍹 @hifiagendawning

アイヌの命名規則を調べると同名を避ける文化であったことがわかる。《…アイヌは個人の名前が幸運や不運をもたらすとさえ考え,出生した子供の命名にあたっては,すでに死んだ人や近所に生きている人と同じ名前は付けないようにしていた》jstage.jst.go.jp/article/grj198…

2022-07-24 12:10:55
🍹𝙝𝙞-𝙛𝙞 ®︎🍹 @hifiagendawning

遠藤匡俊「19世紀中葉の根室場所におけるアイヌの改名と命名規則の空間的適用範囲」, 日本地理学会編『地理学評論』74(A)11(2001年)

2022-07-24 12:13:26
のすけ @nosuke_arc

遠藤氏が研究されているアイヌの和名化に係る命名規則の話は機関リポジトリからいくらか読めるが、“アイヌ社会 には「近所 に生きている人と同じ名をつけない」という個人名の命名規則が存在していた”とあり、それが和名の命名規則にも適用されているかどうかという点が研究主題の一つとなっている

2022-07-25 06:18:31
のすけ @nosuke_arc

和名化の研究がメインなので端的にしか書いていないが、この論文だと択捉場所については記載があり、アイヌ名については同名率0.3%と極めて低く、命名規則が遵守されていることが伺えるとしている

2022-07-25 06:21:34
のすけ @nosuke_arc

この命名規則がどのような世界認知からくるか、というのが丹菊氏のお話されたことで、「自分の知っている人」が全てと言って良い近代化以前のアイヌ社会ではそれで充分だったと思われる。(実際新たに知ったら改名するという規則も氏は述べているが全く不自然でない)

2022-07-25 06:26:05
のすけ @nosuke_arc

「実際に同名が存在するかどうか」ではなく「個人の認知の中に同名はいない」が重要なので、文字や映像などの記録が多数残り、会ったことない人と交流が可能になった現代社会での感覚で「同名いるじゃん」と判断してはいけない

2022-07-25 06:29:27
のすけ @nosuke_arc

そしてこの規則がアイヌの世界観からくるもので、現代でもそうした感覚を保持しているアイヌもいるので気をつけた方が良いという話と私は理解した

2022-07-25 06:31:11
Dicek_idv @Guero_Keroppi

@itangiku ”事実(文化的理由)”として、同名を使わない。同名が発覚した場合の避ける方法論もある。 フィクションに同名を使うと「嘘」と「侮辱」とする典拠ないしはエビデンスが欲しいです。 有無によって、”事実”なのか、”提言”なのか、”意見”なのか違ってきます。

2022-07-25 09:30:21
るっこー @eshikansoku

@itangiku 「資料を見る限り昔も同名はいた」というのと「同名をつけるのは絶対に許されない行為」というのは矛盾しないよね。 ただし「後から同名を知った場合改名する」というのと昔のアイヌの情報ネットワークを妄想すると離れた地域の同名者を把握できてなかったからこそ成立していたように思える。

2022-07-25 09:38:36
るっこー @eshikansoku

@itangiku 資料から同名はある程度いたようだし。 故意に実在した人物の名前を付けた場合を除き、現在において創作物に対してその伝統文化の圧力をかけるのは厳しい気がする

2022-07-25 09:39:24
葡萄球菌 @budoukyukin

主張の是非は置いておいて名前被りを禁忌とし死後循環するというのは興味深い。ただ、民族思想的にタブーと知った上でも、気にするか気にしないかは作り手側の判断に委ねられて良いものだし、それに対してクレームをつけるのもまた自由であるべきだろう。 twitter.com/itangiku/statu…

2022-07-25 08:31:32