以前、初代の日産リーフを借りて実地試験を行い、結果酷い目に遭ったことがある私ですが(1充電走行可能距離80km、真夏の深夜に日産ディーラー設置の200V充電器の前で体育座りして岩清水の如く充電されるのを待った苦い記憶)、認識をアップデートすべく、現行型リーフの実地試験を敢行しました。 pic.twitter.com/KTiT0udIpg
2022-07-21 20:12:34実地試験の要領としては、「神奈川県藤沢市から千葉県銚子市まで高速道路利用で日帰り往復(総走行距離436.3km」というものです。利用シチュエーションとしては、自家用車を持っていれば日常的に実施する週末ドライブ、というものです。特にエコランはせず、飛ばしもせずドライブを楽しみます。 pic.twitter.com/gZ8zwZe2Bm
2022-07-21 20:12:37確認の要点としては ・実用性能…EVが日常的週末ドライブに実用上耐え得るのか ・走行性能…走る、曲がる、止まるの各性能 が主となります。 まずは実用性能、つまるところ充電実績を数字で。
2022-07-21 20:12:38行程中、充電は2回実施しました。レンタカーなので充電はフル充電スタート、まず銚子市までの186.4kmは無充電で走ることが出来ました。この段階で電池残量は15%とのことです。40kWhバッテリ車ですので、使用電力は34kWh、5.47km/hWhということになるでしょうか。 pic.twitter.com/DaUi3Q54mQ
2022-07-21 20:12:401回目の充電は、銚子市の日産ディーラー設置のCHAdeMO充電器(出力44kWとの由)にて実施しました。ビジターの急速充電で30分充電したところ電池残量は68%になりました。単純計算して30分で21.2kWh充電出来たことになります。 pic.twitter.com/XR7wwXIkZ3
2022-07-21 20:12:422回目の充電は銚子市街を観光し終え、帰途につく最中に実施しました。この区間での走行距離は143,1km、この段階で電池残量は残り10%。23.2kWh消費で電費は6.16km/kWhでした。ドライバーとしての私も少し慣れて来たのか、少し数値が上がっています。 pic.twitter.com/MbxTTQZsAr
2022-07-21 20:12:44アクアラインの海ほたるにあるCHAdeMO充電器(出力40kWとの由)にて30分充電したところ、残量は58%まで回復しました。充電量としては19.2kWh、スペック通り日産ディーラーのものより充電量が少なくなります。なお、充電器の表示としては17.5kWh充電したという表示でした。やはり誤差はありますね。 pic.twitter.com/2bKF2aL1es
2022-07-21 20:12:46あとは友人を送り届け藤沢の日産レンタカーに車を返却し終了、となります。この区間の走行距離は106.8km、20,8kWh消費で5.13km/kWhですが、電費悪化の原因は主に下道を走っていたからですね。 さて、この結果から何を言えるかですが。 pic.twitter.com/3sqz5xqukz
2022-07-21 20:12:49まず、最初に断っておきますが、以前の「カタログ航続距離200km、実測航続距離80km」よりは大幅に進化しています。これは掛け値なしに良くなっています。…まぁWLTCモード322kmのところどう計算しても240km程度が限界、というのをどう見るかではありますが、進歩はしています。とはいえ…
2022-07-21 20:12:50実態としては、自家用車としての実用性能はまだまだ全く足りない、と言う他ありません。日帰りで片道200km程度の行程であれば自家用車を持っているならば普通に走るわけですが、当然満タンスタートであれば無給油で済むことは言うまでもありません。それどころか2往復は出来る車もザラでしょう。
2022-07-21 20:12:50リーフの場合、このように最低2回は充電をしなければなりません。つまり、1回のドライブで最低1時間は無駄にする必要があります。その間に休憩すればいい、という向きもあるでしょうが、休憩はあくまで人間の都合で取るものです。車の機嫌と人間の体力は当然ですがリンクなどしません。 pic.twitter.com/ODtLVF94mM
2022-07-21 20:12:52また、銚子のように関東でも、都市から少し外れるだけで急速充電器の数は極めて少なくなります。そこに行くために敢えて走りに行く必要があるわけで、これも無駄としか言えません。充電器があっても200V充電器であったり、あったとしても決済方法が限られていたり… pic.twitter.com/Bl4xvjpu5f
2022-07-21 20:12:54充電自体にも問題があります。時間ぎめで30分あたり1650円、というのが相場のようですが、これは充電器の性能、更に言えば車と充電器の相性によっても充電速度は変わってきます。リーフは比較的充電性能は発揮出来る方のようですが、これで充電器との相性で充電速度が遅い車だったとしたら。 pic.twitter.com/d4Nl6LCWJ2
2022-07-21 20:12:56充電速度が比較的良好なリーフですら現状市中に設置してある急速充電器では30分消費して150km弱しか走れない、という点は決して小さい問題ではありません。自家用車の第一義はまずもって「自在に走れること」、これが最大の前提条件です。車の都合に人間の都合を変えさせられることはNGなのです。 pic.twitter.com/xSVH7tx1M6
2022-07-21 20:12:58某社の超高速充電器はもっと充電速度は速いという触れ込みのようですが、こちらも「充電器のある場所まで何分掛かる?」という点まで考えると、到底現実的な解とはなりません。実用性能で言えば、未だEVはICE車にくらべ圧倒的に性能が劣る、と結論づける他ないでしょう。 pic.twitter.com/VlHysYxGQX
2022-07-21 20:13:00一方走行性能はどうか、ですが。まずはEVの特性「変速機がないシームレスな加速」、これは明らかに優秀と言えるでしょう。少なくとも2ペダルのICE車の宿命「車が勝手に変速する」が無い以上、原理的に明らかに有利です。 pic.twitter.com/LLVLkPC6pH
2022-07-21 20:19:10尤も、「車としてのリーフ」には課題は山積しています。 まず気になったのは乗り心地です。決してバネレートは高くはない筈なのですが、タウンスピードから高速走行まで、常に路面の凹凸を忠実に伝え続けます。ショックの動き出しが固いのでしょうか。快適とは言えません。
2022-07-21 20:19:11また、直進安定性も率直に言って良くありません。これは恐らく電費対策で、フロントアクスルのキャスター角を立てて、トーインを殆ど設定していないのではないでしょうか。確かに走行抵抗は下がりますが、これによりドライバーは常に修正舵を求められることになります。 pic.twitter.com/MwM70TGFtv
2022-07-21 20:19:13バッテリーを車体下部に搭載して重心が低くなり操縦性が上がる…というのがEVにはよく言われる利点ですが、リーフの場合正直あまり当てはまりません。サスの容量が根本的に足りていないのかもしれませんが、少しペースを上げただけでコーナーで姿勢がすぐ崩れてしまいます。
2022-07-21 20:19:14タイヤも宜しくありません。銘柄はダンロップエナセーブEC300ですが、路面がウェットだと少し強めにアクセルを踏んだらホイールスピン、市街地の制限速度での緊急制動でも簡単にABSが作動してしまいます。特に制動性能は問題で、ABSが低μに騙されて制動距離が伸びる傾向にありました。 pic.twitter.com/ZIOb3SdHBL
2022-07-21 20:19:16ステアリングレイアウトにも大きな問題を感じました。今日びテレスコピック無しというのもどうかと思いますが、チルトの作動基部が手前かつ位置が低く、角度を変えるとハンドルの角度が随分と寝てしまいます。まるで一昔前のトヨタ車のようです。 pic.twitter.com/EQzeyRNnGP
2022-07-21 20:19:18恐らくこれはベースシャシの位置が低いガソリン車のシャシを元にした結果、床下電池の分着座位置が上がり配置に無理が出ているのだろうと思います。理想的なドライビングポジションが取りにくい、というのも車としては高評価を出すことは難しいでしょう。 pic.twitter.com/6rfNPF1CuA
2022-07-21 20:19:21走行性能の煮詰めといい、航続距離の設定といい、おそらくは「市街地での下駄専用」という性能設定なのでしょう。そういった用途としては小回りは結構良かったのでシティコミューターとしては可かと思いますが、それであれば車体サイズはもっと小さい方が便利でしょう。 pic.twitter.com/WfkBaTtUft
2022-07-21 20:19:23やはり、リーフを基準にすると現状のEVはICE車を代替するにはあらゆる点で全く不充分、と言うしかないでしょう。家の駐車場で夜間充電が出来る、遠出は一切せず近場の買い物しかしない…という用途であれば足りますが、それであればEVを買うよりタクシーを呼んだほうが低コストかつ楽かと思います。
2022-07-21 20:19:24現状のEVは「実用的な道具」ではなく、「新しいデバイスを努力と工夫で使い切ることを楽しむための趣味の手段」ですね。それはそれで楽しみ方の一つとは思いますが、社会の仕組みとして前提に組み込めるレベルにはない、というのが現状であると言えるでしょう。
2022-07-21 20:19:24