ある日の夕飯でのお爺との会話
- tkatsumi06j
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夕飯食べてきました。今日の夕飯は、80代のおばあちゃんが具合悪いので、90代のおじいちゃんと二人きり。このおじいちゃん、おばあちゃんがいないとすごく寡黙。ほとんど自分からは喋らない。でも実は、かつては米共産党員としてブラックパンサー運動に関わった筋金入りの活動家。話かけてみた。
2011-09-25 11:13:27その筋金入りの共産党員のおじいちゃんに、長年疑問に思ってきたことをぶつけてみる。「アメリカ人はみな演説がうまい。社会にそう育てられるからだと思う。でもアメリカの歴史は、弁舌の豊かな人が変えたきたのではなく、暴力が変えてきた。それだけ、人に訴える技術があるのに、なぜか」と。続く
2011-09-25 11:16:16お爺の軽快な答えはこうだった。「そりゃ、話したいことを話してるだけだからさ」(笑)私「つまり演説の中身がないってこと?」。爺「みんなわかっていて聴いている」。私「そんなんで、どうやって大統領になる人を選ぶの?日本には公選制がないけど、演説のうまい人は簡単に大統領になれそう」続く
2011-09-25 11:19:58爺「そりゃ、よく調べるのさ。政策とか、何をやってきたかとか」。私「informed decisionというやつだね。でも、そうなると立派な演説は一体何の意味があるの?」。爺、少し考えて「そりゃ、娯楽だな」。私「!?」。爺「なんだ。演説聴いてあーだこーだ批判するのは、楽しいだろ?」
2011-09-25 11:24:16私、まだ食い下がる。「でも、日本には公選制がないけど、大統領を一人一人の票が選出するとなったら、みんなもっと真剣に演説とか聞くと思うんだけど。日本人だったら、演説の内容、言葉をすごく重視するよ」。お爺「そら、政治の文化の違いだな。アメリカでは言葉の表層では判断しない」ごもっとも。
2011-09-25 11:27:25まだ続く。私「でも言葉や演説を重視しないなら、なぜ子供の頃からディベイトや演説の訓練を行うんだろ。私が行くどの集会でも、アメリカ人はとにかく“喋り慣れている”よ」。お爺「それも文化の違いさ。社会で生きていくために必要なスキルだからな」。私「でも、指導者を選ぶ基準にはらない?」続く
2011-09-25 11:31:54元高校数学教師のお爺、鋭く一喝。「学校で習うものがすべて役に立つものだと思うか?わしは今でもたまに数学教えているが、“役に立つ”と思って教えているわけではないぞ」。私「じゃあ、ディベイトやプレゼンする能力って、付加価値的なものなの?」。お爺「少なくとも必要不可欠なものではないな」
2011-09-25 11:35:34数学は生活に必要不可欠なものではない。ディベイトやプレゼン能力もあって困ることはないが、それだけで社会的に成功できるわけでもない。なるほど、一理ある。私「つまりケネディや、キング牧師や、オバマの演説に感動するというのは…」。お爺「面白いからさ。よくできているから感心して聴くんだ」
2011-09-25 11:38:31そういえば、オバマ大統領が初当選したとき、スピーチライターは若干25歳位の若者だった。いまもその体制は変わっていないと聴く。私「つまり、スピーチやそのテクニックを批評して、愉しむ。みたいな?」。お爺「そうだな、それに近い。日本でいえばカラオケのようなものかな」。私「はあ!?」続く
2011-09-25 11:41:21お爺「なんだ、日本人カラオケ好きだろ。仕事でも重要な位置占めてるそうじゃないか。それと似たようなもんだよ」。私「えーと…カラオケと、ビジネスにも通用するプレゼン能力とでは、比較にならないと思うんだけど…」。お爺「だから、そこが文化の違いなんだよ。ディベイトも文化なのさ」。私「!」
2011-09-25 11:44:45お爺「必要不可欠ではないが、みんなに根付いているものなんだよ。だから、それなしてはアメリカでは生きていけない。だからといって、それが優れていれば“優秀な人間”というわけでもない。ただの文化だからな」。私「そんな企業文化の中で、その文化のない日本人がプレゼン能力求められるのって…」
2011-09-25 11:47:30お爺「まあ、フェアではないな」。私「…」。お爺「だが、それは日本人が勝手にこちらの壇上に上がってくるから、そうなっているだけの話だ」。私「そうだね。日本人が勝手に合わせてる。必要だと思って」。お爺「そう。だからアメリカ人がやり方を押し付けているわけではない」。私「ごもっとも…」了
2011-09-25 11:50:22─というような話をして、短い食事の時間はあっという間に終わった。皿洗いして(私の担当)、片付けで、自分の部屋に引っ込む。そして思い出して、呟いてみた。
2011-09-25 11:51:49違う国の文化を、尊重するあまり(しかも背景を知らずに)、相手に合わせようとする日本のビジネス慣習。これがビジネスだけでなく、NGO等非営利の世界でも息づく。やっと、なぜ自分のスタイルが国際NGOとかで通用し、辞めようとしても慰留してくれる理由がわかった気がした。合わせないからだ。
2011-09-25 11:54:55アメリカ人相手のディベイト能力は、まあアメリカの文化に浸かってきたくらいのレベルはあるのだろう。だから、ディベイト能力で信頼を獲得してきたわけでも、友達を増やしたわけでもない。アメリカ人がリスペクトするのは、自分の文化をいかに尊重し、守り、譲らないかなのだ。
2011-09-25 11:57:10アメリカ人相手に、ディベイトやプレゼン能力だけで物事を的確に伝えられ、それでリスペクトされると思ったら、大間違いということ。彼らにとっては文化的に当たり前のこと。もちろん一層の信頼を得るには一層の努力が必要になる。彼らは言葉の表面的な価値を熟知しきっているのだ。いい教訓だった。
2011-09-25 11:59:56@tkatsumi06j 一時期、「he says, she says」の言葉が流行った時期があったけれど、結局、(アメリカでは)「I say」の世界なんだと思う。そして、結論が一致しなくとも、相手はこっちが思ってる程気にしちゃいない。その辺がクリアー出来るかどうかなんだと思う。
2011-09-25 12:01:50しかしお爺、やっぱ肝心なことには答えなかった。さらっとだけ言ったんだけど、「なぜアメリカでは言葉より暴力で物事が解決・進展してきたんだろう」という私の問いには短く「それがアメリカのやり方だからさ」としか言わなかった。長年、左派闘争に身を費やしてきたお爺にとっても、苦い現実なのだ。
2011-09-25 12:02:29@ky00950 そう。議論するためでもなく、相手を言い負かすためでもなく、「言いたいから言う」。で、言い合って実は気持ちよくなる。それも、気持ちよくなるために言うわけではない。言わないと、気が済まないのだ。文化だからね。これを理解すると、アメリカ人とすぐに親しくなれる。
2011-09-25 12:04:42事実、まさか21世紀のアメリカで、武装鉄道警察とデモ隊との衝突を目の当たりにするとは思わなかった。そりゃニュースでは若者の雇用デモの話は聞いていたが、今だ公権力による死者が出るような物騒な社会だとは思わなかった。暴力はこの国のブレーキであり、エンジンなのだ。
2011-09-25 12:06:58@ky00950 いや、SFの市民とBART警察の衝突です。うずくまる浮浪者をcold bloodで後ろから撃ちぬいた警官がいたそうで、BART警察の解体を叫び続けています。私が来たときからずーっとやってる。
2011-09-25 12:16:14@tkatsumi06j ブラックパンサーに関わったからこそ、そう感じるのでしょうね…爺とのツイート大変わかりやすくて、面白かったです。文化の違いって頭で理解できないことが多いですが、その文化に触れ合うと実感できたり認識できたりしますよね。今回のツイートは言葉でも理解できました!
2011-09-25 12:22:25@babycoco_tw そうですね。何しろ90歳のお爺ちゃんですから、言うことにいちいち含蓄があるんです。それこそ本当にいのちを燃やしてきた闘争の人生だったと思うんです。だから、何よりもその生き様から、ありありとアメリカのありようが伝わってくる。
2011-09-25 12:24:46@tkatsumi06j あ、これですね。 http://t.co/48I3yOpl 一昨年の1月一日の黒人射殺もBART警察官だった・・・ベイエリア、怖っ
2011-09-25 12:27:20