単婚種の頑健性 / サピエンスに並存する二種類の異性選択モジュール / 婚姻と托卵のバランス

相対的に魅力の低いオスは、一部托卵されるリスクを負ってでも、妻を繋ぎ止めなければ、遺伝子を存続させることが出来ない。こうして婚姻と托卵がバランスの上で両立する。
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EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

進化人類学者のロビン=ダンバーは人類は通常の一夫一妻種でないと言っています。彼によると、スザンヌ=シュルツとキャット=オピエによるベイズ的手法を用いたコンピュータ解析(S.Shultz, C.Opie & Q.Atkinson 2011)から、サピエンスはテナガザルのような単婚種ではない(R.Dunbar 2016)。→ t.co/hYItfFZgX8

2019-09-27 16:51:48
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数年前、シュルツとオピエのふたりは、現存するすべての霊長類種と、それらの共通祖先(6500万年以上前に遡る)に至るまでの完璧な系統樹(phylogenetic tree)を、遺伝学的&系統学的な類縁度をもとに比重をつけていくことで再現しようと試みました。

2019-09-27 16:53:26
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ベイズ統計です。現存する霊長類220種の生態や身体デザインは(客観的事実として)すでに分かっているのでそれらをデータ化し、またその種がそのような生態を採っていることの目的や要因(=現在霊長学から考えられている目的や要因。信頼性にそれぞれ比重をつける)を主観的事実としてデータ化する。

2019-09-27 16:54:06
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そこに、現在は絶滅している過去のさまざまな祖先たちの状態(=生物学的知見から推測されている状態)と、その情報の信頼性なども主観的データとして加えていく。

2019-09-27 16:54:26
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こうしてつくられた虫食いデータの穴はコンピュータソフトを用いたベイズ的手法で埋められ、高度な統計数学を用いて検証されました。

2019-09-27 16:54:47
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動物の生態変化(行動や社会組織の別のシステムへの転換)は、何らかの淘汰圧によって引き起こされます。シュルツとオピエによるベイズ的手法を用いたコンピュータ解析法は、その予測と検証を可能としました。

2019-09-27 16:55:15
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ふたりによっておよそ正しく並べられた霊長類(primates)の系統樹は、ある状態から別の状態への転換が起きた順序を現生種に至るまでのさまざまな進化経路に沿って調べられるようになっていました。>Stepwise evolution of stable sociality in primates nature.com/articles/natur…

2019-09-27 16:56:09
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解析結果によると、霊長類の系統は、散在してそれぞれが個別に生活していた祖先の状態(プレシアダピスなど)から→ 群れ社会(=複数のオスと複数のメスの混在社会)体制へと直接移行しました。 pic.twitter.com/OyellnxQV8

2019-09-27 16:57:08
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そして霊長類がはじめに「群れ社会」を築きはじめた原因は、ネズミのような夜行性から昼の生活へと徐々に移行しようとする際、捕食リスク(一匹だと死にやすい)が高まったためではないかと予測されました。そしてこのような社会性が霊長類の進化=Historyの積み上げの基盤となりました pic.twitter.com/EqeHt9ZhmU

2019-09-27 16:58:01
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あらゆる霊長類種は、このような「男女混合の群れ社会 = 自由恋愛あるいは乱交ぐらし」を基本的なスタンダードとし、その生態(社会システム)に留まったようでした。

2019-09-27 16:58:45
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そこ(=男女混在の群れ社会)からのさらなる進化経路(= “進化の出口” )としては、❶一夫多妻のハーレム社会と、❷一夫一妻の単婚 の二つの選択肢 (結果) がありました。

2019-09-27 16:59:27
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また、❸ハーレム社会を経て→一夫一妻の単婚に至るという進化経路も考えられました。

2019-09-27 16:59:48
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この研究で、霊長類の進化において、多く見られた生態転換のパターンは、従来の社会生態学モデルの予想通り、「男女混合の群れ乱交社会と一夫多妻のハーレム社会を行き来する」パターンだったということが判明しました。 pic.twitter.com/QUQrRFic7P

2019-09-27 17:00:43
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そして最も重大な発見がこれで、 「一夫一妻」に進化が至れば、そこから抜け出すことはできない ということがわかりました。 pic.twitter.com/7SygcyjOuA

2019-09-27 17:01:42
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一夫一妻の単婚(monogamy)とは、進化上の落とし穴だった。一度そこに進化の道筋が至ってしまえば、もはやそこから抜け出す道は無い。いったん種がその一夫一妻スタイルを選択すると(これは比喩であり、彼らは選択したわけではなく生まれつき選択させられた)、もう後戻りはできなくなる。

2019-09-27 17:02:54
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つまり、テナガザルのように一度そういう配偶形態に進化することを選んだ種は、もう二度と、別の繁殖スタイルを(適応のために)自由に採ることが出来なくなってしまう。

2019-09-27 17:03:15
EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

ロビン=ダンバーは研究によって判明したこの事実を驚きを持って述べています:“ 真に重要な発見は、単婚(monogamy)から抜け出す道はないということだ。いったんある生物種がこの状態を選ぶと、そこから逃れることはできないように思われる。”

2019-09-27 17:04:03
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ダンバー:“ 実際、単婚は一種の認知上の落とし穴にあたり、それはおそらく単婚に対する認知上の要求がきわめて大きいために、脳がいったんそのように配線されたら元に戻るのは難しいためらしいのだ。”

2019-09-27 17:05:27
EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

ダンバー:“ 単婚(monogamy)では、オスとメスは互いに寛容でなければならないが、同性の個体すべてに対して、はなはだ不寛容でなければならない。──したがって、単婚の霊長類はかならず縄張りを主張するようになり、各つがいが独自の縄張りを専有する。”

2019-09-27 17:05:47
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ダンバー:“ こうした同性に対する不寛容(とくにメスの他のメスに対する不寛容)は、単婚の種をのぞけばホ乳類ではいたって珍しく、このために同性の数個体が一緒に暮らすのはことのほか難しい。とりわけ、思春期に達して繁殖期に入るとそうなる。”

2019-09-27 17:06:20
EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

ダンバー:“… 完全に無条件な単婚(monogamy)は、行動や認知に重大な変化を要求するきわめて特殊な進化状態であるらしい。ひとたびこの状態に入ると、後戻りはできない。すでに起きた変化を戻すのが難しいからだ。”

2019-09-27 17:06:51
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R.Dunbar 2016 『Human Evolution: Our Brains and Behavior/邦題: 人類進化の謎を解き明かす』より pic.twitter.com/J3XZNgERPv

2019-09-27 17:09:45
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たとえば、人間(サピエンス)の性のスタイルは、時代や、文明や、暮らしている文化によってハーレム制やフリーセックス制に柔軟に変化する、という主張があります。あるいは、男たち(あるいは女たち)は本心ではそれを望んでいる、という主張があります。

2019-09-27 17:11:02
EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

しかし、人間(サピエンス)がほんとうの意味でテナガザルのような一夫一妻/monogamyに進化しているのなら、そんなことはほとんど不可能になります。

2019-09-27 17:11:37
EvoPsy(エボサイ) @selfcomestomine

脳が「一夫一妻用デザイン」に作り変えられ、" 認知上の落とし穴" に嵌りこんでしまうために、そんな望み(desire)はほぼ抱けなくなってしまう、ということです。

2019-09-27 17:12:16