サピエンスのモラルゲームと”偽善”の進化 / 自己矛盾と戦略的無知
「モラル」というのは実は、サピエンスにとっては他人を叩くための絶好の道具だ。人類は通常の自然選択だけでなく、“評判選択”(Alexander 1987)や “逸脱者の処罰と社会統制”(Boehm 1997) といった特殊なモラルゲームを繰り広げて進化(=自然淘汰)してきた動物なので、道徳や正義で他者を攻撃する。 pic.twitter.com/eygL9mMka4
2019-09-17 15:47:52進化心理学者のロバート=クルツバンは、サピエンスのモラルゲームの本質と "偽善" の進化について語っている→:“適応度(=Reproductive Fitness, 遺伝子の再生産の成功度合い)という意味での生物の状況は、生殖に関するルールの如何によって、向上したり悪化したりする。” pic.twitter.com/qgNaR37z7W
2019-10-30 06:52:23“ ここで、人類も他の霊長類同様一夫多妻制をとり、「もっとも有能な」男性が、複数の女性を手にし、相手が一人もいない男性が大勢出現したとしよう。”
2019-10-30 06:54:56“ その場合、能力の劣る男性は皆、一夫一妻制を遵守させるルールに"深く決定的な関心"を抱くであろう。そのような〔一夫一妻制の〕ルールが規定された社会では、能力の劣る男性でも、うまくやっていけるはずだからだ。” pic.twitter.com/gBgLU8HzTE
2019-10-30 06:55:07“ 同様に、一夫一妻制が強制された社会で生きるほうが、うまくやっていける女性もいる。このことは、少なくとも可能性として、他人に性に関するルールを課そうとするモジュールが存在することを意味する。”
2019-10-30 06:57:23“そしてそれは、妊娠中絶、売春、あるいは性的奔放やセクシュアリティに関わるその他の行為をめぐる道徳的直観を通して機能する。要は、社会のあり方によって(進化的に)勝利する者もいれば、敗北する者もいるということだ。性的な行動に対する人々の見方の大きな違いはそこに由来すると私は考える。” pic.twitter.com/bIwX5HNRZJ
2019-10-30 06:57:34“ …理由は何であれ、何としてでも、他人にしたいことをさせないよう試みる〔脳の〕モジュールを、私たちは備えているらしい。これこそが、現代における最大の矛盾の一つであり、少なくとも欧米社会では、自由への絶えざる献身のかたわらで、報道官モジュールが、つねに機能し続けているのである。” pic.twitter.com/qO947JjudR
2019-10-30 07:01:57サピエンスの意識は脳という国家の広報担当 "大統領報道官" が司る。サピエンスがIntentional stanceを進化させたとき「心を読む」というハッキングが進化史で初めて登場した。その危機への対処の策こそ、大統領報道官モジュールを脳に備えること。これは〈理由〉をおしゃべりするインタープリターだ。
2019-10-30 07:06:19“なぜ(自分以外の他の)誰もが偽善者なのか?────〔進化心理学の〕心のモジュール理論は、なぜ誰もが偽善者なのかを説明してくれる。道徳的なモジュールは、他人の行動を抑制しようとする。集団の道徳という鞭は、さまざまな行為を防ぐために用いることができる。” pic.twitter.com/EdvVweOKS2
2019-10-30 07:09:20“それと同時に、脳のなかの他のモジュールは、ときに道徳モジュールが非難するまさにその行為を通じて、適応的な利益をあげようとする。”
2019-10-30 07:13:54“ この意味において、誰もが偽善者である理由は、競争という、ありふれた概念に求められる。生物は、自身の適応的な利益を促進すべく設計されている。” pic.twitter.com/LvcpcsCzsD
2019-10-30 07:14:17“ そのため、他人を傷つけ、己や協力者の役に立つことをしようとする。抽象的なレベルで見れば、偽善は、その他の競争的な行為と変わらない。”
2019-10-30 07:14:22“ 偽善が、競争の現れの一つにすぎないのなら、なぜ人はそれを不快に思うのか?ダンテの『地獄篇』を尺度にとると、その不快指数は九レベル中の八に相当する。”
2019-10-30 07:14:24“ その答えは、道徳の本性に見出せる。なぜそもそも道徳が進化したのかを不思議に思う人もいるかもしれないが、道徳の起源の大きな部分は、他人の行動を抑制する限りにおいて、自分の行動を抑制するルールを設定し受け入れるよう人間が設計されていることに見出せる。” pic.twitter.com/bCht1kQgnf
2019-10-30 07:15:12“ 道徳は、非公式な法システムと見なし得る。人は、種々の行為のために自分が処罰の対象になる可能性のあるルールの適用に同意するが、それは誰にもそのルールが適用される限りにおいてである。”
2019-10-30 07:16:35“ このことはすぐにわかるはずだ。人は、自分の行動だけを制限することに同意するよう進化したと考えるべき理由はどこにもない。”
2019-10-30 07:18:10“これは次のことを意味する。:道徳的な認知が〔進化的に〕安定するための大きな条件の一つとして、公平の概念、すなわち「ルールは誰にも等しく適用されねばならない」という考えが、道徳には含まれねばならない。” pic.twitter.com/9jbdgVvEGw
2019-10-30 07:18:22“ 公平の概念が重要なのは、それ無しには、 ルールが他人を抑圧する道具と化してしまうからだ。前述のとおり、人は通常、自分は縛っても他人は縛らないルールの受け入れを拒む。” pic.twitter.com/o17NhVBzDM
2019-10-30 07:24:12〔架空の鳥の社会にたとえて〕“他の鳥の交尾は禁じないのに、自分の交尾は禁じるルールに同意する鳥が、いったいどうなるかを想像してみればよい。この鳥の(遺伝子の)観点から見た場合、このルールは進化的な大災厄である。それを受け入れるようなのん気な設計は、すぐに淘汰されることだろう。”
2019-10-30 07:29:07“ 行動を縛るルールとして道徳を捉えるなら、人は通常、全員を等しく縛るルールを選択するよう設計されていると考えられる。” pic.twitter.com/Pg0UTtjVxY
2019-10-30 07:31:01“この見方は、「ルールが実施されたあとでの、社会における自分の立場や役割がわからないという条件のもとで誰もが同意する道徳原理こそが、もっともすぐれた道徳原理である」とする、哲学者ジョン=ロールズの考えと大きくは異ならない。”
2019-10-30 07:33:03“ したがって"公平"の概念は、ロールズ流の道徳性を体現するとも言える。人々は、正義の鉄槌が誰もの頭上に等しく振りかざされる限り、懲罰の脅威を受け入れる。”
2019-10-30 07:33:17“ ロールズ流の道徳性は、多かれ少なかれ各個人間で損益を平等に分配する。手でボールを触った選手は罰せられるというルールのもとで、そして両チームがそのルールに従う限りにおいて、誰もが不平を言わずにサッカーをする。… ”
2019-10-30 07:33:20“ 偽善は公平性の基盤を掘り崩す。Xを実行する誰に対してもコストを課すべきことを規定するルールは、進化した生物なら擁護するはずである。確かにそのようなルールは、私にXをすることを禁じるが、サッカーを考えればわかるように、同じ規制を受ける他の人々より自分の状況が悪くなるわけではない。” pic.twitter.com/TEpdbzLT4S
2019-10-30 07:36:57“ ルールの違反者を罰するために私たち全員が振りかざす鞭として道徳を捉えれば、ルールが全員に等しく適用される限り、概して誰の状況も悪化しない。しかし鞭を不公平に振るえば、それは、ただのあからさまな個人攻撃になる。” pic.twitter.com/HQm4GvZHH9
2019-10-30 07:39:06