弁護士 柿沼太一先生によるMidjourneyのようなAI自動画像生成ツールの著作権についての考察

最近流行りのMidjourneyを例に著作権法的に生成された画像周りの著作権がどういった扱いになるかの考察。
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柿沼 太一 @tka0120

#midjourney 流行ってますね、Midjourney。 これは簡単に言うと、「文章(呪文)を入力するとAIが自動で画像を生成してくれる自動画像生成ツール」です。 ちなみに、添付の画像は、私が「A picture never before seen by mankind」という呪文を入力して出力された画像です。 pic.twitter.com/rke99HoyLw

2022-08-06 19:22:49
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柿沼 太一 @tka0120

「Midjourney」で少し検索すると、人間が描いたといっても全く不思議ではないハイクオリティな、でもこれまで見たことがない不思議で魅力的な画像が沢山見つかると思います。

2022-08-06 19:22:50
柿沼 太一 @tka0120

で、この手のコンテンツ自動生成AIですが、著作権法的に問題になる論点は大体決まっていまして、画像を例にとると「AIモデルの学習のために他人が作成した画像を勝手に利用できるか」「自動生成された画像に著作権が発生するか」「学習に用いられた画像と同一の画像が『偶然』自動生成された場合、

2022-08-06 19:22:51
柿沼 太一 @tka0120

著作権侵害に該当するか」の3点です。 最後の論点は、今回のように画像生成ツールと、同ツールを利用して画像を自動生成するユーザーが異なる場合、責任を誰が負うか、さらにややこしい問題になります。

2022-08-06 19:22:51
柿沼 太一 @tka0120

ちなみに、3つの論点のうち「「AIモデルの学習のために他人が作成した画像を勝手に利用できるか」が一番簡単でして「日本著作権法30条の4が適用されれば適法」が結論です。 今回はこの3つの論点のうち「自動生成された画像に著作権が発生するか」について解説します。

2022-08-06 19:22:52
柿沼 太一 @tka0120

まず、この論点が具体的にどのような形で問題になるかです。 典型的には、ある人(以下「作成者」)がMidjourneyで画像を自動生成し、当該画像をWEBにアップしたところ、第三者が当該画像を勝手に利用したとします。

2022-08-06 19:22:52
柿沼 太一 @tka0120

その場合作成者が当該利用者に対して「それは私が制作した画像の著作権を侵害する行為だから止めて欲しい。止めてくれないのなら損害賠償請求しますけど。」と言えるか、という問題です。

2022-08-06 19:22:53
柿沼 太一 @tka0120

後は、作成者が作成した自動生成画像を第三者にライセンスしたが、全く無関係な人が当該自動生成画像を勝手に利用した場合に、著作権侵害を理由にその利用を止められるかです。 止められないのであればライセンス料を支払っている人は何のためにお金を払っているのか、という話になります。

2022-08-06 19:22:53
柿沼 太一 @tka0120

いずれもこれから頻発しそうで怖い紛争類型です。

2022-08-06 19:22:54
柿沼 太一 @tka0120

自動生成画像に著作権が発生していれば、作成者は「契約関係にない全くの第三者」に対しても権利行使(差止請求や損害賠償請求)ができますが、もし著作権が発生してなければ、このような請求はできません。 原則として使われ放題です。

2022-08-06 19:22:55
柿沼 太一 @tka0120

ちなみに、あるコンテンツに著作権が発生するかどうかは著作権法上決まることであって、私人が勝手に著作権発生の有無を決定することはできません。 したがって、AI自動生成ツールの利用規約で「このツールで作成された画像には著作権が発生します」と記載されていても無意味です。

2022-08-06 19:22:55
柿沼 太一 @tka0120

利用規約の関係で誤解が多そうなのでもう1つ。 Midjourneyの利用規約では、原則として商用利用も可能とされていますが、もしこれが商用利用不可だったらどうなるでしょうか。

2022-08-06 19:22:56
柿沼 太一 @tka0120

その場合でも、生成画像に著作権が発生していなければ、Midjourneyのユーザー以外の第三者は、自由に生成画像を商用利用可能です。 著作権侵害にもならないし、利用規約違反にもならない(ユーザーではないので)からです。

2022-08-06 19:22:56
柿沼 太一 @tka0120

さて、日本を含むほとんどの国の著作権法の下では、著作権が発生するのは人間の創作物に限られ、人間が創作に関与せずAIの利用により完全自律的に作成されたコンテンツには著作権が発生しない扱いとなっています。

2022-08-06 19:22:57
柿沼 太一 @tka0120

で、すぐに判ると思うのですが「人間が創作した」と「人間が創作に関与せずAIの利用により完全自律的に作成された」の線引きをどこに置くかが大きな問題です。

2022-08-06 19:22:58
柿沼 太一 @tka0120

要するに、人間がAIを道具として利用したにすぎないのか、人間が創作したと言えるのかどうかですが、日本での議論では、この点は人間に「創作意図」と「創作的寄与」があったかによって判断されるとされています。

2022-08-06 19:22:58
柿沼 太一 @tka0120

「創作意図」は通常はあるので、「創作的寄与」、乱暴に言い切ると「人間がAIの利用に際して具体的かつ詳細な指示をしたか」によって判断されることになると思われます(ただし、それ以外でも「創作的寄与」が認められるケースはありうると思います。詳しくは後述)。

2022-08-06 19:22:59
柿沼 太一 @tka0120

これ、逆に言うと、簡単な指示しかしていなければ、生成された画像がいかに独創的で素晴らしいものだったとしても、著作権は発生しない、ということです。

2022-08-06 19:22:59
柿沼 太一 @tka0120

たとえば冒頭の私のように「人類がこれまで見たことのない絵」という呪文を入力して生成された画像がいかに素晴らしいものでも、その画像には著作権は発生しません。

2022-08-06 19:23:00
柿沼 太一 @tka0120

Midjourneyの場合は、文章(呪文)を入力して画像を生成するので、入力文章がポイントとなります。 いろいろな方がおっしゃっていますし、私も少し試してみましたが、「Midjourneyで良い画像を生成できる入力文章のコツ」というものが確かにあり、良い入力文章はまさに「秘密の呪文」ですね。

2022-08-06 19:23:01
柿沼 太一 @tka0120

「秘密の呪文」自体に著作権があるかという問題と「秘密の呪文を入力して自動出力された画像」に著作権があるかは別の問題で、これはこれでものすごく面白い問題ですが、今回は後者の問題です。

2022-08-06 19:23:01
柿沼 太一 @tka0120

で、Midjourneyの場合、呪文が長ければ長いほど良いかというとそうではなく、短い呪文でも、ポイントを捉えれば非常に面白い画像が生成されます。 ここは難しいところですね。 具体的かつ詳細な指示でなければ創作的寄与が認められない可能性があるためです。

2022-08-06 19:23:02
柿沼 太一 @tka0120

ただ、良い呪文かどうかを試すためには、相当試行錯誤する必要もありますので、試行錯誤した結果「短くても、よい呪文」を見つけられた場合には、その呪文は「具体的指示」ではありませんが、「創作的寄与」には該当するかもしれません。

2022-08-06 19:23:02
柿沼 太一 @tka0120

さらに、Midjourneyでは、最初の生成の際には4つの画像が生成され、そのうち気に入った画像をベースに更に変化させていくという機能がありますので、その機能を使って繰り返し繰り返し画像を生成させていくこともできます。

2022-08-06 19:23:03