人文学界における「非英語話者」のしんどさは、何に由来するか?

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福井栄二郎 @natganigpa

非英語ネイティブ文化人類学者のしんどさが、これに近いかもしれません。僕はヴァヌアツの文化とか現地の人たちの考えを、一度「日本語の世界観」で理解しようとしてるんです。それを再度、英語で説明するのは、本当に苦行です。日本語で説明するのも難しいのに…。 twitter.com/Cristoforou/st…

2022-08-11 22:56:26
福井栄二郎 @natganigpa

前にヴァヌアツで調査したとき「Faia blong yu i ded」(直訳すれば「お前の火は消えた」)という言葉を何度も耳にしたことがあった。今は誰も使ってないから、ただの流行語だったんだと思う。これの意味がよくわからなくて、今でもモヤモヤしている。 twitter.com/natganigpa/sta…

2022-08-12 10:22:21
福井栄二郎 @natganigpa

使い方としては、「会話の中で誰かが冗談を言う」→「Faia blong yu i ded」と別の誰かが言う→その場がどっとウケる。つまり何かの決めゼリフというか、関西弁でいう「なんでやねん」みたいなものかとも思うんだけど、そうでもなさそう。つまり使うタイミングがよくわからない。

2022-08-12 10:22:44
福井栄二郎 @natganigpa

現地の人に聞いても、「別に意味ないよ。言うと面白いから」と。こういうのが僕の「日本語の世界観」にうまく落とし込めない例。あの時は2週間くらいの滞在で、それ以上調べる時間もなかったし、たしかその次に行ったときには、もう誰も使ってなかったような気がする。

2022-08-12 10:23:11
福井栄二郎 @natganigpa

フィールドワークをしていると、こういう「落とし込めない」ことがたまにある。僕は僕の頭のなかにある、日本語の概念とか世界観をフル活用しながら、現地の文化を必死で「翻訳」したり、落とし込もうとしている。「理解」という言葉を使うなら、この「落とし込めた」ときがそうなのかもしれない。

2022-08-12 10:23:40
福井栄二郎 @natganigpa

そうやって母語の助けを借りながら、何とか現地のことがわかったり、わからなかったりするのに、それを英語(外国語)で説明して、しかも学術論文を書けというのは、僕としてはかなりハードルが高い。「翻訳の翻訳」だから、という以上のしんどさがある(なので翻訳をされている先生には頭が下がる)。

2022-08-12 10:24:39
福井栄二郎 @natganigpa

英語の論文読んでいても、「これは英語ネイティブか、かなり上級者じゃないとわからないだろう」という修辞や表現などをちょくちょく見かける(これは文化人類学だけなのかな)。こちらとしては「ああいうのが書けないとダメなのかー」と気が遠くなってしまう。

2022-08-12 10:25:08
福井栄二郎 @natganigpa

そのしんどさは、単語の数とか論理の複雑さというよりも、「英語ネイティブの言語観・世界観」をもつことを読者に求めているからだ。つまり頭の構造自体を「英語化」しないといけない。人文学の翻訳がしんどいのは、単なる「言語の翻訳」ではなくて「世界観の翻訳」みたいなところがあるからだ。

2022-08-12 10:27:54