軽水炉と兵器級プルトニウムと再処理と

プルトニウム製造用原子炉が無く、余った軽水炉がある国で、2つプロジェクトを立ち上げるとします。一方は黒鉛減速炉を新規で作りプルトニウムを作る。もう一方は軽水炉でプルトニウム作る。ヨーイドンで始めて黒鉛減速炉チームの方が先に終わるなら、軽水炉によるプルトニウム製造の問題は現在より小さいのですがね。
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原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

原子炉というのは、もともと原爆の材料であるPuを生成するために考案されたもので、炉内にU238が沢山ある原子炉では核爆弾用の「兵器級Pu」の生成が可能なのですが、なぜか「軽水炉では作ることができない」と信じている人が沢山います。 炉物理を勉強した事があれば出来ないはずないと思いますよね。

2022-08-15 20:23:58
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

そもそも技術者というのは、不可能を可能とするのが商売ですから、そうそう「不可能」とか言わないもんですがね。 「軽水炉で核兵器の材料を作れる」と言うとヒステリックに否定して掛かる人が居ます。

2022-08-15 20:28:23
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

「兵器級」というのは何かというと、Puの同位体のうち239の比率が大きなものです。U238に中性子が吸収され、2回β崩壊をするとPu239ができます。これが爆弾に適したPuです。Pu239が原子炉内にあると、また中性子を吸収して240になり241になり、とどんどん余計なものが出来てきます。

2022-08-16 04:01:52
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

広島に落とされた原爆と長崎に落とされた原爆では型式が異なるというのが知られていますが、Pu240のために爆縮と呼ばれる複雑な機構になっています。 出来るだけ240が少ない純粋な239の方が爆弾に向くので長崎に落とされた原爆のPu程度に239の比率が大きなものを「兵器級」と呼びます。

2022-08-16 04:10:20
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

兵器級Puを作るには、ウランに中性子を当てすぎないようにする事が重要になります。新燃料を装荷した軽水炉を運転開始してひと月程度までに停止して取り出すと兵器級Puが出来ています。 普通の運転では燃料は3年程度原子炉内にありますからPu239の同位体比が落ちています。

2022-08-16 08:35:09
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

軽水炉では、燃料を取り出す為に運転を止めて圧力容器を開ける必要があるのて、査察をしやすい、と言われています。 Pu生産用途に設計された原子炉は運転中でも燃料交換が可能になっています。チェルノブイリ原発で有名なRBMK炉や東海原発のGCRなども運転中に燃料交換ができます。

2022-08-16 08:38:33
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

軽水炉で短期の燃料交換を行うと核開発の疑惑が持ち上がる事になります。(GCRなどは作っただけで疑惑になります) 短期で止めた場合には燃料交換をしない事が重要になります。

2022-08-16 08:41:18
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

原子炉を短期で止めることなく兵器級Puを生成する方法もあります。たとえば原子炉の外周の燃料棒を濃縮ウランではなく劣化ウランにします。そうすると燃料棒自体の中性子がなくなり、普通の燃料棒からの中性子を受けるだけになりますから、長期間炉内にあっても中性子の照射量が小さくなります。

2022-08-16 08:47:07
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

IAEAによる査察があればそのような細工は見つかる事になっているので、核拡散防止のためには査察が重要なのです。

2022-08-16 08:49:24
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

ただ、原子炉を運転する限り中性子照射の少ない燃料棒は一定程度は不可避です。 燃料棒には不良がさけられず、穴が空いたりします。小さな穴であれば原子炉は止めません。周辺の制御棒を上げて核反応をしないようにします。そうするとその燃料棒は239の比率が高いものになります。

2022-08-16 08:53:55
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

不良の燃料棒を交換したら交換したで、やはり239の比率が高いものができます。 また初期装荷燃料の1/3は一年で交換されますから、平均的使用済み核燃料よりは239の比率が高いものになります。廃炉時に炉内にあった燃料棒も類似でしょう。

2022-08-16 08:56:35
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

なお、現代では技術の進歩もあり、Pu240やAm241の比率が大きなPuでも爆弾製造は可能とされています。ウランは高濃縮のものが問題視されますが、プルトニウムはどんな同位体であっても分離は問題視されます。 とは言え、239の比率が高いほど爆弾に向いていることは変わりありません。

2022-08-16 09:02:08
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

さて、239の比率によらず問題となるとなると、再処理工場はどう扱えば良いでしょうか。 「再処理」というのは照射済み核燃料からプルトニウムを抽出する処理です。 これは核兵器の為に開発された技術であり、再処理を行うのは核兵器所有を目指したものと見做されるのが自然です。

2022-08-16 09:38:02
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

因みに六カ所再処理工場で最初に処理された使用済み核燃料は、一年しか炉内に無かった、比較的燃焼度の低いものです。つまり比較的核兵器に向いているはずのものです。

2022-08-16 09:40:10
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

日本国は、核兵器禁止条約に加盟することを拒んでいる国であり、再処理を行う数少ない国の一つです。 世界から見ると、核兵器所持を目指していると見えるのが自然です。経済的にも利はなく、環境汚染も問題です。 再処理工場は是非とも廃止しましょう。

2022-08-16 09:43:32
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

ぶっちゃけ、全量再処理核燃サイクル路線は「国民に内緒」で核兵器技術を準備するというところが肝だと思います。 技術を準備しておいて「既に我が国は核兵器の技術を保有している」と宣伝して国民の意思を誘導する。民主主義を馬鹿にしすぎです。

2022-08-16 18:00:08
原田 裕史 🥚 🧷 @harada_hirofumi

しかも、仮に核兵器を開発するにしても、現在の再処理路線は放棄した方がマシでしょう。 国民に内緒ではなくて良いならもっと低燃焼度のPuを作った方が楽で上等ですから。 そういう意味でも、現在の日本の計画は、良いところが無いと思います。

2022-08-16 18:01:48