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mumimushunyu
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「走って痩せろメロス」 メロスは後悔した。 たまには、運動をせねばならぬと決意した。 メロスにはスポーツがわからぬ。 メロスは、インドアの中年男性である。 ビールを飲み、ポテチを食べながら暮して来た。 けれども、健康診断の結果に対しては、人一倍に敏感であった。 (続く)
2022-08-29 17:56:22
きょう未明メロスは家を出発し、野を越え山越え、十里離れたこのメディカルセンターにやって来た。 メロスには生命保険も、医療保険も無い。 勤めている会社の、社会保険に加入しているのみである。 この会社は、近々、年一度の定期健康診断を実施する事になっていた。 尿検査も間近かなのである。
2022-08-29 18:03:28
メロスは、それゆえ、今朝から朝食も摂らずに、メディカルセンターへとやって来たのだ。 先ず血圧を測定し、それから身長体重を測った。 ついでにメロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のメディカルセンターで、医師をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
2022-08-29 18:09:11
だが、血液検査と心電図を終えたあと、X線検査を待っているうちにメロスは、センターの様子を怪しく思った。 ひっそりしている。 院内が静かなのは当りまえだが、けれども、なんだか、看護師たちが皆こちらを見ながら、コソコソと話をしている。 のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。
2022-08-29 18:16:48
目が逢った若い看護師をつかまえて、何かあったのか、去年ここへ来たときは、何も無かった筈だが、と質問した。 すると看護師は、辺りをはばかる低声で答えた。 「あなたの血中コレステロール値と尿酸値と血圧が、あまりに高すぎるのです」 「何だと!!」 メロスは激怒した。 血圧がまた上がった。
2022-08-29 18:26:17
「呆れた医師だ。生かして置けぬ」 メロスは単純な男であった。 検査着を着たまま、のそのそ診察室に入って行った。たちまち彼は、巡邏の警備員に捕縛された。 調べられて、メロスの懐中からはチー鱈とワンカップ大関が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。 メロスは、医者の前に引き出された。
2022-08-29 18:32:01
「メロスさん、検査の当日は食事禁止って言ってあるでしょ!!」 内科医のディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は刻み込まれたように深かった。 「酒とチー鱈は飲み物だからセーフだ」 メロスは悪びれず答えた。 「正気ですか?」 医師は、憫笑した。
2022-08-29 18:36:58
「あのねえ、メロスさん、貴方このままの食生活続けてたら、じきに血管詰まって死にますよ」 「言うな!」 とメロスは、いきり立って反駁した。 「デブから自由な食事を奪うのは、最も恥ずべき悪徳だ。このような数値が出たのはきっと、検査機械の故障か何かに決まっている」 「な訳ないでしょ!」
2022-08-29 18:45:15
「というか、今から胃検査どうするんですか。チー鱈食べちゃったらバリウム飲めないじゃないですか」 「ならば、よろしい。この病院にセリヌンティウスという医者がいる。私の無二の友人だ。そいつのレントゲンを代わりに」 「できるかァ!!!!」 医師も激怒した。 【走って痩せろメロス・完】
2022-08-29 19:11:13
というわけで、CMです。 走れメロス、山月記、ごんぎつね等、皆が知るあのパブリックドメインの名作が、現代を舞台に蘇るパロディ短編集。 絶対面白い(当社比)ので皆様ぜひご一読下さい。 kakuyomu.jp/works/11773540…
2022-08-29 19:36:13感想

twitter.com/aonimaru_games… pic.twitter.com/xi8L81OHDs
2022-08-30 09:28:03