ジブリアニメ「耳をすませば」における図書貸出カード描写は「図書館の自由に関する宣言」に反しているという指摘
『耳をすませば』は好きだけど「図書館の利用者の情報を他人に知らせてはならない」という図書館倫理の大原則に真っ向から反しているので頭の痛い作品である、と図書館学の講義で習った。
2022-08-26 21:45:39この問題って現代の価値観から過去の描写を非難してるんじゃなくて、当時から問題提起や申し入れを行っていたんですよ twitter.com/nukuteomika/st…
2022-08-27 12:53:56『耳をすませば』では学校・市立図書館ともに、ニューアーク式という貸し出し方式なんですが、ブックカードに(作中の天沢聖司のように)氏名を記載するので誰が借りた/ているか分かってしまい、「図書館の自由に関する宣言」で上げられた[図書館は利用者の秘密を守る]ことが出来ません。
2022-08-27 14:28:19なので、1970年代以降、公立図書館では貸出記録が残らないブラウン式に貸出方式が変更されていきましたが、学校図書館では学習指導との兼ね合いもあり、ニューアーク式がなおも採用されていました(子供の頃、学校図書館で名前を貸出カードに書いた記憶がある人も多いと思います)。
2022-08-27 14:28:20ただ、学校図書館でも1990年代ごろからニューアーク式などの貸出記録が残ってしまう貸出方式への問題提起がなされました。
2022-08-27 14:28:21こうした状況で、当時の学校図書館問題研究会(学図研)は、表現に誤りはないが学校図書館も[図書館の自由に関する宣言]の元に運営され、利用者の秘密を守るよう配慮しているので、その旨、作中ないし劇場で「ことわりがき」を入れてほしいとジブリ側に申し入れました。
2022-08-27 14:28:21貸出記録(=個人のプライバシーに属する情報)が見られることがないよう配慮している中で、貸出記録を簡単に見ることできるという印象を与えてしまっては、利用者からの信頼が失われてしまうという危機感が図書館側にはあったのです。
2022-08-27 14:28:22先の学図研の申し入れについては、特別対策は取らないとの回答があり、実際の描写は私たちが見たとおりです。しかも図書館勤めの雫の父は貸出方式がバーコード化することについて、雫の「カードの方が好き」という意見に同意してしまっています。
2022-08-27 14:28:23残念ながら図書館のプライバシー保護を行っているということは理解されなかったのです。 こうした背景から図書館学では『耳をすませば』へ批判的に紹介されることが多いのです。
2022-08-27 14:28:24青春映画としては文句のつけようがないんですが、図書館(とそれに付随する人権問題)って視点で見ると図書館学を学んだ人間だとモニョるところがあるんですよね
2022-08-27 14:30:42ところで『耳をすませば』の汐お姉ちゃん。私の中では年上のお姉さんの代表格なんですが、とっくの昔に自分の方が年上になってるんですよね
2022-08-27 14:35:32補足① ・引用元に対して当時は今とは違うだろという意見があったので、自分の知っている情報を補足的に書きました。 ・私は当事者ではないので当時を知らず、また司書課程を修了していますが現職の図書館員ではありません。ツリーの内容は図書館学の講義で受けた内容及び書籍等からの情報です
2022-08-28 10:59:51補足② 当時の学図研の申し入れ文はWebで公開されています。<gakutoken.net/joo4cbgzd-870/> また、日本図書館協会(図書館の自由委員会)も制作側と意見交換を行っています。 twitter.com/TheStarry_Anag…
2022-08-28 11:03:54補足③ Wikipedia情報ですが、「DVD化の際にはテロップが挿入されることとなった」ようです。 ただ、『こらむ図書館の自由』93巻第1号(1999)を見ると「公開前であることもあって製作会社の態度が硬く,委員会の考えも理解されたとは言えないままに終わった」とのことです。 <jla.or.jp/Portals/0/data…> twitter.com/TheStarry_Anag…
2022-08-28 11:13:40補足④ ③で挙げた『こらむ図書館の自由』では『耳をすませば』について93巻含め3回取り上げられています。 <jla.or.jp/committees/jiy…>(98巻第10号(2004)、102巻第10号(2008)) これら3つのコラムは当時及び現在の図書館側の問題意識がわかりやすく述べられていると思います。
2022-08-28 11:24:50